イタヤカエデ細工の工房で目を引くのは丸皿用に編まれた部材でした。この美しいモダンな色合いは、そのままのヘギ材、泥染、化学染料の三種類で編みこんであるのです。白×グレー×黒という組合わせは若い職人の手によるものだそうですが、これは新しい感覚です。
そもそもイタヤ細工は、一本のタイヤカエデの丸太を割ってヘギ材を取っていきます。直径10から15センチ程度の頃合いの良い木材を使って、根元から高さ30センチから最初の枝の生える高さ120センチくらいの間の木材しか使えません。枝が生える部分は性質の良い繊維を取る事ができないからなのです。材料が少なくなっているイタヤカエデはヘギ材作りにも力が必要で体力がないとできない作業です。
木槌が置かれていますが、これは丸太材を割る時に使うものです。刃物に当てて叩き割るイメージです。しかし木材の年輪にそって剥いでいくものの、竹のようにパンパン割れていく訳ではなく繊維がねじれているので材料取りもかなり大変そうです。見ていると木材によって節のような部分があればヘギ材にできず破棄されています。
さて、そんなイタヤカエデ細工には何と泥染めがありました。泥染めと言えば石垣島の職人さんに編んでもらったアダン手提げ籠バックを思い出される方もいるかも知れません。泥染は、アダン葉の細工だけでなく様々な繊維を独特の色合いに加工するのに使われます、あの有名な大島紬も泥染めされていますので自然素材を泥染めするのは実はかなり広く取り入れられてきた一般的な加工法なのです。
染めは時間と共に段々と変化してきます、随分と落ち着いた感じになっています。
10年経つとこれだけ変わっていきます。最初の現代的な幾何学模様のような印象から自然な温かみを感じさせるイタヤ細工へ変身しました。しかし、このような泥染めの製品を今まであまり見かけた事はありませんでした。どうしてでしょうか?その理由は次回の30年ブログでお話ししてみたいと思います。
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