東北の様々な箕が収蔵される秋田県立博物館

オエダラ(オイダラ)箕


オエダラ(オイダラ)箕が代々作られてきた太平黒沢地区には勝手神社と言う技術の神様が祀られた神社があります。箕は非常に高度な技を必要とする細工ですので、この地域にはうってつけの神様であり、この神社にまつわる話も非常に興味深く面白いものでした。


現代では箕の需要も激減し職人さんも箕作りだけでは仕事として成り立たない状態です。しかし、昨日の30年ブログでお話ししたように50年前には材料のイタヤカエデが山から無くなってしまうほど売れていた農家にとっては必需品だった道具です。三つの集落でのみ行われていた箕の生産は地域の人々にとっては大事な収入源だったのです。そこで、今では考えられませんが箕の製作技術が集落の外に出ることを防止するために、技術の神様である勝手神社の威光も使われていたようです。


秋田県立博物館、箕


オエダラ(オイダラ)箕作りの名人、田口召平さんは自ら箕作りをする傍ら東北一円の箕に関心を持たれていて、驚くほど程の量を収集されています。おそらく個人所有のとしてはダントツで日本一、まさに箕マニアです。


あまりの多さに保管を委ねたのが秋田県立博物館、ここが又凄いところで時間があれば一日いたいほど面白い収蔵品があり飽きません。箕の他にも見たいものが山のようにありましたが、箕だけでも沢山あって見切れないのです。


皮箕


西日本ではほとんど見られない樹皮で作られた箕は皮箕と言います。竹網代やゴザ目編みの箕しか知らない自分にとっても、この迫力、存在感、圧巻で惚れ惚れと眺めることは何度かありましたけれどもこれだけの大量の数が一堂に揃っているのは初めてです。


皮箕


皮箕に使われているのは矢竹でしょうか?同じ笹類で寒い地方で良く見られる根曲竹ではないでしょうか?実は、そうあって欲しいとも願っています。(笑)東北の箕には矢竹使わる事が多いようです、けれど自分の持っている最高に丈夫で大好きなステッキが秋田産の根曲竹なのです。


軽くて細くて扱いやすいので、力の弱ったお年寄りの方が持つには最高です。そして本当に驚くほど強いのです、耐久性を要求される箕には、うってつけの素材ではなかったかと考えています。


サキアリ箕


これも実物は初めて見ました、サキアリ箕は先端がとがっているので、その部分が上下運動しやすく穀物の選り分けがしやすいのが特徴です。


面岸箕(ニギョウ箕)


箕の中で最高に美しいと絶賛されるのが岩手県の面岸(オモギシ)集落で製作されてきた面岸箕、ニギョウ箕とも呼ばれるサルナシ(シラクチ)と白柳を材料にした箕です。出来あがったばかりはベンガラのような赤い色、経年変色でこんな渋味を出していました。


マナグ


箕の先端両側には「ツリ」と言われていた細工が施されています。本当に珍しい細工であり傷みやすい部分の補強のための工夫かと思っていましたが、地元の職人さんに聞くと「マナグ」と言う選別した穀物を通す穴だそうです。


広い日本の津々浦々の農家さんにあって、一軒あたり少なくとも5~6枚、多い家だと10数枚も持って毎日のように使われてきた道具だけあって知れば知る程深いのが箕です。


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