竹はどこまでも面白い素材で縦に割って細いヒゴにすると非常に柔軟でしなやかな性質となりますが、その反面肉厚のまま使うと普通の木材などより遥かに高い硬度を持ちます。身近な例が爪楊枝で木材をつかったものは先端がすぐに折れたり、ひしゃげたりするにの対して竹爪楊枝の先端はかなり強めに扱ったとしてもシャープな先部分を保ったままなのです。
そんな性質を活かして大根おろしが作られています。まるで鬼歯のように見えることから鬼おろしと言いますけれどこの竹歯から摩り下ろされる大根はシャキシャキ感満点で全く水っぽくありません。一度体験するとこの鬼おろし以外では食することができなくなるほどなのです。
ところが、この鬼おろしが今年は特にひどい虫害にあっていました。孟宗竹は身が厚くて食べやすいのでしょうか、タケトラカミキリもチビタケナガシンクイムシも大好きなのです、素材のうちに穴をあけてくれれば、その竹を使わなけば良いのでまだ助かります。(それでも竹材を山から伐り出して運んできた労力は報われません)
しかし、鬼おろしに完成された製品になってから虫が喰うので本当にお手上げ状態です。一体どれくらい無駄になった事か分かりません、そこで本格的な鍋シーズンを前に鬼おろしを完全リニューアルすることにしたのです。
今までの白っぽい鬼おろしに比べて色が薄茶色になっていますが、これは熱と圧力をかけて炭化加工しています。加熱処理なので安全に防虫だけでなくカビに対しても高い効果がある方法です。鬼歯の部分が少し色が違うように思えた方は素晴らしいです!実は少し薄めにしている鬼歯部分は加熱することにより強度が落ちてしまうので炭化加工していません。
先日の30年ブログでもお話しさせていただきましたように、竹の虫が今まで入らなかった竹材にも入るようになり竹の管理がますます難しくなっています。温暖化で虎竹の色づきが良くないとは何とも申し上げていますが気候変化はそれに留まらず、もしかしたらこれからも様々な影響があるやも知れません。
先週は荒れ放題になった放置竹林を見ました、うっそうとしたジャングルのような山からはやはり良質の竹は出てきません。山の職人の高齢化で伐採自体も昔のようなキメの細かい対応はできかねている所も大きな課題です。寒くなってきて食害は一段落したものの竹と皆様の暮らしを繋ぐ自分たちの挑戦は終わる事はありません。
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