日本万国博覧会・大阪万博1970(EXPO'70)

日本万国博覧会・大阪万博1970(EXPO'70)・太陽の塔


今年のビックニュースのひとつに2025年大阪万博の開催決定がありました。ロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーという都市と競い合って大阪に決まった瞬間の松井大阪府知事をはじめ関係者の皆様が大喜びする姿は何度もテレビ番組で放映されていましたので印象に残っている方は多いと思います。


前回の日本万国博覧会・大阪万博1970(EXPO'70)の時には小学校低学年でした。あの活気と賑わいは子供心にも凄い事だと感じながら会場を歩きました、岡本太郎の製作した太陽の塔に入った事は今でもハッキリと覚えています。その前で母や妹、弟と共に撮った写真では自分だけ余所見しています、この頃からすでに天邪鬼だったのかも知れません(笑)


大阪万博チケット


嬉しいことに当時の様子やチケット等も母が写真と一緒にアルバムに色々と書いて貼って残してくれています。何と今では週休2日が当たり前となっている竹虎も、その頃は忙しい事もあったのか日曜日も月に一度しか休みがなかったようです。自分が生まれる前には3交代制で24時間操業していた話を聞いていましたが、本当にここ数十年で日本の労働環境は随分と変わってきたことが分かります。


だから、小さい頃から関西の竹屋さんや職人さんの所を周らせてもらう機会は多かったものの家族旅行として県外に行くような事はあまりありませんでした。そこで、たまに来たからと中央区の本政寺にある高祖父、山岸安兵衛の奉塔にお参りさせてもらっています。


本政寺・山岸安兵衛奉塔


自分は今でも帽子が好きなのですが、この頃からいつもかぶっていました。お墓参りには万博の売店で気に入って買ってもらった帽子を被っています。帽子には「EXPO'70」の文字と世界各国の民族衣装の身を包んだ人達が描かれていました。国によって、こんなに服装に違いがあってカラフルで楽しそうでと遠い世界に心弾んだものです。


実はこの帽子が好きで好きで虎竹の里に帰って来てからも、何処に行くにもずっと被っていました。学校はもちろん、遊びに行く時にも必ず被っていたある日、校長室に呼び出されたのです。


「ヨシヒロ君、あなたは帽子を大事にしているね、それは良い事だ。しかし、もうボロボロになっている、そろそろ捨てなさい」


呼び出されて帽子を捨てろと校長先生に言われる生徒は多くないと思います。しかし、そう言われて帽子を改めてみると確かに汚れて真っ黒になったヨレヨレ帽子には穴が開き、ツバは破れ、それはひどいものでした。


あの万博が又やって来るのか...大晦日に遠い日を思っています。


歳末の一閑張り行李

一閑張行李


歳末の大掃除はいかがでしょうか?29日は末日で9が付いているので「苦待つ」や二重苦に通じるので、あまり適した日ではないようですが28日に仕事納めの会社が多いと思いますので必然的に今日や明日が多いのではないかと思います。


一閑張り行李


前に結構片づけたつもりでいても一年経つと意外に色々と整理せねばならないものがあるものです。しかし、いくら便利だからと言ってこの一閑張り行李には何でも入れるという訳にはいきません。


一閑張り行李、竹骨


熟練の竹職人が、しっかり編み込んだ四ツ目の竹籠に、こんどは和紙職人が漉いた土佐和紙を張り付け柿渋を塗布して仕上げています。


一閑張り行李


大事な洋服などの収納にお使いいただきたい手触りも最高の一閑張り、柿渋を塗る事によって防水、防腐、防虫効果が高まり和紙が丈夫で長持ちしますし、時間の経過と共に風合いが増してくるのが魅力です。


一閑張行李


早くすませて陽の当たる温かな縁側で、のんびり歳末を楽しみたいものです。


虎竹御守り福音鈴のお客様の声

虎竹御守護


日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」には、交通安全を祈念して虎竹御守護をずっと取り付けています。竹トラッカーは時速50キロで走行できますものの電気自動車であり元々長距離走行が得意な車体ではありません。小回りの利く市街地や路地などでこそ、その性能を発揮するタイプです。軽量なボディは大型トラックから横風を受けることもありますし、普通車に比べると安全面での装備が十分とは言えません。その上、電気自動車の宿命ですが2時間程度の連続走行で、フル充電には6時間もかかりますし、あれこれ考えても運転の際のトラブルは普通乗用車の比ではありませんでした。


日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」


そこで、高知から横浜まで1000キロを11日間で走破する「チャレンジラン横浜」では藁をもすがる思いで虎竹の里にある天満宮の虎竹御守護を真っ先に取り付けていたのです。


すると、どうでしょうか!?さすが虎竹を使った御守護のお陰か?あの長距離の旅の間、事故はもちろん何のトラブルもなく予定時間通りに充電ポイントを繋ぎながら走りきることができました。先ほども申し上げましたように2時間ごとの充電を毎日3回繰り返しての綱渡りのような行程、今振り返っても良く横浜まで到着できたものだと思います。


虎竹御守り福音鈴


虎竹御守護のパワーは凄いと感じましたので今年の8月に開催されました第11回世界竹会議メキシコ(11th World Bamboo Congress Mexico)では更に地球の裏側メキシコまでの輸送、そして行った事もないハラパという街での走行を控えて虎竹御守り福音鈴を編むことにしました。


鈴は邪気を払い開運につながると言うことで昔から神社の拝殿からはじまり御守りや根付けなどにも使われていますが、元々は、このような経緯で製作し竹トラッカー輸送費を捻出するためのクラウドファンディングのお礼としてもお送りさせていただきました。そんな、お客様からのお便りを頂戴しています。偶然かと思いますが不思議です。


