口をすぼめて使う箕について

山岸義浩(竹虎四代目)、箕


は元々農具として広く使われていた道具なので各地にある程度の職人がいたものです。さすがに近年では使う機会は少ないですし、編むことのできる職人が減っていますので別誂えのようなお問い合わせも少なくなっているのですが、それでもやはり竹の箕が使いやすい仕事があって、ボツボツとお話しをいただくのです。


土佐箕


注意せねばならないのが使い方がそれぞれ違いますのでご注文いただく方のお話しを良く聞かねばなりません。土佐箕は伝統的に両手で棕櫚部分をもってそのまま口をすぼめる事なく使いますので前面の縁には女竹まで入れて補強して堅牢な作りを誇ってきました。


土佐箕職人


ところが、今回はじめてお問い合わせいただいた別注箕は室内での使用との事で、畑や野外の作業場で使うような大きさでは使いづらいのでコンパクトにせねばなりません。そして最大の難点は前面部分の曲がり、箕の口をすぼめ使用されたい事なのです。


箕本来の使い方ではなく、いわば片口米ざるのような使い方です。しかも、それを片手で腰に当てて?実は竹細工は、このように使う人にあわせてオーダーメイドしてきた歴史があります。家中に沢山の竹笊や竹籠がありましたが、その家で使われてる笊の直径は、お隣の家とは違いました。同じ米研ぎざるでもそれぞれ体格が違うし、家族構成も違うのでお客様の要望を細かく聞いて編んでいくのです。肩幅に合わせた背負い籠など、まさに自分専用の籠として長く重宝したに違いありません。


しかし、この時代にその方の使い方に合わせた箕など、考えればかなり贅沢なお話しです。


虎竹に怒られる!?雑誌「オレンジページ」に虎竹箸掲載

雑誌オレンジページに虎竹箸掲載


雑誌「オレンジページ」に虎竹削り箸が掲載されていたそうです。実は虎竹箸を掲載しようとしていた訳ではなくて料理の脇役として使っていただいていただけで自分達では掲載についても把握はしていませんでした。ところが、それをご覧になられたお客様から教えていただいて普段はあまり手にしない本を書店で買って来たという訳なのです。


虎竹名刺入れ


このように全国の皆様から「虎竹」と認知いただけるのは本当に嬉しい事です。日本にここにしか成育しないという不思議な地域性、大自然の神秘が生み出した虎竹独特の模様のお陰で「あれが虎竹だ。」と分かっていただける有難さ、本当に心から感じています。




しかし、虎竹の山と言うと虎模様の竹が竹林いっぱいに広がっているように思われる方もいますが虎竹も竹林にある時からあのような虎柄があるわけでは無く、700度の高温のガスバーナを使う油抜きと呼ぶ加工により美しい虎模様が鮮やかに浮かびあがってくるのです。


竹、BAMBOO


「格好いい...」


これだけ竹ばかり見ているのにもかかわらず、工場を歩いていて、ふとした竹の表情に魅入ってしまう事があります。竹は伸びやかで、まっすぐで、曲がりがあり、節があり、美しい。


竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)


この素晴らしさをお伝えできないとしたら、よほど力が足りないのか?真面目にやっていないのか?竹に怒られます。

スズ竹の椀籠が出来ました。

スズ竹茶碗籠


スズ竹は市場籠で強さと耐久性が証明されている非常に堅牢な竹です。しかし、堅牢と言っても硬いという事ではなくしなやかな柔軟性を併せ持った竹だからこそ手提げ籠として持ち歩いても腰当たりがよく、使いやすく多くの方に好まれる市場籠となっているのです。


これだけの素晴らしい素材であるのなら市場籠だけにしておくには惜しいのです。しかし、それは誰しも考える事で元々、スズ竹ではおよそ思いつく籠やザルから始まり行李など大型の衣装ケースにいたるまで編まれていました。


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時代の流れで職人さんも減ってしまっていますので、あれもこれも製作する事はできませんが自分の好きな茶碗籠ならできるのではないかと思って実現したのがこのスズ竹椀籠。昔からある定番の形ではありますが底部分の通気性が良いのが特徴です、スズ竹は市場籠としてならプロの料理人の方々も使用されます。普通のご家庭でのお使い用でしたら一生涯ゆっくり使えるだけの強さがある竹です。


竹籠、竹虎四代目(山岸義浩)


生活に根差した竹細工ほど面白い物はありません。昔から身近にあり加工性も高かったために南北に長い日本では地域ごとに成育する竹を使って様々な形の籠や笊が編まれてきました。地域ごとどころか、その昔は竹籠は使う人に合わせた使い勝手のよい大きさ、形にオーダーメイドするものだったのです。たとえば自分の肩幅に合わせて背負い籠を作ってもらうという具合、今でいうならプロ野球選手が自分のポジションや足に合わせてグラブやシューズを作るようなものです。


そこで数限りないほどの竹が編み出されてきたわけですが、このスズ竹の籠もサイズを各ご家庭の広さにあわせるという事まではできかねますものの茶碗籠とて期待どおりの働きで皆様のお役に立てることは間違いありません。


44年ぶりの朝ケ丘中学校、総合学習の講師

朝ケ丘中学校、総合学習


須崎市内にある朝ケ丘中学校の総合学習の講師依頼をいただいておりました。地元のこれからを担う方々に竹虎のお話しを聴いていただく絶好の機会ですので当日を心待ちにしていたのです。はじめてお伺いした校内ではお会いする生徒の皆さんが玄関で廊下で教室で、それぞれが大きな声で挨拶してくれて本当に気持ちが良かったです。そしてふと先々月だったか竹虎の月一回開催している全社会議に、自ら参加された須崎高校の生徒さんを思い出していました。


朝ケ丘中学校、総合学習「NO BAMBOO NO LIFE」


全社員の前でもハキハキと意見を述べられて、社員も感心するほどの、しっかりした考え方を持たれた生徒さんでしがこれからの若い中学、高校生がこのように礼儀正しく自分の考えて行動できる方がいるのなら少子高齢化が問題となっている高知の未来はそう心配することばかりでは無いような気がしてきます。


