少し変わったアタッシュケースを持っていますが、この色合いの渋さといい編み込み模様の美しさといい素晴らしいものです。持って歩いているだけで何か豊かな気持ちになってくる逸品、これはスズ竹市場籠などでお馴染みのスズ竹というボールペンくらいの細さながら非常にしなやかでありながら粘りと強さを兼ね備えた竹で作られているのです。
ご存じ方なら普通のスズ竹市場籠と同じ素材と言いながら随分と色も風合いも違うのでは?と感じられるかと思います。実は、その通りです。このアタッシュケースに使用された素材は特別で、昔の囲炉裏の煙に長い間燻されて自然と渋く変色した煤竹という竹がありますが、その竹に限りなく近づけた加工を施されているのです。素材として使えるようになるまでだけでも2年を越える手間と時間がかかります。
このような竹素材の鞄は、なかなか日常使いできるものとは一線を画していて使い勝手に満足できるものは少ないものです。しかし、このアタッシュケースについてはかなり実用性という面でも高いレベルにありますので後は内側のあしらいです。どうしても自分が使う事を考えてしうまので多少コストは高くなりますが革を使い、パソコンやA4サイズの書類が少しは持ち運べるような形に仕上げたいと考えているのです。
竹製のアタッシュケースなどあまりご覧になられた事がないかと思います。祖父の代からのお付き合いのある渡辺竹清先生が煤竹で作られたこのような作品もあります。このような大きな鞄の場合に一番の問題になるのが開閉のための蝶番や留め具など金属部分です。
この鞄は蝶番部分は既成品でしたが、後の留め具や持ち手を固定する部分の金具は金属加工の作家の方に製作いただきました。竹の表皮部分を使う場合、フラットではなく微妙な曲面があるのでそれにあわせて手作りいただいたのです。普通は旅行に使えるサイズながらあまりにもったいなくて、せいぜい日帰り旅行くらいにしか持っていけません。
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