<お客様からの声>
気のせいなのか、対人関係が良くなり、子供達もお友達と楽しく過ごすようになりました。 近所の飼われてる白猫が、家の玄関前でお出迎え頻繁となり、なついてます。 先日の台風24号で、数メートル先の町では停電となりましたが、家は大丈夫でした。神奈川は関東で停電の被害が多かったようです。 ゾロ目(777など)を数回目撃したり、電車、バス、ファミレスで席があちこち空いてるのに隣りに誰か座ったり、不思議な経験しております。たまたまなのかもしれませんが、福音鈴を持ち始めて2週間程での出来事です。


竹虎四代目、太平洋


「美点良観」と言う言葉があります。相手の良いところを見る事の大切さを言い当てていますが、虎竹の福音鈴自体に力があるのか分からないものの持った方が自分にプラスになる見方であったり思考になるのであれば、それは大きな効果と言えるのではないでしょうか。


この一年を振り返りのすと自分自身「美点良観」は耳が痛い言葉でもあります。どう活かされるのかは来年の今頃にハッキリしている事だと思います。


平成最後、1985年から続く竹虎年賀状

猪


来年2019年の年賀状枚数は24億21万2000枚だそうです!枚数だけを見ると想像を絶するような数です。全人口で考えますと一人当たり24枚くらい受け取る計算になりますが、実は年々年賀状を出さなくなる傾向が続いていて前年を7.2%も下回る予想だそうです、そう言えば自分の周りにも出さなくなったり、今年から止められた人もいたりします。


ただし、自分の1985年から続けている写真付年賀状は新春の国民的なトレンドがどうあれ、まったく関係無く来年からもお届けすることは決まっています(笑)


日本唯一の虎竹


以前でしたら一ヶ月前には完成して、ゆっくりと手書きのメッセージができる余裕もありましたものの、年を追うごとに遅れ気味となり今年なども印刷上がりが23日、タックシールを速攻で貼って投函が25日ですから慌ただしいです。時間の無さに振り回されて年賀の内容も二転三転...12年前の亥年に出した「まだまだ、うり坊」を使って同じ万座毛に行って同じポーズで撮るつもりでいた所、ふと出社した社員に猪の絵を描いてもらう事を思いついてお願いしたら何と!ビックリするような上出来なリアル猪が上がってきました。


筍


実は猪が竹林ではあまり好かれる動物でない事をご存じでしょうか?近年竹林では筍の食害が目だっています、子供の時には可愛いウリ坊も少し大きくなっただけで凄い迫力です。しかも集団で行動して鋭い嗅覚とパワーショベルのような力で土を掘り返し筍を食べていきます。


山の職人によれば、大きくなりかけた筍を遊び半分で折る事もあるそうです。それは、きっと違うだろうとは思っていましたものの、実際竹林に入ると無残な姿を見かける事もありました。そんな猪ですけれど、日本唯一の虎竹同様に自然の中で精一杯生きているのは同じです。食害は確かに問題ではありますけれど一旦置いておいて、彼らの人をも怖じけさせる覇気や突進力は見上げたものです。


竹虎四代目


そんな事を思いながら、この絵に合わせたポーズを撮ろうと大急ぎでやっているうちにリアル猪とのバランスがどうか?となりました。社員も同じように感じたのか竹虎四代目のポーズに合わせた最高の猪を新しく描いてくれたのです!


今までの歴代30枚の年賀状はコチラでご覧いただけますが、いよいよ平成最後となりました2019年の年賀は今までのテイストとは一味違うできあがりです。まあそう言いましても、もう数日後にはお届けも出来ますし例年通りウェブサイトではトップページで公開予定ですので、お楽しみに!


工房で見た中国製の竹加工機械

竹加工機械


日本国内の工房でこのような竹加工機械を見る事は、そうそうありませんので少し驚きました。多少使用されているものの、この程度のレベルなら古参の数十年選手ばかり見ている自分からすると新品同様ピカピカの一年生といったところです。竹虎が竹加工機械の製造をお願いしていたメーカーさんも、随分前にすでに無くなっていますので、このような新しい機械が竹の現場にある事が何となく違和感を感じるのです。


竹割機械


この秋、全国竹の大会「熊本大会」でバンブーフロンティア、バンブーマテリアル、バンブーエナジー株式会社様を訪問させていただいた際、やはり同じような竹加工機械が並んでいた事を思い出します。広大な敷地に建設されたプラント自体が中国企業の製作した大型機器を使っているという説明でしたが、使われていた加工機械も全て中国製の最新式のものを導入されていました。


竹加工機械「油」


ややっ!?工房の機械に「油」という文字が見えます。今年8月の世界竹会議メキシコ最終日に行われた竹林・竹工場見学ツアーで見学に訪れたハラパの竹材工場でのやり取りが蘇ります。「油」という字が書かれている機械だったので、これはメイドインジャパンかと思って聞いてみたら何と中国製。しかし考えると当然かも知れません、世界の工場と呼ばれて久しい中国の技術が竹業界でも世界を制しているのです。


竹材乾燥機


そしたら、こちらの工房でも予想通り設置されていた加工機械は全て中国製でした。今や日本国内で竹加工を機械化しようとすれば、海外からの導入も選択肢のひとつなのだと改めて時代を感じます。


竹加工機械


竹加工機械にも種類があって、それぞれの工場で独自に特化されていますので全てを同じで考えることはできません。それでも国内で製造されるのか当然のように思ってきた加工機械について、新しい技術を加え次々と改善を続けている中国の製造現場を見せてもらった今年は又違う複雑な気持ちが交錯しています。


中国製大型乾燥機では、含水率10パーセントまで落として防虫、防かび対策に余念がないそうです、ここまでしっかり管理されて製造されている中国製の竹細工については、一歩も二歩も前を走っていると感じずにはいられません。


迫力の力竹、石箕

石箕


土や石を運ぶ作業に箕を重宝しますが今では土木用の箕の多くはプラスチック製ではないかと思います。しかし実際に使ってみると使いやすさという点では竹製の箕には全くかないません、強さとしなりを兼ね備えた竹は重たいものを運ぶ時には、しなりがクッションのような役割をして腕への負担が軽減されるのです。腰当たりがよいのも長時間の仕事になればなるほど違いが出てきます。