朝ケ丘中学校、総合学習、竹虎四代目


さて、総合学習の内容ですが小学生や中学生にお話しをするのが実は一番難しいのではないかと思います。しかし、それでも日本唯一の虎竹を知ってもらい、自分たちのような小さな田舎の竹屋が、どうして「竹トラッカー」のような虎竹電気自動車を製作したのか?そして世界竹会議に参加させてもらった経緯や、遠くメキシコまで運んだ竹トラッカーで走行した様子などご覧いただく事で、これからの皆さんの可能性は無限だと感じてもらいたかったのです。


朝ケ丘中学校、総合学習「NO BAMBOO NO LIFE」


「NO BAMBOO NO LIFE」


自分がいつも口にする事もお話しさせてもらいました。色々なところで言うのですが実は意味は分からないかと思って試しに聞いてみたのです。


朝ケ丘中学校、総合学習


そしたら見事に大正解!なんと久礼大正市場で最近できた「NO KATSUO NO LIFE」Tシャツを知っている生徒さんがいたのでした。それにしても、この意味を知っているとは素晴らしい!総合学習の授業に来られていた生徒の皆さんも「●●●のない人生なんて無い」そう思えるような自分の道が見つけられることを願っています。


朝ケ丘中学校、竹虎四代目(山岸義浩)


そうそう、そう言えば実はこの朝ケ丘中学校には小学校の時のソフトボール大会で来させてもらったことがありました。昔の話なのに相手チームまでも覚えています、確か田野々小学校でした。以前、練習試合で対戦したことがあって、その時に要注意とチェックしていたスラッガーの選手が右中間への大きな当たり!センターを守っていた友人が一度はグラブに入れたものの落球してしまって「ああっ!」と思ったのがこの辺りです。大人になって見てもバッターボックスからは、かなりの距離がありますので小学生にしては凄い打球だったのだと改めて思います。


朝ケ丘中学校、総合学習、竹虎四代目(山岸義浩)


サードの定位置から見たあの瞬間をハッキリと覚えているとは...あれから44年という時間が経っています。


ネコ家具とは!?新聞掲載いただいた虎竹ねこ手提げ籠

1虎竹ねこ手提げ籠、ネコ家具


虎竹ねこ手提げ籠を掲載いただいた新聞記事を送ってもらったのです。ねこ手提げ籠と言っても竹虎の籠の場合には、たまたま猫も入るのにちょうどの籠というだけの事だったのですが同時に掲載されている「ネコ家具」にはビックリです!数万円から十数万円と書かれています、実際に人が使う家具とは遜色がないようなしっかりした家具をネコ専用に製作しているとの事ですから本気です。


いやいや、猫カフェあたりから猫がブームのようになっている事は何となく知っていましたが流石にこれは凄い。九州の大川は家具の町として知られた地域です、ずっと前には竹虎にも若手の皆様が沢山来られた事もありました。猫の手を借りたいほどの人気とありますのでほんとに面白いものです。


土佐の手づくり工芸品


土佐の手づくり工芸品という冊子が発刊されています。高知の伝統の技が掲載されていて、その中には虎竹細工もありますが果たして「ネコ家具」のような斬新な発想はできていません。


虎竹バックニューヨーカー


家具も生活様式の変化という点でも、海外からの安価な製品との競合といった点からも自分達と似たような環境があるのではないかと思いますが、そんな中で新しいユニークなモノ作りは素晴らしい。見習わねばと又新聞記事を読み直しています。


続々・国産竹皮草履の秋

国産竹皮スリッパ


国産竹皮鼻緒の草履とは鼻緒部分を裏返した竹皮で巻いて作ったものですが木綿生地の草履と違い独特の渋い雰囲気が好きでよく履いていました。今ではあまり製造していないものの、やはり好きで持っているのはEVAスポンジ底を貼り付けて外履き用にした竹皮スリッパ。


国産竹皮底編み


元々室内履きとして製造していた竹皮草履を外でも履けるようにスポンジ底を付けるようになったのですが、お客様の要望で靴下を履いたまま使えるベルト式のタイプが出来ました。これにはダイガクと呼ぶ桐下駄の台に貼りつけていた竹皮編みを転用しましたが他の竹皮編みと違って機械で型押ししていないのが最大の特徴です。


型押ししない事によって足裏に心地よい刺激と竹皮編み本来の履き心地が味わえる反面、手編みだけで形を整えなればならず製造が難しく熟練職人の中でも一握りの職人しか編めないのです。


日本製竹皮下駄鼻緒スリッパ


下駄鼻緒を付けたスリッパも腕の良い職人だけの仕事です、底を張って一足づつグラインダーで削り出していきますので歪みがあると美しい仕上がりになりません。


日本製竹皮草履


しかし、竹皮草履の真骨頂はやはり室内履きです。海外からの類似品も沢山あるようですが本物の竹皮草履を守り続けたいと思うのは、自分自身が昔からの一番ファンだからです。世界一の室内履きとずっと思っています。


国産竹皮草履へのお客様の声




続・国産竹皮草履の秋

日本製竹皮草履職人


国産竹皮草履は一枚の竹皮を細く短冊状に裂きながら編み込んでいきます。数年間にわたって硬くカラカラに乾燥させた竹皮は水気を含ませて戻していくと、まるで薄い革のような柔軟性が出てきます。


国産竹皮草履製造


編み込みの最終段階になった国産竹皮草履をご覧いただいても、しっかりと藁縄が入っているのがご確認いただけるかと思います。製造途中にはナイロンロープに藁縄を継いで使いますので、この部分を見たお客様から「自然素材だけで出来ていないのではないですか?」


国産竹皮草履職人


そんなご質問いただいた事もありましたが、ご安心ください。竹皮草履は、もちろん地元の竹皮と、近くの田んぼの稲藁だけで製造されています、ナイロンロープは藁縄のリード線の役割をしているたけで最終的には全て引き抜かれます。


