百年の煤竹を削り漆で仕上げた男箸

煤竹男箸


久しぶりに煤竹箸をご紹介できるようになって本当に嬉しく思っています。自分も竹箸を毎日愛用していて虎竹、白竹、真竹など数種類のお箸をローテーションしていますが、その中に二種類の煤竹箸が入っています。


使っているのは、今回の煤竹うるし男箸のように漆で仕上げたものでもう何年になるでしょうか?真っ黒いほどの煤の色合いも随分と薄れてきて漆を塗っていたとは思えないほど竹生地が見えてきていますものの、やはり普通のウレタン塗装のお箸とは全く違う存在感です。


茅葺屋根


あっ、そうそう、もしかすると煤竹をご存じない方がおられましたら少しだけご説明させていただきます。昔の茅葺屋根の民家の梁には軽くて丈夫な竹材が多用されていました、沢山の家族の暮らす室内では食事や暖をとるために囲炉裏で火を焚きます。


その煙がもうもうとたちこめて茅葺屋根の防虫に役立ち耐久性を高めてきたのですが、梁に使われていた竹も自然に燻されることになります。そうして100年、場合によっては200年もの間そうして使われ続けてきた竹は煤がつき長い年月を経た竹でないと醸し出せない風合いの竹に変身します。


煤竹花器


煤竹に濃淡があるのは直接煙に触れていない縄で縛られていた部分です。これは一本の長い煤竹で見ると、螺旋状の縄目がウラ(竹の先端)までハッキリとついているのが分かるのです。


虎竹


天井部分ですのであまり太い竹ではなくて使われている竹は頃合いの真竹が多いのですがそもそも古民家が少なくなっている上に、素材を調達できるのが民家を壊す時だけですし、現代の暮らしで家の中で火を焚くことはありませんので年々竹材は少なくなるばかりの非常貴重な竹材でもあるのです。


しかもせっかく民家から取り出した竹材も長年の風雪に耐えて来た竹ですので、すっかり粘りがなくなり細工に使えなかったりします。材質は良くとも決められたサイズの竹しかありませんので例えば今回の男箸にしても一定の厚みがあって、しかも節付を探すとなるとようやく数膳を製作できたにすぎません、竹節の位置が微妙に違うのはそのためです。


煤竹


真竹でも淡竹でも山で見ている竹は青く、とてもあのような深みのある渋い風合いになるとは想像すらできません。それが100年経つと、この色合いです、やはり時間の積み重ねというのは凄い事だと改めて感じます。


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