箕、竹虎四代目


それでも時代の流れと共に、付加価値の付けにくい国産の竹製石箕はほとんど見られなくなりました。そんな中ねこの力竹の迫力は素晴らしい。力竹とは籠や笊に重たいものを入れた時の耐久性を高めるために底部分を補強する骨竹の事、無骨な印象をあたえる石箕には色々あってもこんな迫力ある力竹を使っているものは珍しいです。


箕は実用品としてだけでなく、福をすくうという意味あいで古くから縁起ものとして愛されてもきました。このような力強い箕なら、少しくらい落ち込んでいても強運を強引に引き寄せてしまいそうです。


「しかし、暑い...」温暖化?歳末とは思えない虎竹の里

竹虎四代目(山岸義浩)、虎竹の里


虎竹の里の竹は土佐藩政時代には山内家への年貢として献上されていた竹です。今まで何度か他の地域に移植した事がありますが不思議な事に虎模様が出来ません。土中にある特殊な細菌の作用とも、高知特有の強い潮風とも又寒暖の差なども色付きの理由として言われます。気温の変化は美味しいお米ができる条件です、同じイネ科の竹が品質面で何らかの影響を大いに受けていることは十分考えられます。


「しかし、暑い...」


今年も残すところ1週間となっているというのに、この暖かさは異常です。暦を持っている人間ならいざ知らず、竹達にとっては今は一体いつだと思っているか?そして伐採のシーズン真っ只中、今年の竹の色づきはどうでしょうか?


日本唯一の虎竹


先日の30年ブログでは牧野植物園のキンメイチクの開花をお話しいたしました。虎竹の命名の父は高知の産んだ世界的な植物学者牧野富太郎博士なので、牧野植物園とは非常に縁が深いのです。そのご縁で虎竹の里から移植されたのは、高名な建築家、内藤廣氏によって新しい施設が建てられた20年近くも前の事です。ところが、その後お伺いする度に観察に行く虎竹はどうも元気がありません。やはり、土壌が違うのか?段々と勢いがなくなり色合いも褪せ、現在では普通の淡竹に戻ってしまっています。


虎竹ランチボックス、弁当箱


大阪天王寺で竹材商を営んでいた竹虎初代宇三郎が100年前に出会い、二代目が本社を虎竹の里に移すほどにまで惚れ込んだ土佐虎斑竹。虎竹の里でしか色付かない不思議さはずっと自分達を魅了し続けています。


一本の竹で作られたお玉

竹お玉


台所や調理場で良く見かける何という事のない竹お玉のように見えます。麺類でもプチトマトでもサッと水で洗える小振りな竹ざるには持ち手が付いていて使い勝手が良いのです。しかし、よくご覧ください...この竹お玉は持ち手になっている一本の竹を節の部分まで割って片方をザルに編み、その片方を持ち手にしているのです。


うるし取り箸


キッチンで普段使いされる竹細工にもこのように気づかない秀逸な品があります。最近新しく販売されるようになった天削りうるし取り箸も使いやすさのという点ではなかのものです。


スズ竹箕ざる


丈夫なスズ竹は市場籠などでも堅牢さが多くの方に支持されています。そして、その竹で編まれた箕ざる(片口ざる)は他の容器に移しやすいので年越し蕎麦などでもさっく使いたくなってきます。


竹茶漉し


竹編み茶漉しは長い間欠品が続く事もあります。身近な竹細工は機械化できることがなく全てが手仕事ですのでどのような製品であれ大量に作り出すことは難しい、だからこそ続けていきたいと思っているのです。


新しい袖垣で迎春準備

虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


袖垣をご存じでしょうか?和風の住宅や庭が少なくなりましたので若い方の中には見た事もないという人ばかりかも知れません。ちょっとした目隠しのために玄関脇や庭に据え付けられていたもので、竹虎では最盛期には10トントラックに満載して県外に毎週のように運んでいました。


虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


しかし、その後生活様式の変化と安価な海外竹製品が入ってくるようになり、今までの既成サイズの製造は極端に少なくなりました。


晒竹、白竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


冬の風物詩と言うくらい白竹(晒竹)の加工もしていましたので白竹の玉袖垣もあります。袖垣の肩部分が丸く曲線になっているのが玉袖(たまそで)垣で両方の柱真っ直ぐなのが角袖(つのそで)垣です。


虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


屋根付の袖垣もあります。袖垣は庭で雨ざらしになりますので、このような小さな屋根があるだけで耐久性は随分と違うものです。


虎竹光悦寺垣


光悦寺垣は並べてみると幅によって異なるラインがよりハッキリと分かります。


片袖枝屋根付


先に出ました片袖枝屋根付の屋根を製作していました。竹林で伐採され枝打ちされた竹の小枝はこのような所に使われるのです、目立ちませんが大事な脇役です。このように竹は稈のみならず、根から枝、葉にいたるまで無駄なく全て活用できる素晴らしい素材でもあります。


牧野植物園でキンメイチク(金明竹)の花が咲きました

キンメイチク(金明竹)の花


牧野植物園は高知市五台山にある植物園で高知の自然をそのままに感じられる施設として人気を博しています。海外からのお客様に高知観光と聞かれると必ずお教えする場所でもあり、訪れた皆様から感謝のお言葉をいただいています。高知県出身の世界的な植物学者であられた牧野富太郎博士の偉業を後世に伝えべく開業されていますが、20年近く前でしょうか?有名な建築家、内藤廣氏によって建てられた建物が評判で都会の方をお連れすると、なかなか帰ろうと言ってくれない少し困った施設でもあるのです(笑)。


キンメイチク(金明竹)


何を隠そう日本唯一の虎竹の正式名称「土佐虎斑竹」と命名してくださったのは、この牧野富太郎博士であり、そんなご縁があって虎竹も園内に移植されています。虎竹は成育環境が変わると独特の虎模様が出なくなるため現在の虎竹は普通の淡竹(はちく)のようになっていますが、ご関心のある方は是非ご覧になっていただきたいと思います。


