優しい笑顔の職人さんのいる廻栖野竹細工は、平成23年12月19日に大分市指定無形文化財に「廻栖野の竹細工技術」として指定された。いつの頃から始まったかは定かでないようだが良質な真竹が豊富なこの地域に昔から伝承されてきた青物細工なのだ。
主に編まれるものはマンゴク(万石)、コエジョウケ(肥ざる)、イナリグチ(稲荷口)、コメアゲ(米揚げ)など、毎日の農作業や生活の中で無くてはならない大事な道具たち。元々は日本各地の生産地がそうであったように自分達で作って自分達で売っていたものが近年になり行商専門に行う業者に販売を委託してきた。
そうして暮らしに密着する竹ざるや竹籠は直接的に、あるいは間接的に日々お客様の声に接しながら磨かれ鍛えられて今まで繋いできたのである。
廻栖野竹細工が注目されるのはその独特の竹ヒゴ取りの技法だ。一人が竹包丁をあてがい、もう一人が歩いて引きながらヒゴ取をするという二人一組となって協力しながら長い竹ヒゴを作る独特の方法は日本各地で編まれる竹細工の何処にも見られない。YouTubeで紹介しているので関心のある方は一番下にある動画で是非ご覧いただきたい。
そうして作った長い竹ヒゴを操りマンゴク(万石)を編んでゆく。竹細工と言えば今では室内で仕事するのが一般的のように思われているが、このように長い材料を扱う竹細工は庭先や空き地など屋外でされる事も多かった。
ムシロの上に座り竹を割る、竹を編む、その横で地鶏が遊んでいるような光景に何度も出会ってきた。しかし雨風の影響を受けてしまいがちなので次第にそのような職人の姿は少なくなった、廻栖野では複数の職人が働ける共同作業場が整備されている。
必死で竹と向き合ってきた歴史は明るいものばかりではない。しかし、大分市指定無形文化財に指定されて人の見る目が変わったと話す顔は心から嬉しそうだ。同じ大分県別府の竹を全国に知らしめ、初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)になられた生野祥雲斎氏の事を思い出した。
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