竹皮草履製造


今回は秋の稲刈りの収穫と竹皮草履にスポットを当ててお話しさせてもらっています。こうして職人の使うゴミ箱を見ても竹皮の端材の他に藁材が意外と多く、沢山使われていることが良く分かるのです。


稲わら束


藁といえば昔から竹と同じように日本人には身近で衣食住いろいろな所で活用されてきた素晴らしい素材です。雨合羽の役割をした蓑や、帽子などもありましたし藁ぶき屋根、畳など挙げていると色々ありそうです。竹皮草履と同じ作り方で藁だけで編まれた藁草履もありました、竹皮草履との大きな違いは藁クズが多くでてしまうので室内履きとしては使いづらい事、そして耐久性では竹皮に劣ってしまいます。


昔の小学校


父の時代には小学校への通学は鼻緒の履物が一般的でした。上履きも草履ばかりだったそうですが、竹皮と藁の草履では丈夫さが全く違うので値段も高く、竹皮草履は裕福な家庭の子供しか履いていなかったと言います。


日本製竹皮ぞうり


国産竹皮草履の前ツボ部分の留めに藁が使われています。決して堅牢で何年も耐久性があるという事ではありません、しかし盛り上がって歩きづらそうに見えても人の体重にあわせて沈み込み快適な履き心地となるのは自然素材ならではだといつも感じます。




国産竹皮草履の秋

稲わら運搬


収穫の秋、実りの秋、暑さもゆるんで心地よい風の吹いてくる季節は多くの楽しみもあり、何かと忙しい時期でもあるのです。竹皮草履がいかに大自然からの贈り物であるかと言うことを改めて感じるのも稲刈りの頃の事。


竹皮


筍が竹になる初夏、竹林に毎日のように通って集めてきたのは竹皮。しっかり乾燥させて綺麗に束ねられて今は倉庫で一眠り、だいたい3年くらいこのままに保管された竹皮が草履に編むのに最適な素材となっているのです。


淡竹、真竹の竹皮


ちなみに、むかって右側の竹皮は淡竹(はちく)の竹皮、斑点模様がないのが特徴です。左は真竹の竹皮、あと男性用の草履などは孟宗竹の厚みのある竹皮を使うなど3種類の竹皮をそれぞれ上手く活用して編んでゆくのが伝統の技。


竹皮草履職人


竹皮草履の材料として竹皮が必要なのは当然分かるけど、稲刈りと何の関係があるの?そんな疑問を感じるかと思いますが実は竹皮草履には竹皮と同じくらい稲わらが必要なのです。草履の芯の部分入っているのが全てワラ縄です、鼻緒の芯として内側に入っているのもそうですし、鼻緒を留めている前ツボ部分にも藁が使われます。


竹皮草履三俣


竹皮はその時にしか手に入れられない天然素材ですが、稲わらも秋の刈り入れ時にしかない逸品素材。田んぼ仕事を手伝って分けてもらった稲わらを手際よく藁縄にして編んでゆきます。ただし、稲わらがそのまま使えるかと言うとそうではなく、こうして天日で干して乾かしたものを一束づつ丁寧に選別せねばなりません。


稲わら選別


一年でも本当にこの時期だけの天気に恵まれた日の風物詩です。秋空の下一年分の稲わらを1週間から2週間も毎日毎日選り分けます。


竹皮草履用稲わら保管


竹皮は3年くらい寝かしたものが編みやすいのですが、稲わらも今年刈り入れた藁は使いづらく、やはり3年程度置いておいたものが扱いやすいのです。




「NO BAMBOO NO LIFE」竹のない人生など無い

大正市場、田中鮮魚店の田中隆博さん、Maryvonne Wetsch、竹虎四代目


虎竹の里から車ですぐの漁師町久礼は昔からカツオ漁で有名です。あの青柳裕介の漫画「土佐の一本釣り」の舞台となった町であり自分が小学校の時に映画化された時には知った街並や風景が大きなスクリーンに映し出されて興奮したものです。ちなみに準主役八千代役として、解散したキャンディーズの田中好子さんが初出演された映画で話題にもなりました。


鰹


久礼大正市場には今朝も立派なカツオがあがっています。昔の安価な時であれば一匹数百円という事もありましたが、近年はカツオ資源も心配せねばならないくらいだそうですので大きな鰹は価格もそれなりです。


鰹のたたき


田中鮮魚店の田中隆博さんが鰹のタタキを焼いてくれます。フランスから初めて虎竹の里に来られたMaryvonne Wetschさんは来日14回という日本通ではありますけれど藁の豪快な火で焼くのはあまりご覧になられた事はないのではないかと思います。


鰹のタタキ


実は久礼や須崎辺りでは鰹はあまりタタキにはしていませんでした、新鮮な鰹はそのまま「生」で食べるのが一番なのです。自分も小さい頃から食べ飽きるほど食べていたのはナマ、タタキは大人になって県外の方と食事をとる機会が増えてからの事でした。焼いたとしてもかなり薄く、それが山間部や漁港から遠い土地になると高知の中でも焼きが厚くなるので面白いものです。


久礼の素晴らしいところは人気のタタキも食べられるし、昔から地域で食されてきた鰹の「生」文化に触れてもらえる事かと思います。


田中鮮魚店の田中隆博さん


さて、鰹のタタキも燃える、漁師町久礼が熱くなっています。大正町市場のTシャツもできたらしいのです。田中さんの胸にも白抜きで鮮やかに「NO KATSUO NO LIFE」と書かれています、竹虎は「NO BAMBOO NO LIFE」と2011年から、ずっと言い続けてきました。この炎が、ずっと広がっていけばいいと思っています。




続・時代と共に移ろう青物竹細工

お一人様の茶碗籠


竹編みの工房はどこも思ったより随分と広い。それは長い竹を扱うので仕方ない事なのです。自宅兼工房のような形で仕事をされている職人の多くは長尺物の竹を使うために壁に穴を開けていたりする事が珍しくありません。誰だったか手元に垂れ下がった紐をスッと引くと、後ろに空けた竹用の小窓がパッと開く細工をしていた職人もいました。