さて、今回開花のあったキンメイチク(金明竹)は虎竹の植えられた地域から言うと一段下がった温室などがあるエリアになります。


キンメイチク(金明竹)開花


黄金色に緑色の縦縞が美しいキンメイチク(金明竹)ですが、虎竹の里にもほんの少しだけ自生していて色合いを楽しむ事があるものの、伐採するとこの色合いが無くなってしまうので庭園や鉢植えの観賞用として珍重されています。この竹は真竹であり一斉開花から約50年の時が経ちました。しかし、120年サイクルと言われる竹なので次の開花時期としては少し早く不思議に感じます。


キンメイチク(金明竹)竹の花


自然界の事は明確に分かっている事ばかりではありません、人知をはるかに超越した世界です。ただ、貴重な機会であることには間違いありません、竹藪に分け入る事も無くこれだけ手軽に、そして身近に竹の、大自然の神秘に触れる機会はそうないので関心のある方は是非ご覧いただきたいと思っています。


特大70センチ、プロも絶賛する最強の別注竹ざる

70センチ最強の別注竹ざる


近年、良質な真竹でも太い竹は本当に少なくなったと職人は言うのです。それでも大きな竹ざるや竹籠には自分の気に入った太さの竹が必要なので、あっちの山、こっちの山と、どこをどう探してくるのか?真竹で手入れされた竹林などありませんので竹藪をかき分け、よくこんな竹があるなあと感心してしまうような材料を積み出して来ます。


竹を油抜きせずそのまま使っていく細工を青物細工と呼びます。米研ぎざる、飯籠、茶碗籠、干しザルなど日々の暮らしの中で使われてきた愛すべき竹細工。このような昔ながらの青物細工の職人のほとんどは、自分で山に入り竹を伐りだし籠にしてきましたので、それぞれに竹材へのこだわりも強いのです。特にこの超強力にガッチリ編み込んだ竹丸ざるを作る職人は人一倍難しく頑固、土佐でいう「いごっそう」、納得しないと竹に触ろうともしません。


70センチ業務用最強の別注竹ざる


いつだったか熊本県水俣で大きな大きな、高さはゆうに2メートルを越えるような角型のいわし籠を作られているのを拝見したことがあります。竹籠にハシゴをかけての製作なので圧巻でした。高知でも子供たちが、かくれんぼが出来るくらいの大きな丸いイワシ籠が須崎港の市場あたりには沢山置かれていました。残念ながら今ではどちらも編まれる事がなくなっていて、その理由はいつくかありますが熟練の職人が高齢化していくと、技術だけでなく力技を必要とする大きな籠は作られなくなるのです。


鰯籠から比べれば急にスケールダウンしますが、それでも70センチと言えば竹ざるで言えば特大サイズです。この大きさでプロが絶大な信頼を寄せる、堅牢な作りの竹ざるは他には見当たりません。職人の頑固な生き様がそのまま形になっている竹ざるなのです。


修理に帰ってきた長年愛用頂いた虎竹ハンドバック

虎竹ハンドバック


「これは、こじゃんと使うてくれちゅう(とても使ってくれている)!」


修理のために帰ってきた虎竹ハンドバックを見ると、お客様がどれだけ気に入って毎日のようにご愛用いただいているのかが分かります。虎竹の表面には独特の光沢が出て新しい製品より何倍も何十倍も魅力的に見えます。


虎竹ハンドバック持ち手部分


修理をせねばならないのは虎竹ハンドバックのハンドル革部分です。硬い竹と柔らかい革を合わせているので特に稼働する持ち手には負担がかかるようです。他にもこれだけご愛用いただけるのであれば、この際少し手直しされたらよいと思う所があります。今後のご使用で支障がでるという事ではありませんが両サイドのマチ部分に使っている革も同じく修理したくなります。しかし、それはお客様が長年気に入って使用され「味」となっている所なのでそのままとのご要望でした。確かにこれなら早くお手元にお届けできるかと思っています。


スズ竹アタッシュケース

竹虎四代目、スズ竹アタッシュケース


少し変わったアタッシュケースを持っていますが、この色合いの渋さといい編み込み模様の美しさといい素晴らしいものです。持って歩いているだけで何か豊かな気持ちになってくる逸品、これはスズ竹市場籠などでお馴染みのスズ竹というボールペンくらいの細さながら非常にしなやかでありながら粘りと強さを兼ね備えた竹で作られているのです。


ご存じ方なら普通のスズ竹市場籠と同じ素材と言いながら随分と色も風合いも違うのでは?と感じられるかと思います。実は、その通りです。このアタッシュケースに使用された素材は特別で、昔の囲炉裏の煙に長い間燻されて自然と渋く変色した煤竹という竹がありますが、その竹に限りなく近づけた加工を施されているのです。素材として使えるようになるまでだけでも2年を越える手間と時間がかかります。


このような竹素材の鞄は、なかなか日常使いできるものとは一線を画していて使い勝手に満足できるものは少ないものです。しかし、このアタッシュケースについてはかなり実用性という面でも高いレベルにありますので後は内側のあしらいです。どうしても自分が使う事を考えてしうまので多少コストは高くなりますが革を使い、パソコンやA4サイズの書類が少しは持ち運べるような形に仕上げたいと考えているのです。


煤竹アタッシュケース


竹製のアタッシュケースなどあまりご覧になられた事がないかと思います。祖父の代からのお付き合いのある渡辺竹清先生が煤竹で作られたこのような作品もあります。このような大きな鞄の場合に一番の問題になるのが開閉のための蝶番や留め具など金属部分です。


煤竹アタッシュケース


この鞄は蝶番部分は既成品でしたが、後の留め具や持ち手を固定する部分の金具は金属加工の作家の方に製作いただきました。竹の表皮部分を使う場合、フラットではなく微妙な曲面があるのでそれにあわせて手作りいただいたのです。普通は旅行に使えるサイズながらあまりにもったいなくて、せいぜい日帰り旅行くらいにしか持っていけません。


