竹の種類は多くて日本国内だけでも600種を超える竹があるのですが、その多くの竹の中でもマダケは「真竹」と書くように一般の方が竹と聞いて思い浮かべる代表的なひとつであるかと思います。青々として涼味を感じさせる真竹は食器としても多用されていて、これからの季節人気となります冷たくしていただく水羊羹を竹の筒に入れたものなど目にされる方も多いのではないでしょうか。
年末年始用としてお使いになられる方も多いのですけれど青竹盛器や冷酒用の酒器、盃を用意させていただく事があります。門松がそうであるように、青竹の青さと伐った時の身の白さの色のコントラストは日本人が一番心地よく思う取り合わせだと思います。
青竹は生鮮野菜のようだといつもお客様にお話しさせてもらいます。加工したらすぐに瑞々しさは失われていき、切り口も段々と白くなっていきます。昔からこの竹の青さをそのままに退色させない工夫や研究がされてきましたが、これと言った方法は今だにありません。
飲食店や旅館など業務用として提供されている所では冷凍庫で保管して少しでも長く使えるようにされています。コストを考えれば当然の事ではありますが基本的には青竹の器は一回きりの贅沢な宴の演出であり、青竹ならではの旬を楽しんでいただければと思います。
条例で乾杯には日本酒と決められている京都で、いつだったか竹の集まりがあり青竹酒器が出された事がありました。酒器は一回限りの使用なのでそれぞれご自宅に持ち帰っていただいて結構というお話しを聞いて、さすがと思いましたがこれが正しい青竹酒器の在り方だと思います。
青竹は粘りがあり節間も長いので籠や笊にも適した竹材です、昔から様々な竹細工が青竹(真竹)で編まれてきました。青竹に対して三大有用竹のひとつであり大きさも似た淡竹(はちく)はどうかと言いますと、白い蝋が塗られたような竹表皮が特徴なので青々とはしていません。ところが淡竹は淡竹でも少ないとは言え籠が編まれていて、無骨な雰囲気に魅了されます。
真竹は苦竹とも書きます、この竹を熱湯で油抜きしたものが白竹です。白竹は冬の寒風に晒して美しい乳白色に変わりますので晒竹(さらしだけ)とも呼ばれます。つまり、真竹、青竹、苦竹、白竹、晒竹は全て同じ竹の事を指しているのです。
「磨き」の細工は竹表皮を薄く剥いで竹ヒゴを作ります。青竹の色合いが長く保たれないのと同じように磨き細工も編み上がったばかりの竹の初々しさはすぐになくなり色は飴色に変わり、深まっていく色合いは見事です。真竹を湯抜きした白竹の籠を持つのも良いし、表皮を剥いだ磨きの籠もまた良しなのです。