お一人様の茶碗籠


坦々と進んでいく竹編みが完成しました。これから口巻の竹を取っていきます。


お一人様の茶碗籠


職人は手が四本あるといつも思う。ヒゴ取りの時にはもちろんですが、竹編みの際にまでも上手く足をつかって仕事をするのです。


お一人様の茶碗籠製造


竹ヒゴの表皮を薄く剥いでいます。この加工は丸竹の時にされる職人が多いと思いますが、父親譲りのやり方を変えることなくずっとこのやり方を貫いています。


お一人様の茶碗籠


口巻ができれば完成、後は水切れと通気性をよくするため四隅の底に足を付けて出来あがり。見事な出来栄えです。




時代と共に移ろう青物竹細工

お一人様竹碗籠


底を角くした椀籠は立ち上がりの部分が難しいと職人は口を揃えます。特に椀籠の場合には水をはじく竹表皮部分を内側にして編むので急角度で編み上げるのは技術が必要なのです。


家族の多かった昔は飯籠にしても茶碗籠にしても、両手で抱えるような大きなものがありましたが時代の流れと共に家族の人数が少なくなり台所も小さくなるとコンパクトな竹籠が求められるようになり数年前から「お一人様」として小さな茶碗籠を製作するようになりました。


お一人様竹碗籠、竹職人


今までのサイズ感を変えて小さくするのは実は難しい事なのですが、さすが熟練の職人です、もくもくと竹編みは続いていきます。


お一人様竹碗籠


竹は油抜きと言って、熱を加えて余分な油分を取り除く事により美しさを出し、耐久性や強さを高めるものです。しかし、「青物細工」は竹素材そのままを使い長く使える籠に編んでいき、竹本来の素朴さを活かしています。


普通は粘りがある扱いやすい真竹が使われる事が多いのですが、地域によっては淡竹(はちく)が好まれています。そして、淡竹を使う職人は真竹は嫌だと正反対の事を話すので面白いものです。更に嬉しくなってくるのは、この職人。自分で竹山に入り頃合いの竹を伐って担ぎ出してくるのですが先日は淡竹だったのに、今日は真竹だったりします。


「真竹の良いものがあったから...」


ああ、似ている


「今日は、良い魚が入ったから」


まるで鮨屋のオヤジのようでもあります。




いよいよメキシコから凱旋!日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」

日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」


世界竹会議に出陣していた日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」がいよいよ帰ってくる事になりました。メキシコからの出国で何かあったり、寄港先でトラブルがあったりして本来なら9月末にも帰ってくるはずだったのが2度、3度と遅れて遂には11月まで延期かも?との連絡まで来ていました。


日本を出発する時には暑い、暑いと言っていたのに、これでは到着する神戸港から大阪市内の菩提寺まで墓参りに走るのに風が冷たくなるかも?などと思っていた矢先本日遂に電話がかかってきて帰国の日程がほぼ確定したようです。今までは遅れる予定だったのが今度は反対に早まって来週末には引取りさせてもらえるとの事です!


お客様から竹虎への葉書


先日、お客様から心温まる嬉しい手書きのお葉書をいただきました。その中には日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を描いてくださっている物もありました。世界竹会議のために作った虎竹和紙の幟旗まで綺麗に書いていただいて本当に皆様に応援いだたいているのだと言うことが伝わってきます。


神戸港から大阪中央区の本政寺までは40キロ程度、しかし実際にはもう少し大阪寄りの倉庫からスタートしますので途中寄り道しても十分電池燃料はもってくれる距離ではあります。走り切った所にはトレーラーでお迎えに来てもらっていて虎竹の里まで運んでもらう計画です。


強力青竹踏みの割れ

強力青竹踏み


普通、青竹踏みは身の厚い一本の孟宗竹を半割にして使うのです。ところが、もっとガツンと来る青竹踏みが欲しいと言う社員の要望に応える形で製造をはじめた強力青竹踏み踏王(ふみお)くんは少し細めの真竹を使います。細身の竹だから急なアールが足裏にピンポイントで刺激があって初心者には少しオススメできかねますが、毎日愛用する上級者には一度使ってしまうと手放せない至極の逸品です。


しかし孟宗竹のように半割にするわけではなく、より強い痛キモ感のために6:4の割合で切り割りしてします。つまり、本来なら一本の竹から二つできるはずの製品が一つの製品しかできないのです。全体重がかかる物です、強度を考えて竹節を必ず二つ入れていますが、竹節の間隔は竹の元の方は短く、ウラ(先端)になると長くなり直径もだんだんと細くなります。従ってその頃合いの竹ばかりを選んで伐採して、更に厳選して製造しているのです。


青竹踏み


しっかり乾燥させたつもりでも自然の竹は呼吸しているので湿気を吸ってカビが生える、虫も入ります。竹によっては歪みがでて加工しなおす事もあるし、縮んだり、反対に広がったりもするのです。真竹は厚みのある竹ではありますが、日本最大級の孟宗竹ほどではないので沢山製造していく中にはこうして割れてしまう物もあります。


単純に竹を伐っただけの簡単な品のように見えますが、実は竹材確保だけでもかなり大変なものです。恐らく一般的な青竹踏みで満足できなかった方は多いかも知れませんが、今までずっと製品としてありそうで実は無かったものです。やはり、それなりの理由があるのです。


日本唯一の虎竹、竹のサンクチュアリ

日本唯一の虎竹林


「うわーっ、これはヤバイ!」


後ろからついて登ってくる方の弾んだ声に思わず振り向きます。目がキラキラ輝いて、ワクワクされているのが伝わってくるので嬉しくなります。しかし、虎竹の竹林はまだ見えてきたばかり、これからなのです。


日本唯一の虎竹


「本当に明るいですね!」


普通の竹林は手入れされず間伐もされていませんので竹の密度が高すぎて薄暗いところばかりです。風通しも悪く湿り気を感じてしまいますが、本来人の暮らしと共存してきた竹の本来の姿はこのようなものだと思います。