ゴマ竹を模した人工竹(AS系樹脂)

図面竹


図面竹とは竹林にたっている状態で竹表面に薬剤処理をして模様を付けた銘竹です。硫酸、硝酸を混ぜた液体に粘度を出すために砥の粉や近くの山から集めてきた砂混じりの土などを混ぜて作られた薬剤を竹表皮に塗布していきます。薬剤に混ぜた砂が竹表皮に細かいキズを付けることにより薬剤の浸透を促すと言います。


こうして模様付けするのは職人ですが、その年に雨が多ければ薬剤が流れてしまい思うような色づきが無かったりと色々と苦労はあるようです。図面竹などの銘竹は注意をして見ていると和食の料理屋さんなどの柱や壁に使われているのを見つける事ができますので、今度そのような機会があれば少し店内を見まわてみてください。


ゴマ竹を模した人工竹(AS系樹脂)


さて、そんな図面竹と同じ銘竹にゴマ竹があります。名前の通りゴマ状のブツブツが表面についた竹なのですが、ご覧になられた事はありませんでしょうか?元々は自然の竹林で出来ていた竹を人工的に美しく作りだされている竹で、やはり京都の竹林で熟練の竹職人によって作られています。


ゴマ竹を作る孟宗竹の竹林に入ると異様な光景です、なんせその一帯の竹だけ立ったままウラ(先端)部分と枝葉がすべて伐られて丸裸のような状態になっているのです。こうすると光合成できなくなった竹は立ち枯れ状態になりますが、この作業を毎年3月頃にしておいて後は自然まかせ。ゴマの出来る原因であるアピオスポレラ・バンブサエ(Apiosporella bambusae)又はアピオスポラ・シライアナ(Apiospora shiraiana)と呼ばれる糸状菌(カビ)と梅雨時の適度な湿気で綺麗なゴマがついていき秋以降には伐採できるのです。


ところが最近ではこのゴマ竹を模した人工竹(AS系樹脂)が作られています。遠目には区別がつかず高い耐久性を誇りますので庭園等では重宝されますが、この人工竹を作るのにはオリジナルが必要。デザインの元となった自然のゴマ竹を作られた職人が言います、


「これワシの竹や」


竹を提供しているとは言え、こんな細やかなゴマ模様なのに区別がつくとは、さすがです。竹に愛情込めている竹の世界、まっことオモシロイ。


八重山の民具、籐ツルモドキの籠

トウツルモドキ手提げ籠バック


籐ツルモドキ(クージ)は八重山に自生するカズラで、このような手提げ籠バックにも使われるなど色々な民具に利用されています。木を蔦って10メートルもの長さに成長するそうですが、かっては茅葺屋根の台風の強風対策に多用されていたことから分かるように粘りがあり強靭な性質をもった素材です。


籐ツルモドキ


ちょうど収穫して工房に運ばれて来た籐ツルモドキを見せてもらいました。竹の代用品として籠の材料に使われていると言うだけあって、籐ツルという名前ではありますが女竹のような見た目です。


籐ツルモドキ職人pg


しなやかで扱いやすい籐ツルモドキを使い網代底のクージ籠が編まれていました。「ガイズベラ」と呼ぶ事もあるよと教えていただくうちに素早い手付きであれよ、あれよという間に編み上がります。口部分の芯に使うの高知では古い職人がシンニョウチクとも言う馴染のある蓬莱竹、そして今では伝承される事なく無くなってしまったものの伝統的な籠に多用されて来たエビ止めの技法、浅からぬ繋がりを感じました。


籐ツルモドキ籠


青々とした新しい素材と違って、少し前に伐採していた籐ツルモドキが薄く表皮を剥いで赤っぽく見えています。決して繊細な籠ではありません、野趣あふれるとは、このような籠の事を言うのでしょうか?八重山の自然をそのまま形にしたような飾らない籠に魅力を感じています。




八重山の民具、続・月桃円座

乾燥された月桃


乾燥させた葉を細く裂いて月桃円座に編み込めるようにヒゴにしています。触ってみると、適度なしなりと硬さがあり丈夫で円座や手提げ籠に適した素材だと分かります。


月桃円座


円座にはイグサをはじめ藁など色々な素材で編まれてきましたが月桃の優れているところは、殺菌作用と香りの良さです。


月桃円座、竹虎四代目


このような囲炉裏を囲むには無くてはならない必需品の円座ですが、このような場所でなくとも35センチの比較的小さいサイズは事務用イスでも使えそうです。


月桃枕と敷物


昼寝にはピッタリのカワイイサイズの月桃を使った枕があります。


月桃敷物で竹虎四代目


横になれるような月桃の大きな敷物を作るには気の遠くなるような時間がかかります。明るい太陽の光をいっぱいに受けて育った青々とした月桃の敷物に月桃の枕とは何とも贅沢な組み合わせ、ゴロンとなればすぐに夢の中です。




八重山の民具、月桃円座

月桃の収穫


月桃(ゲットウ)は高知でもたまにその名を聞くことがある植物です。しかし、殺菌作用があり、良い香りがある事などから円座や枕、手提げ籠、草履などこれほど様々な民具に使われていて捨てるところがない万能植物とまで言われている事を知りませんでした。


月桃収穫


月桃の収穫のために畑にいくというので亜熱帯の美しい緑の中をご一緒させてもらいます。朝のうちは降っていた雨も止んで森全体に生命力を感じます、日本唯一の虎竹の竹林とは又違うダイナミックな力です。このような場所で毎日過ごされているとは幸せだと思いました。


月桃畑


歩いてすぐに月桃の畑に到着します、真っ青な空の下、スクスクと伸びた元気いっぱいの月桃が向こうまで続いています。


月桃収穫作業


さっそく作業に取り掛かりますが、とにかく強い日差しと暑さ、なるほど帽子にマスク、タオル、手袋と重装備なのが分かります。そして、その格好の中で作業なので大変です。


月桃


少し月桃の収穫をお手伝いさせてもらいました、茎自体は柔らかく刃物でサッと伐り倒すことができます。ただ、竹と同じで伐ったばかりは水分が多く見た目よりも重く運ぶのに苦労します。


