今一番気になっているのは来春からフランスで予定されている竹細工の展示会。パリをかわきりにリオン、ツールーズと1年かけて回っていく。「竹で儲けたら、竹に返すさかい」と祖父が言っていたように竹虎には懇意にしていた竹工芸作家から頂いた作品も多い。
しかし、それよりも多く所蔵するのが昔から作られ暮らしの中で使われ続けてきた伝統の竹細工だ。この数週間、頭を悩ませながらその中から数十点を選ぶ作業に取り組んでいる。
魚籠だけでも色々とあるのだが何でも集める蒐集家と言う訳ではないので骨董品屋か何かで集めたものではない。それぞれに職人の顔を見て手のぬくもりが伝わってくる籠ばかりだ。愛妻家の職人が、いつか妻と生まれ育った近くの渓流に釣りに行くために編んだ籠。ついにその夢が叶うことはなかったが美しい魚籠は残った。
見た目には同じような片口ざるが二つある。ひとつは50年のベテラン職人、もうひとつは竹に取り組んで数年の若手のもの。同じ竹細工でも背景がまったく違うので面白い。
網代底にエビ止めの手提げ籠も良い色合いになっている。今では誰一人として知る人もないが、かっては土佐網代と呼ばれ全国から引っ張りだこの時代もあった高知を代表する技法のひとつだ。
竹を柾割して編み込む独特のスタイル、技術もさることながら竹の性を見極める眼力も必要とされるめかご。
この竹帽子にも何度も工房に通った思い出がある、晴れた日には庭先に竹を広げて嬉しそうに竹を割っていた。日本の竹職人が自分たちの仕事に誇りをもって臨んでいたという証のひとつとして展示したいが、どうだろうか?
伝統的な竹細工は生活様式や新素材、輸入品との競合で苦難の時を経てきた。その中で質実剛健だけではない線の細い籠も多く編まれてきている、時代に合わせて変化する竹のしなやかさを代表する籠だ。
蓬莱竹、ビワの木、カズラ、桜皮を使って作られる最高傑作の箕。箕は農家にとって無くてはならない道具だっただけに全国各地で編まれていた、何と西日本だけで35種類もの箕があったというから驚くのである。手元には10種類の箕があるが大きすぎて運べないものもあるので展示するにはこの箕しかない。
厚みのある孟宗竹を削りだしてネックレスやチョーカーも40数年前には大人気だったアクセサリーの一つだ。
竹ピアスや竹イヤリングも当時の女性たちに飛ぶように売れていた、細かく手間のかかる仕事を効率よく製造するために知恵が絞られた。
それにしても、竹を見ればみるほど衣食住すべての暮らしの中に深く関わってきた多様性を改めて感じさせられる、職人との思いも込み上げてくる。竹の種類は600種、籠に使うものは一部とはいえ素材そのままに編む青物細工だけを考えても数種類あり、時代や地域、職人、用途、技法など考えていたら様々な切り口で無数の可能性が広がりカオス状態。やはり、竹は無限である。
■パリ会場
会期:1/24~4/10
1, rue Dante, 75005 Paris, tel : 01 44 41 50 10
■リオン会場
会期:5月初旬~10月中旬
46 Rue du President Edouard Herriot 69024 Lyon, tel : 04 78 38 30 40
■ツールーズ会場
会期:10月下旬~翌1月末
5 Rue Croix Baragon 31000 Toulous, tel : 05 61 14 51 50