「皆さんがいつも見ているのは竹藪、これが竹林です」


虎竹林の中に入ってもらいました。下を流れる川のせせらぎと小鳥のさえずりが聞こえます。


「朝は品川にいて、今は別世界だ」


竹林の撮影


さっそく撮影をはじめたカメラマンが一言。


「一日中撮っていられる...。」


こうしてお越しいただくカメラマンの方は実に様々な場所に行って、色々な所を撮っているので知っている場合が多いのです。それなのに、こうして言っていただけるのはお世辞半分だとしても(とても、そんな風には思えないけれど)虎竹の里がいかに特別な竹のサンクチュアリだと言うことを改めて思うのです。




大きな蓬莱竹とアンパンマン列車

蓬莱竹(シンニョウチク)


自然豊かな風光明媚な所ほど災害になると被害が大きいそうです。高知の場合は、山が高く、平野部が少ないから川の流れが速い。大雨が降ったら尚さらです、泥に濁った激しいうねりは見ているだけで恐ろしくなってきます。竹は衣食住すべてにおいて人の暮らしに役立ってきたと常日頃から口を酸っぱくして言っています、防災面でも人の命と財産を守ってきました。


この川岸にある蓬莱竹(シンニョウチク)は護岸のために植えられたに違いありません。株立ちで大きくなるので庭や畑に根が広がる事がないので重宝される竹なのです。山の境界線や目印としての役割もありました、川岸にポツリと生えている事があり子供の頃は不思議に思ったこともありますが、あの場所は川の流れが急になる曲がり角だったのです。


さて、いつだった樹齢90年の蓬莱竹を見たことがありますが、これより一回りも二回りも小さかった。ならば、この竹はここで人の暮らしを一体何年見続けているのでしょうか?脇には土讃線の鉄橋が架かっていてアンパンマン列車が子供たちを乗せて楽しそうに走って行きました。こんな平穏な日々を、ずっと見守り続けてくれているようで何やら誇らしげにも見えてきます。


竹林


皆さんの周りを良くご覧になられて見てください。実は竹は、いつでも人の近くにあります。話かけています。忙しい毎日、たまに立ち止まって竹を愛でていただきたい、そう思います。




朝日新聞に掲載いただきました。虎竹文様、世界へ駆ける

朝日新聞掲載


10月11日の朝日新聞に掲載いただきました。虎竹文様、世界へ駆けるという見出しとは裏腹に「デパートで土下座して買ってもらったこともある」「借金を抱えて廃業しかないと追い詰められた」など田舎の小さな竹屋は経営難にあえいでいました。


しかし、少し間違いがあります。「デパートで土下座して買ってもらったこともある」ではなく「土下座しても買ってもらえなかった」なのです。「借金を抱えて廃業しかないと追い詰められた」も少し違う、一生返せないような多額の借金があったものの廃業など考えた事もなかったです。


日本唯一の虎竹林


借金は人を殺すが、人を生かしもするものだと身に染みてます。


「山には自分の子供が何万本もおる」


普通に考えれば狂っているかも知れません。しかし、本気で思っているし父が祖父が曾祖父が苦労してやってきた虎竹なら失くすわけにはいけません。


脱皮、竹虎四代目


有難いことに自分を変えてくれるキッカケを竹の神様から頂いたと思っています。そういえば大学4回生の時から続けているポストカードで「脱皮」と筆文字書いたことがありました。


竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI、山岸義浩)、竹虎社員


自分が恵まれているのは助けてくれる人がいつも周りにいる事。「脱皮」は一人では難しい、それが出来る天才のような人もいるのだろうけれど自分のような凡人には大変です。変わるには志を同じくする仲間が必要なのです。




炭を、どうして猿が食べるのか?

解毒のため炭を食べる猿


「昨年春頃、NHKダーウィンが来たで、どこかの国の野生の猿さんが、畑にまいた炭をとって食べている特集を放映していました。炭を食べる事により主食の木の葉の持っている毒素を体外に出しているとの事、これだと思いました。以来、毎日続けていますし、知人にも分けさせていただいております。白スリゴマ小さじ大盛り3杯に竹炭小さじ半分をよく混ぜ、豆乳で飲んでいます。」


お客様から竹炭パウダーへのこのようなお便りをいただきました。実はこの番組は大好きな日曜日の大河ドラマの前に放送されているので、ちょうど自分もこの回を目を皿のようにして観ていました。確かダマカスカルの猿の話ではなかったかと記憶していますが、暮らしている環境の中で本来なら色々な種類の木の葉を食べなければならないのに、数種類の木しかなくてお客様から申されているように、それぞれの樹木にある毒素が身体にたまってしまうそうなのです。


そこで、どこで毒素を排出する手段を知ったのか猿たちは時々炭を食べにやって来るのです。口の周りを真っ黒にして懸命に食べている姿が印象的でした。


竹炭パウダー


戦国時代の忍者が解毒のために炭を常に持ち歩いていたとか、炭職人に胃腸の悪い人はいないとか日本でも昔から炭の効用は広く知られていて使われてきたものなので竹炭パウダーを活用される方が増えていますが今に始まった事では決してありません。


竹炭ヨーグルト


自分は毎日無糖ヨーグルトを食べていますが、竹炭パウダー入れてマーブル状にすることがあります。パンやクッキーに入れるよりも断然手軽に摂取できるので習慣となりやすい方法です。


竹炭オムライス


しかし、何でもやれば良いと言う物でもなさそうです。先日は竹炭オムライスを作ってもらいましたけれど、どうも食欲がわきません...失敗もあるのです。




命を頂いて編む、棕櫚の木は生きている

土佐箕


日本各地で作られてきた箕(み)ですが土佐箕の突出した特徴は持ち手部分の棕櫚巻です。それぞれの地域で手に入りやすい素材を使って編まれたきた道具ですので温暖な気候の高知では棕櫚の材料が豊富だったと言う事です。