月桃作業場


こうして伐採された月桃は集められ、車で作業場まで運ばれて来て乾燥されています。


月桃円座


適度な硬さで座りやすい円座の他、同じ編み方で鍋敷きやコースターなどもあります。月桃は名前も優雅であり特有の良い香りには癒されます。


八重山の民具、泥染めのアダン手提げ籠バック

アダン手提げ籠バック職人


終戦直後、竹富島のいたるところに自生しているンーマニという植物の茎を使った「やみかご」というものがあったらしいのです。現在では、この手提げ籠バックは受け継いだ職人さんによってアダン葉で編み上げられています。


アダン


アダンは「たこの木」とも呼ばれる沖縄など亜熱帯から熱帯地域の浜辺に生える見られる常緑小高木。葉にはトゲがあり採取・加工は大変ですが細く裂いて草履や手提げ籠、円座などの実に多くの素材に使われます。アダン葉細工の特徴は軽く、持ちやすいので手提げ籠バックも多く編まれているのです。


アダンひご


ただ、アダンは湿気を吸いやすくカビの生えやすい素材なのです。葉を裂いて乾燥させると白っぽいヒゴ素材となりますが、管理を怠りカビが生えるのとなると少し目立ってしまいます。


アダン手提げ籠バック


そこで考えられたのが昔から生地染めには使われてきた泥染めの技法です。自分も泥染め作務衣を一着持っていて長く愛用しています、藍染された生地をさらに何度も泥に浸けて染められた風合いは独特です。


アダン手提げ籠バック泥染め


さて、このアダン手提げ籠バックの泥染めの工程を見せてもらっていると小さい頃の鰻筌を思い出します。何故かと言いますと鰻筌は編み上がったばかりの真新しい筌では鰻が獲りづらいのです。竹の清々しい香りは人にとっては気持ちの良いものですが、その香りが強すぎるためエサのニオイが弱まってしまうのです。


鰻筌


そこで、昔からの教わった方法として田んぼの泥の中に新品の鰻筌を数日浸け込むのです、そうすると泥が竹の香りを消しさってくれて鰻が入りやすい筌が出来あがります。


アダン手提げ籠バック


ところが、子供の頃にはむしろ大歓迎でありましたが、この泥染めというのは若干のニオイを伴います。横ヒゴだけに泥染めのアダンヒゴを使った市松模様の籠は、見た目の美しさの他にそんな理由もあるのかも知れません。


アダン手提げ籠バック


しかし田んぼの泥抜きを思い出しましたし、全体を泥染めした手提げ籠の風合いがどうしても忘れられません。カビが入ったアダンヒゴも泥で染め上げるてみると一つの景色のようで味があります。問題はニオイ...。出来たばかりは結構きついので社員にも嫌われています、店内に置いてもらえず外に出されて風通しの毎日です。


アダン手提げ籠バック


そんな泥染めの渋い色合いと引き換えに付着してしまったニオイ、連日の天日干しでようやく取れてきたようです。




八重山の民具、クバ笠

クバ


クバは石垣などでは、あちらこちらに自生しています。これほどあれば材料に事欠きはしないかと思いますが先人の方々はよくぞこの素材を探し当てました。


乾燥させたクバ葉


クバ笠を作る職人さんの工房では集められた葉が乾燥されて沢山保管されていました。これらの材料を使って、その時々の民具を作っていくのですが、このクバをはじめアダン(タコの木)、月桃、籐つるもどき(クージ)、ンーマニ、フラガ、ブー(芋麻)、芭蕉(バシャ)、ソテツ(シーチ)など実に多様で豊かな自然素材が使われる職人の細工に圧倒されます。


クバ笠骨組み


この骨組みは畑用のクバ笠のもの、使われているのは蓬莱竹(ホウライチク)です。株立ちの竹のため西日本では川岸に植えて防災用の竹として利用されてきましたが細工用としての活用はほとんどありません。ところが沖縄のジンディールという籠は、この蓬莱竹で編まれます、あと鹿児島の桜皮の箕、そして高知の竹細工。黒潮の流れに沿って石垣島から高知まで竹のラインが繋がったようで骨組みを眺めながら感動です。


クバ笠


こちらは海用の骨組み、頭の先端が平らになっていて海上の強い風の中でも飛ばされないように幅が狭いのが特徴です。


クバ笠


クバの葉を、ぐるぐると巻きながらしっかりと留めているのが細く取った蓬莱竹の竹ヒゴ。


古いクバ笠


石垣の方々は畑や海に出る時にだけではなく、外出時には必ずこの笠をかぶるという方がおられます。そう言えばこの笠を普通に使っている方を何人も見かけます、日差しが強いのでこのような笠は必需品なのかも知れません。それにしても長く愛用されたクバ笠は良い色合いに変わっています。


クバ葉と猫


ゆったりと流れる石垣時間...ああ、クバ葉と戯れる猫になりたい。


クバ笠、竹虎四代目


日差しを遮る広いツバ、それでいて軽く通気性に優れるクバ笠です。これは亜熱帯のこの地域では手放せない必需品だと実感します。


八重山の民具

アダン帽子


八重山の民具に関心を持ったのはアダンと呼ばれる植物で作った帽子でした。被ってみると軽く柔らかで初めてなのにしっくりくる何と素敵な品物だろうと感じ入ったのです。


石垣島では、アダンの根っこ部分が何本も足があるような姿から、タコの木とも言っていますが、その葉を使ってゴザや草履、根を細く裂いて縄にしてバックに編むなど様々な細工に活用されているのです。


竹帽子


自分は真竹で作った竹帽子を何個かもっていて愛用していますが、硬くしっかり編まれている反面、サイズが合わなかったり被り方によって痛いこともあります。その点、アダン葉は肌触りが優しく伸縮性もあり帽子には適した素材と言えます。


アダン葉


アダンは葉にトゲがあり扱いが難しいため職人さんが少なくなりつつあるとも聞いています。しかし、ご覧ください!こんな素晴らしい円座も拝見する事ができました。


アダン円座


この円座の色ツヤはどうでしょう?地元ではお産の時の敷物に使われていたほど重用されていたそうですが、それが納得できるような人に優しく何とも温かみのある質感に驚きます。


アダン手提げ籠バック


アダン手提げ籠を作っている職人さんがいると知って後でお伺いするのですが、その前に元々興味をもった帽子...帽子...


