日本唯一の虎竹の伐採自体は1月末までなのですが、その期日に山出しが終わるという事ではありません。枝打ちと言って竹の小枝を鉈ではらい、竹林から運び出される作業はそれからずっと続くのです。自分が入社した頃には今とは比べものにならない程の量が出荷されていましたので、遅い山だと5月の中旬あたりまで山仕事があったものです。
それにしても竹林からこのように竹が伐り出されてるいる光景は、いつ見ても心が弾みます。竹は竹林にある時が一番美しいものですが、こうして山から出ていかないと沢山の人様に喜んでいただく事はできません。それぞれが製竹され竹製品となっていく門出でもあると思うと嬉しくて仕方ないのです。
近年の温暖化が大きな要因となっている虎竹の色づきは、今年も暖冬で思うような竹にはなっていません。ですから、この竹のように白い蝋質の下に虎模様が確認できるとホッと安心します。
虎竹の歴史は古く藩政時代には年貢として献上されてきました。つまり少なくともその当時から先人が守り育ててきた竹であり、はじめて来られた方でもその美しい竹林に感じって頂ける方が大半です。
しかし、本当の意味でご理解いただいてる方は少ないかも知れません。この山の竹はすべて竹製品や竹細工にされるための竹たちです。筍農家の畑ではありませんので自分達はもちろんの事、虎竹の里でこの100年虎竹の筍を食した話を聞きません。そうやって慈しんできた山の職人の努力は、そうでない竹林に触れてはじめて感じるものです。手入れされない普通の竹林の様子がどうなのか、実は皆様はそこまで関心をもってご覧になられていないのではないでしょうか。
手入れされない竹林はこうなります。かっては良質の真竹が伐り出された竹林でさえ誰にも使われず忘れられてしまえば、このように中に人が入ってくることすら拒ばれているかのようになるのです。日本の竹を知れば知るほど、虎竹の里の価値がようやく少しづつ分かってきます。
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