棕櫚皮


棕櫚は水にも強く強靭な繊維を持っていて、かっては様々な生活用に活かされてきた素晴らしい素材です。




見た目は南方系のヤシの木を思い出させますが、自分たちは小さい頃から馴染の植物でもあるのです。


棕櫚箒


棕櫚が使われる代表選手としは束子があり、棕櫚縄なども竹垣の製造にも多用してきました。近年音が静かで手軽という事でフローリング掃きに見直されてきている棕櫚箒なども棕櫚皮を使った製品です。


シュロ


ところが先日、箕を作るために伐り倒してきた棕櫚の木の葉が開いたのです。これには職人も驚いていましたが、棕櫚の木は伐り倒されてなお、まだ生きているのです。慌てて職人は横に寝かせていた木を壁に立てかけてやります。棕櫚の生命力に驚くと共に、自分達も山の命を頂き製品作りをさせてもらっているのだと改めて気づきました。日本唯一の虎竹にも全てに命が宿っています、頂く以上は無駄にできるものなど何ひとつとして無いのです。


勝負の赤備え、手提げ竹籠バック

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「シャー専用」と言っても知らない方には何の事か分からないかも知れません。機動戦士ガンダムというアニメに登場する主人公のライバル的な存在の人物が「シャア・アズナブル」、最近の番組はさすがに観てませんが今だに名前が出ているのを見かけますので物語の中では30数年にわたって人気を誇っているのではないかと思います。


この方は服装も、搭乗するモビルスーツも赤色で非常に目立つ事から赤い彗星と呼ばれています、今回はたまたま一点物の赤い手提げ竹籠バックがその赤に似ているのでシャーが持つならピッタリではないかと思い紹介してみました(笑)。


赤い竹手提げ籠バック


物語の中では戦いのシーンも沢山でてきます、そのような場では赤く派手な色合いは厳禁のはずですがどのようなマシーンに乗り換えようともシャーのこだわりはブレがありません。そこが格好が良く、魅力的なところです。


赤色をした戦いの衣装は、戦国時代に最強と言われた甲斐の武田軍から来ているのではないかと思って観ていました。「武田の赤備え」と恐れられ武田四天王のひとり山県昌景の姿を見ただけで敵兵が及び腰になるなどエピソードを何かで読んだ事があります。赤は目立って的になりやすいのは確かですが自己の存在を大きくアピールできますのでここ一番の勝負では役立ちます。赤い手提げ竹籠バックは勝負バックなのです。


栗金団とジンディール

ジンディール(銭籠)


竹籠は色々ありますが、その中でかなり異彩を放っているのがこのジンディール。前にもお話しさせていただいた事がありますが沖縄で編まれている籠で名前の由来はジン(銭)とディール(籠)でつまり銭籠だと言うことでした。


栗金団(くりきんとん)と言えばお節料理に入ってる料理ですが、上品な和紙に包まれた和菓子の栗金団があります。ジンディールを逆さにすると、まるで栗そのもののお菓子をつい思い出してしまうようなユニークな形です。


ジンディール(銭籠)


いつも身近に置いていますが改めて見ていると壺のように見えてきます。そういえば、先日ものすごく立派な蓬莱竹を見ました。株立ちの竹なので普通の竹のように外に広がる事はありませんが、ひとつの竹の塊自体がこんもりと大きく、これはかなりの年数の経ているものと思います。


ジンディール(銭籠)


蓬莱竹は護岸のために川岸によく見られる竹です、この場所も鉄道の橋が架かるたもとでした。防災にも役立ってきだけあって粘りがあり籠に編み込むとガッチリと締まって堅牢です。


ジンディール(銭籠)


ふっくらとした曲線の面白さが何と言っても特徴ですが、底部分です。最初に逆さにすると栗を連想させると言いましたように底には短く飛び出した四本の足が付いています。通気を高める機能性がジンディールの美しさをも高めています。


不思議な虎竹と「大創業祭」

日本唯一の虎竹


虎竹は本当に不思議な竹なのです。たったの1.5キロの間口しかない谷間の内側ででしか成育せず、麓から頂上までは竹があるが、峠を越えると竹が全くなくなってしまうので昔ながらの山道を歩くお遍路さんも驚いてしまいます。


日本唯一の虎竹の里


京都大学から二回に渡って研究に来られた先生がおられるのですが、虎模様の原因は土中の特殊な細菌とも言われるし、台風銀座、高知特有の強い潮風など気候風土とも言われるが今でもハッキリした事は解明されていなのです。


竹虎四代目


この虎模様の竹に魅せられて、大阪は天王寺から遠くこの地に曾祖父宇三郎がやって来たのが100年前。それまでも土佐藩に年貢として納められていた地域の特産を全国に売り出したい、美しい竹に惚れ惚れして歩み始めた困難な道でした。しかしそれは、さぞ面白くエキサイティングな人生であり、竹の道だったに違いありません。


竹虎社員1960


いよいよ本日限りとなった竹虎本店での「大創業祭」、お客様はもちろんなのですが若い社員一人一人にも虎竹の里の歴史にも思いを寄せて欲しいと思って開催する事にしたのです。


竹虎大創業祭、本日より3日間開催します。

50年近く前にご購入いただいた水車小屋オルゴール


「50年前に竹虎さんに購入した商品ですが、修理お願いできますか?」


ええっ!?50年...?そんな前から使い続けて頂いているのかと本当に驚きましたが竹虎本店がオープンしたのが昭和45年(1970年)3月でした。今から48年前の事になりますから、お客様は本店が開店した当初にお求めいただいたものだと思います。木と竹を使った水車小屋のミニチュアです、実はただの飾りではなく中にオルゴールが内臓されているので捨てられずにずっと持たれていたとの事でした。


竹虎本店g


当時の店はこのような感じ、竹細工の販売というよりも虎竹の里の地域の方々や山の職人、内職さん、社員に自分達の日本唯一の虎竹が全国でこのような素晴らしい製品になっていくのだというのを知ってもらいたい、誇りを感じてもらいたいという祖父の思いが一杯詰まった店舗でした。


