自分と家族が使える石鹸を作りたい。その強い思いはありましたものの、どのように作るのでしょうか?皆目見当もつきませんでした。とにかく手当たり次第サンプルを試してみることぐらいしか思いつきません。北は北海道から九州まで様々なメーカーの石鹸を集めました、そして毎日のように届く中から使い心地のよい石鹸を選ぼうと考えたのです。
現在の虎竹の里竹炭石鹸は、石鹸素地と竹炭と水だけで出来ています。けれども実は最初からシンプルな成分を目指したわけではありません。自分が使いたいのだから、何が入っていようがとにかく泡立ててお風呂で次から次へと使い続けました。
ただ、やはりどうしても竹炭の力は役立てたいと強く思っていました。不思議な成長力と一年中青々と繁る生命力にあふれた竹、日本唯一の虎竹の里に生をうけ小さい頃から竹に囲まれて育った自分には、この竹を使った竹炭の吸着力やミネラル分が必ずプラスに作用するはずだと根拠はないものの確信していたのです。
当時は炭と言えば木炭でした。高知には土佐備長炭というブランド炭がありましたし、菊炭なども高級な炭商材として職人さんが焼いていました。ところが竹炭は技術的な難しさもあり、焼いている窯もほとんど無くて竹炭石鹸はまだ世に出ていませんでした。
何ヵ月か過ぎた頃、ようやく出会った最高に使い心地のよい炭石鹸も竹炭ではありませんでした。「地の塩社」という変わった名前の熊本の石鹸メーカーの炭石鹸でした。真っ黒い箱で最初はイメージも良くありませんしかし何とも肌に優しくシミることがないので一発で気に入り製造工場まで飛んで行ったのです。
工場にお伺いしてさすがだと思いました、白衣を着用してエアシャワーでホコリを取らないと中に入れません。そして、そこで一番大事な「薬用炭」という言葉を聞きました。
薬用炭とは硫化物、シアン化合物、酸可溶物、重金属、乾燥減量、強熱残分など第十六改正日本薬局方の薬用炭に準じた確認試験に合格した炭という事でしたが竹を焼いたものではありませんでした。あの素晴らしい洗い心地が竹炭になれば更に良くなるのでは?こちらには研究部署があって専任の担当研究員の方にお話しを伺う事ができますが薬品や化粧品に適合する竹炭というのはないとの事でした。
なるほど、薬用竹炭がないのなら自分が竹炭で薬用炭を作ればいいではないか。幸い竹炭の品質や性能には日本一という自負がありました、間違いなく最高の薬用竹炭ができると確信していたのです。
「思い」は大切です。すべては誰かの思いから形になります。経営の神様と言われた松下幸之助さんも良い会社作るにはどうしたら良いか?という質問に対して「良い会社を作ろうと思う事や」と答えられたと言います。普通に聞き流してしまうと何でもありませんが、「思い」が全ての始まりで大事な事なのです。
薬用竹炭は多い時には2名の社員がかかりっきりになっていました。自分達のような小さな会社としては、かなりの負担です。思った何倍も大変で時間もかかりましたけれど高知県工業試験所さんの全面的な協力で薬用竹炭は完成しました。
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