まるで本物と見まがうようなポリプロピレン樹脂製品がある。ザルや籠だけでなく簾なども作られるようになっているから驚く。気をつけて見ていると量販店のディスプレイなどの多くは、竹に見えて実はこのようなプラスチック製品に変わっている事が多い。
これらを否定する気は毛頭無い。高温にも耐える素材は食洗機でそのまま洗えるので手間がかからず衛生的、しかも丈夫なので扱いが簡単で実用的だ。先日見かけたトレーも自分でさえ凝視するほどの出来映え、研ぎ出し部分のリアルさは凄い。
しかし、これらは竹ではない、本物ではない。竹を薄く剥いで編まれた素地に漆を塗り重ねて作られる籃胎漆器のトレーは、軽やかさと強さに加えて手に触ると優しさが伝わってくる。目の前に置かれた表情のない無機質な品とは全く比べものにならない。
竹を忘れゆく日本の皆さんに是非ご覧いただきたい展示会がある。東京国立近代美術館工芸館で今日から開催される竹工芸名品展、メトロポリタン美術館所蔵のアビー・コレクション。日本の竹は、これほどに美しい形に昇華する。
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