こんな竹の使い方見た事あるでしょうか?屋根の看板の上には、根から掘り起こした極太の孟宗竹を堂々と掲げています。そしてカラーでないので分かりづらいのですが店舗の全面、両面には虎竹、真竹、黒竹、竹穂、杉皮といった色々な素材で飾られていて、この建物自体が展示品となっていました。


竹虎石碑


今では当時の店は無くなり数年前に更地にしましたので本社前に移動させて残っている石碑だけが当時を偲ばせるものとなっています。


竹虎本店


しかし、二代目義治の作った店舗はお陰様で日本最大級と言われるほど規模を大きくし観光バスなども頻繁に立ち寄っていただける竹製品、竹細工専門店となったのでした。


竹虎本店


竹製品をあまり使わない時代となり、観光も大型バスから個人のマイカーが主流となりました。


竹虎本店


高知県にも様々な観光施設が増えると共に竹虎本店の役割も随分と変化してきています。


竹虎本社、竹虎四代目


店舗面積も小さくなりましたが嬉しい事にインターネットでご覧になられたお客様が実際の商品を見たいと海外からわざわざ来られる事もあります。竹虎は創業が明治27年ですから今から124年前の事です、株式会社に設立したのは大阪天王寺の工場から日本唯一の虎竹の里に本社を移して数年後の昭和26年10月6日。


竹虎本店


大創業祭はこの会社設立の記念日に合わせて、本日10月6日から3日間開催させていただきます。感謝の気持ちで心ばかりではありますが特別なプレゼントや今まであまり出来なかった現品限りの特価販売なども予定しています。このように長く営業を続けてこられましたのは皆様のお陰です、まっこと(本当に)ありがとうございます!




太い孟宗竹とゴマ竹

極太孟宗竹


孟宗竹は日本最大級の竹ですが、これくらいのサイズになってくると迫力があります。竹の身部分の厚みを必要とする竹細工や、極太竹を原料にする竹ワインクーラーなどには最適の素材です。しかし、孟宗竹なら何処の竹も同じように太いのかと言うと実は全く違っていて、元々赤道直下の地域に多く観られる植物だけあって国内でも四国、九州など温暖な場所に育つ孟宗竹は驚くような太い竹があったりましますが、反対に東北など寒い地方に行きますとかなり小振りな竹が多くなります。


群生孟宗竹林最北地として知られ、開湯1300年の山形県の湯田川温泉にお伺いさせてもらった事があります。地域の皆様の孟宗竹への思いも素晴らしく孟宗汁など名物料理は最高に美味しい!そう言えば、この庄内地方は高知、熊本と並んで食材が特に美味しい所だと聞いた事を思い出していました。感激して雪の竹林を見学させてもらいましたら、やはり四国の孟宗竹などに比べると小さな竹が多かったのです。


ゴマ竹


さて、高知の孟宗竹に戻ります。すぐ近くに立ち枯れした孟宗竹が一本ありました、随分古い竹で割れも目立ちます、筍を掘ることも少なくなった竹林ではこのような竹は良く見られます。この竹を「ゴマ竹」と呼ぶと長年の技術でゴマ竹を作る京都の職人さんには怒られそうですが、人の手が加えられない竹林で自然に枯れてアピオスポレルラ・バンブサエ菌によりゴマ状のブツブツが出来ています。


もちろん銘竹のゴマ竹とは比べようもありませんが、恐らく最初はこの立ち枯れしてゴマ状になっていた竹をもっと美しく沢山生産したいという思いから試行錯誤を重ねて現在の技が編み出され磨かれてきたと思います。職人さんも、その年の天候や細菌の具合によりどんなゴマ竹になるかは分からないと言われていました。結局、日本唯一の虎竹もそうであるように人は自然界のお手伝いはできるけれど、あとは神のみぞ知る領域です。


虎竹コーヒードリッパー、雑誌「珈琲時間」に掲載

珈琲時間


朝はコーヒーが無いと始まらない方です、一日に何杯も飲む珈琲党です。雑誌「珈琲時間」は知りませんでしたが、コーヒーも奥が深くこだわりだしたら豆、道具、入れ方など際限なく行ってしまいます。そういえば先日、一杯数千円というコーヒーを入れてくれてる店があると聞きましたが恐らくそんな世界もあるかと思います。


虎竹コーヒードリッパー


雑誌「珈琲時間」に掲載いただいた虎竹コーヒードリッパーは、お客様のお声から出来た製品です。元々は海水から塩を取るために使われていた塩取り籠をイメージしていましたので網代編みで試作していたもののサイズが小さいし大変だというので現在の虎竹ドリッパーになりました。


虎竹コーヒードリッパー


自分は毎日のコーヒーにはカフェの店長さんに教えてもらったオランダ、テクニホルム社のモカマスターというコーヒーメーカーを使っています。世界竹会議で買ってきた美味しいコーヒーを更に美味しく入れてくれるので満足していますが時間にゆとりのある週末に気がむけば虎竹コーヒードリッパーを使う事もあります。


ドリッパーも色々なものがあってペーパーフィルターが不要のタイプもあったりましす。しかし、虎竹のように風合いも楽しめるドリッパはありません。食べ物は目で楽しみ、味わうものでもあろうかと思います、日本唯一の虎竹で入れたコーヒーならではの味わいがあります。


炭化竹の歪み

炭化竹踏み


青竹踏みと言いますと、いつでも何処でも誰でも手軽にできる日本古来の健康グッズとして竹虎四代目の30年ブログでは何度も登場してくる竹製品のひとつです。しかし、青竹というのは一見竹を割っただけのものですし簡単そうに思われがちですが、その扱いは非常に大変です。そもそも竹素材そのままで加工されているので手は確かにかかりませんが、手をかけようがないからこそ、同じ太さ、身の厚み、色合いなど厳選せねばならず竹材の確保が必要になってきます。


