久しぶりに帰ってきた御用籠は職人が違っていても昔から変わることのない迫力と堅牢さで思わず笑みがこぼれます。骨太の竹枠、四隅の角部分には、まだ編み上がったばかりで青々とした真竹に曲げ加工する時の熱を加えた跡がついています。
大中小と三個がピシッと揃って入り子になっている姿など壮観ですらあります。すでに知らない世代の方の方が多いかも知れませんが、自転車やバイクが日常の運搬の主役だった時代、大人たちは必ずと言っていいほど、この竹籠を荷台にくくり付けていたものです。最後に自転車に竹籠を取り付けて走っているのが印象的に残っているのは香港生鮮市場の竹籠でしょうか。
かって竹籠は物流の担い手でもありましたので、このような角籠は大量に製造されていました。そうは言っても自分もその当時をこの眼で見ていた世代ではありせん、年配の方々から伝え聞いた話です。しかし、段々と需要がなくなり量より質を求められるようになって少し職人の作り方にも変化があったのではないかと思っています。
この御用籠に限らず竹の角物細工は竹フレームを直角に曲げるという加工があります。今は炭火を熱源に使っていますが、大量生の時代にはそれではとうてい間に合いません。効率よく仕事をするために炉に大きな火を焚いてフレーム用の竹を休み間もなく次々に曲げていき、工房には枠用竹が天井近くまで山積みになっていたと言います。
そんな面白い時代を見てみたかったものですけれど、それでもその技が現在に受け継がれこうして圧巻の力竹の交錯する角籠が作られている事に感激します。
この籠は重たい荷物を入れて持ち運ぶために作られています。香港の市場で使われてる竹籠もそうであるように、ある時には引きづられ、放られたり、重ねられたり、仕事の現場で役立っています。竹の硬さ、強さ、しなやかさ、柔軟さ、通気性、耐水性等が過酷な環境の中で十分に発揮され長く愛用されているのです。
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