クバ笠


ところが、畑で働く女性の被っていた帽子、クバ笠と笑顔に一発で魅了されます。


「何と!この格好エイ笠はっ!!!」


自分も欲しくなって色々と訊ねてみたら、この方の被っているのは海用との事。海で仕事をする漁師さんが風の強い海上で笠を飛ばされないように幅を狭くしているのです。クバという植物で作られる笠には、ツバ部分がもっと広く強い太陽の日差しを遮る畑用があり、更に聞いているとクバの葉の上に巻かれているのは細い竹ヒゴにとった蓬莱竹と言うではありませんか!


まんじゅう笠


沖縄、鹿児島、そして高知と続いていた蓬莱竹の線が更に伸びて石垣島まで繋がった気がしましたけれど、高知にも竹皮を細く細く取った竹ヒゴで何重にも巻いて仕上げる、まんじゅう笠がありますが、基本的な構造は同じです。


クバ笠


そこでクバ笠を少し譲って頂く事になるのですが、このクバ笠が凄いのです。おっと、手にしているのは同じクバで作られたフダイという名前の柄杓、昔かは井戸から汲み上げた水をすくうのに使われていた道具ですが、ハートの形になっているのが気に入りました。


内職さん手作り竹モップ

竹モップ


これはまた、渋いものがあります。温かくて年末の雰囲気ではありませんがカレンダーを見ると師走。大掃除が気になる季節ですが、これは内職のおばちゃんお手製のモップです。まあ、竹しかないので自然とこのような竹製の作りになるのですが素朴で何ともイイ感じです。


虎竹ゴミ箱


掃除と言えば、先日久しぶりに虎竹ゴミ箱が復活しました。高さが30センチ、60センチの二種類に加えて中間サイズの45センチも追加しての再登場。お待ちかねの方がおられましたので早々に完売してしまいましたので現在急ぎ手配して来週末あたりから再販予定です。


虎竹の渋さとは対照的な清々しく明るい印象の白竹でも同じ型のゴミ箱があります、こちらも近いうちにラインナップに加わる予定です、一番楽しみにしているのは、やはり自分ですな。


豊洲移転後、築地場外の虎杖(イタドリ)

虎竹ひしぎ張りの壁


築地市場が豊洲に移ってからは場外市場はお客様が少なくなったとは聞いていましたが、確かに減ってはいるもののやっぱり築地は早朝から元気です。


築地場外市場


見た所、海外からの観光客の方や自分のように地方から上京している人が、やはり多いように思います。ここだけなら移転前の築地場外とそう変わらない雰囲気を感じました。


虎杖(イタドリ)


そんな築地場外に数店舗あって人気となっているのが虎杖(イタドリ)です。もしかしたら何か変わった店名だなと思われる方もいるかも知れません、いや、そもそもイタドリをご存じでしょうか?


タデ科の植物で岸辺や土手、空き地など、どこと言うことなく育つ雑草のひとつですが、子供の頃にはお腹が空くとポキリと折ってオヤツ代わりにしていました。それどころか、実は何を隠そう高知では煮物など使われる食材として街路市でも販売されている山菜扱いです。まず炒めてから鶏肉や油揚げと一緒に出汁で煮ると歯ごたえも楽しめて本当に美味しい料理となります。


虎杖(イタドリ)の虎竹


名前に「虎」が入っているのも親しみを感じるところですが、これは茎に虎のような模様があることから来ています。そんな店名のお店だからか、店に続く通路には立派な虎竹ヒシギ張り、店内にも虎竹を多用いただいており渋い雰囲気満点です。角に使った材木の木肌も虎竹に合わせたような色具合、施主の思い入れを感じます。


続・静かなる竹の異変

竹林の異変


ここ数年、竹林の力が弱っているのを感じている事は以前の30年ブログでもお話しした通りです。一年には四季があり、山の木々はそのつど表情を変えていく。ずっと青々とした生命力あふれる緑をたたえている竹にも実は「秋」があるのです。


紅葉し落葉するのですが、すぐに若葉が芽吹くので普通に竹林を眺めている分には気づかないかと思います。しかも、季節の秋とは真逆の春から初夏にかけての頃なので更に分かりづらいかも知れません。


竹林


ところが、今感じている異変はこの「竹の秋」とは明らかに違っています。竹林全体の色づきが変わり葉が生まれ変わるのではなく、その竹林全体の勢いが無くなっているのです。場所によっては立枯れのような状態になっていて、山に10円ハゲができたような不格好な所があります。


これが地元だけかと言うと、高知県内でも各地で見られます。四国でも、中国でも、そして九州でも少し車を走らせば目につくレベルです。


竹の花


とても今年の気候変化だけでは説明がつかず、もっと大きな自然サイクルの中で動いてるいるのではないかと言うような気がします。今年はすぐ近くの孟宗竹の林で過去最大級の竹の花が咲きました。孟宗竹の場合は60年に一度開花があり、その後の竹は枯れてしまいます。真竹や淡竹は120年に一度、竹虎の社歴に虎竹開花がない事を考えると、そろそろそのような時期になっているのかも知れません。


竹林


西日本一帯で見られるテングス病も淡竹の開花時期を迎えて竹の力が弱くなり抵抗力が削がれている事も考えられます。竹林の異変、気をつけて見守っていかねばならないと思っています。


