Premiere Classeに来て本当に良かったと思う出会いがありました。実は、虎竹バックニューヨーカーは今から60数年前に開発された製品を日本唯一の虎竹で復刻したものです。
もともとモダンな竹の壁掛けかと思っていたものが一瞬で立体的な竹籠に変身する素晴らしさに心を奪われ、遠くニューヨークの街角で発見されてから日本に「里帰り」したという数奇な運命に魅せられて製作しました。
「里帰り」...?
一体どういう事?と不思議に感じられる方もおられるかと思います。当時の竹細工、竹製品というのは日本から欧米への輸出品の一翼を担っていて、このタイプの竹バッグも大量生産されて船で太平洋を渡って行ってました。
フラットになる構造も製品を一度に大量に輸送するための工夫でもあったのです。ところが、誰がどこで、どうして作ったものなのか資料もなければ昔を知る職人さんもいません。しかし、何とか知りたいと手探りで探しているうちに行き当たった製作者の小菅小竹堂さん。天才的な竹の造形美は戦前に産業工芸デザイナーとして活躍されていたからこそでした。
このようにして謎が解き明かされたニューヨーカーの原型の竹バッグは海外向けの製品でしたので小さい頃におばあちゃんの持っていた竹バッグで遊んだ記憶があるというアメリカの方にはお会いした事がありました。
しかし、肝心の生産国である日本の職人や製造会社、お客様の姿は全く見えてこなかったのです。ところが、今回のパリの展示会に偶然やって来れた東京のお客様が
「これ、使ってました!」
と言われるから驚きました。何と50数年前にハワイで購入して日本に持ち帰りずっと愛用していたそうなのです。当時の竹バッグの事を間接的に聞いてばかりだったのですが遂に実際に手にされていた方に巡りあいました。
犬もあるけば棒に当たりました。
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