青竹踏みは青竹と言っても本当に青竹のように自然素材そのままではありません。長くご愛用いただけるように熱湯で竹の油を抜く「湯抜き」という加工をしています、そして十分に乾燥させた素材だけを製品化していきます。一番やっかいなのはカビです、生きた竹なので乾燥させたつもりでも湿度の高い時期などは水分を吸収してカビの原因となります。竹の内側は綺麗な白色をしているためカビも目立ってしまうという事もありますが、カビの発生スピードも驚くほどでキチンと管理せずに少し目を離していると真っ青になってしまう事もあるくらいです。


カビは竹の三悪のひとつですが、そのカビや防虫のために一手間かけたのが炭化加工された竹踏みなのです。高圧、高温で蒸し焼き状態になった青竹踏みは、煤竹のような枯れた色合いになって釜から出てきます。この表皮をグラインダーで磨いていくと何とも美しい光沢がでてカビ止め、防虫効果の高い竹踏み(炭化)が完成です。


職人の竹物差し


そもそも竹は狂いがないことが自慢です、小学校の頃に竹の物差しを使っていた方も多いと思いますが、一昔前の物差しは全て竹製でした。今でも昔ながらの職人が使う物差しは、ほとんどが竹です。ただし、これは竹を一定の幅に縦割した場合に事であり、今回のように半割にした場合には又少し違ってきます。もちろん縦方向には環境変化があったとしても全く長さに狂いはありませんが、湿度や温度の加減により竹が呼吸しているので横方向への伸び縮がでるのです。


炭化加工して出来るだけそのような事がないようにしてはありますが、やはり天然素材です。加工の具合は同じでも、それぞれの竹の個性があり含水率含めて一定ではありません。


青竹踏み


平らな場所で使おうと思っていたら、製造時にはしっかり平らにしてあるはずなのに歪みがあって微妙にガタつきが出たりします。これは自然の竹を半割しただけのシンプルな竹踏みという製品ならではのどうしようもない特性と思っていただければと思っています。このような場合には下に厚めのマットを敷いたりすることで解決します。


歪みの少ない炭化加工でも数百本、数千本の中にはこのように縮んでしまう竹踏みもあるのです。




60年一度の竹の花はラッキーアイテム!?

竹の花プレゼント


先月、日本最大規模の孟宗竹の開花を見つけてから色々な事がありました。前日のブログでお話ししました新聞掲載もそうですが、部分開花は全国的に時期をずらして発見されているものの、いずれにしても竹の神秘性やロマンを感じる「60年に一度の花見」です。竹虎ではこの竹林の竹の花を一輪づつ全国のお客様にお送りさせていただくようにしています。


孟宗竹の花


なにせ地元の古老の皆さんでさえ竹の花は記憶に無く、竹葉の色が変わってきたのをずっと不思議がっていたほどです。一生の内に一度見られたら運が良いというラッキーアイテムかも知れないと、お客様によっては毎日愛用されるバックの中に忍ばせられているそうです(笑い)。


竹虎全社会議


昨日はちょうど月に一度の全社会議でした。全社会議では色々なテーマで話合いをしていきます、竹虎の今、そしてこれからを議題にする事もあれば、それぞれの社員にも2度3度と発言の機会を持ってもらうようにしています。お客様から毎日いただく嬉しいお声も全社で共有しますが、その中に竹の花を大事にバックに入れられている先ほどのお客様がおられたのです。


淡竹の花


正直、竹虎の工場には竹の花が山積みされていましたし、田舎生まれ田舎暮らしの社員にとっては60年ぶりの竹の花とは言え都会の皆様のように珍しさが無かったようです。しかし、実際のお客様の声で改めて自分達が自然豊かな恵まれた場所に生かされている事に気づいたようです。「そんなラッキーアイテムなら自分も持ち歩きたい」そう言うので、それなら60年に一度の花より、更に120年に一度しか咲かないと言われる淡竹(はちく)の花が良いと教えます。


淡竹の花


ところが淡竹の花は孟宗に比べて数段小さい上に、もろく、ほとんどが実をつけていない事が多いのです。花から実を取り出してみようと思ってもパラパラと殻が残るだけです。長い時を経た後に一度だけ開花して、それで実が見つけられないとは本当に幻。種を120年のラッキーアイテムとするならば、手にいれるのは大変、甘くありません。




孟宗竹の花が朝日新聞に掲載されました

朝日新聞、竹の花


土佐市西鴨地で開花した孟宗竹の花が朝日新聞に掲載されました。たまたま別の取材で竹虎に来られていた記者の方との雑談で竹の花の話しが出たのでしたが、こうして記事になり多くの方の目に触れる機会に繋がりましたので世間話も大事かも知れません(笑)。


孟宗竹の花取材


これだけの開花は本当に珍しいと思っていましたが、新聞社さんに取材にお越しいただいた時点では、正確にはどれくらいの規模かも分かっていませんでした。しかし、大学で研究されている方の調査で日本最大級の規模という事も分かりましたので地元の方々にも更に関心をもってご覧いただく方が増えればと思っています。


テングス病


さて、今回は孟宗竹の花だったのですが実は西日本では数年前から淡竹(はちく)の花が話題にのぼる事が多く高知でも今年になって竹林の様子が少し変わってきたという事を感じていました。知らない所を車を走らせていても自然と竹に目が行きます、美しい竹の姿に引き返すこともありますが先日も、ふと見た竹林が気になって車を停めて歩いて見に行ってみました。


竹、テングス病


竹の花かも知れないと思い見に来たのでしたが、これはどうやらテングス病という竹の病気の一種です。Aciculosporium take Miyakeといわれる病原菌に竹が感染して発病するそうですが、竹の開花と見間違えてしまいます。竹の手入れが行き届かず元気のなくなった竹林に見られる病気です、竹の開花により竹が活力を無くして枯れていく過程でも発生する事もあるので竹の花とも関係性が言われています。


虎竹林


青々とした葉が繁り生命力にあふれる竹、その竹の数十年、あるいは百数十年に一度の節目の時期に来ているように感じます。