虎竹ゴミ箱の製作

日本唯一の虎竹


虎竹は伐採の時期が決まっていて毎年寒い冬場に伐った竹を一年を通して製品に加工していきます。正確には来年1月末日までが伐採の時期と決められているのですが、その後はたとえ材料不足などがあったとしても伐採することはありません。


そのようにしっかりしとした決め事をした竹材であっても、虫などを完全に防ぐことはできないのが自然の難しいところですが出来るだけ高い品質の竹材加工ができるように努める姿勢のひとつが伐採管理ではないかと思います。


虎竹ゴミ箱職人


そんな虎竹を使って、しばらく欠品となっていましたゴミ箱を製作する事にしました。お客様からの問い合わせも頂きながら、後回しになって遅くなりましたが今回は今までの高さ30センチ、60センチの二種類に加えて、45センチサイズのゴミ箱は新しく仲間入りします。


虎竹ゴミ箱職人製作


ゴミ箱としては30センチくらいが普通の大きさであろうかと思っていますが、あるお客様のリクエストで倍の高さの60センチサイズを作ってみたところ洋間にもバッチリ使えそうなスタイリッシュなゴミ箱となりまたのでそのまま定番となっているものです。


更に中間サイズの45センチを作ってバリエーションを増やしますし、できるならば以前はあった白竹(晒竹)のものも製作できればと思っています。




Alan Chan(陳幼堅)さん、kyoto27

Hideo Kanegae、Alan Chan(陳幼堅)、竹虎四代目(山岸義浩)


鐘ヶ江さんにAlan Chan(陳幼堅)さんをご紹介いただいたのは本当に偶然でした。京都で時間ができたので前々から拝見したいと思っていた大徳寺前の古美術鐘ヶ江さんにお伺いしたのです。しかし危ないところでした、鐘ヶ江さんは翌朝から海外出張に出られる所だったと言うではありませんか!やはり突然お伺いするのではなく前もっての連絡が必要だと反省したのでした。


古美術鐘ヶ江、田辺竹雲斎作虎竹インスタレーション


さて、古美術鐘ヶ江さんは店舗をリニューアルしたばかりのオープニングに竹芸家の田辺竹雲斎さんが虎竹を使った大迫力のインスタレーションをされています。よりモダンな装いになり、綺麗な庭も見渡せる落ち着いた空間に座っていると日常のあわただしい時間を忘れそうです。


古美術鐘ヶ江、田辺竹雲斎作虎竹インスタレーション


田辺さんはパリのギメ美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館でも虎竹インスタレーションを創作されていて大好評を得ているのですが、こちらのインスタレーションも虎竹の花が咲いたようで美しく、今回は作品に花が飾られていて更に店内に魅力的な雰囲気を醸し出していました。


Alan Chan(陳幼堅)、竹虎四代目(山岸義浩)


その後、ちょちど京都に来られて展示会の準備をされているAlan Chan(陳幼堅)さんをご紹介頂いたのですが、お目にかかるなり自分の前掛けを見て「27」と言われました。そうなのです竹虎は創業明治27年、今年で124年という長きにわたって竹屋をさせていただいております、なので自分も「27」と言う数字には愛着をずっと感じていました。それにしても不思議な事を言われます...。


kyoto27


しかし、その謎はすぐに解けました。何とAlan Chanさんの誕生日が27日だと言うのです。それだけではありません、奥様も27日生まれとの事。それでギャラリーの名前も「Kyoto27」なのです!


Alan Chan(陳幼堅)、竹虎四代目(山岸義浩)


そう聞いて何やら縁の深さを感じてしまいます、竹虎創業は明治27年...。しかし実はそれだけではなく何を隠そう自分も「27日」生まれなのでした!


待てよ...ギャラリーに入る時には模様のように見えていたロゴマークも「27」ではありませんか!?これは格好イイ!香港にもGallery 27があるそうです、画像で拝見しても素晴らしいですし一度お伺いしてみたいと思いました。


カシロダケの竹皮編みを見て

父の時代の小学校


父の時代の小学校の写真を見ると一目瞭然なのが足元の履物です。どの子供たちも見事に鼻緒の履物を履いています。外反母趾という病気は下駄など履いている時代には無かったと言いますから当時のお母さん方は聞いた事もない病だったろうと思います。


竹皮草履


さて、そんな事で鼻緒の履物が見直され竹皮草履も室内用のスリッパとしてすっかり定着しているわけなのですが、真竹の皮や孟宗竹の竹皮を使う草履の他にカシロダケ(皮白竹)の竹皮細工をご存じでしょうか?


カシロダケ(皮白竹)


カシロダケ(皮白竹)とは文字通り皮が白く美しく昔から通常の竹皮とは一線を画する高級品でありました。自然の物ですし色合いに違いがありますが中には本当真っ白で繊細な皮があり希少な素材とされています。福岡県八女郡星野村でしか成育しない竹と言いますので、日本唯一の虎竹のように土壌など特別な自然環境があるのだと思います。


竹虎の竹皮草履は真竹や孟宗竹を使いますが、カシロダケも下駄の表として使われており自分も一足手に入れてもう長いこと愛用しています。その年により竹皮の質も違っているようで自然のものはやはり面白いのです。


竹皮職人


しかし、竹皮と言えば必ず思い出す職人さんがいます。皆様がオニギリを包むのに使ったり、少なくはなりましたがお肉屋さんで見かける竹皮の一部にはまだ国産の竹皮が使われていて、その加工、選別が凄いのです。当り前ですが竹の太さは千差万別なので集まってくる竹皮の大きさも一枚一枚違います。竹皮職人さんは、その一枚一枚の品質とサイズを瞬時に見極め、細かく分けられた等級に選り分けられていました。


そのスピードたるや、まさに神技!幅や長さなど竹皮の大きさが何故分かるのか?不思議に思う程ピタリと合っています。こういった縁の下の力持ちの職人さんがあってモノ作りは成り立ってきたのです。