鉄鉢とは元々は托鉢で僧が食べ物を入れる時に使っていた丸い形をした器の事です。鉢は鉄製だったので鉄鉢「てっぱち」と呼ばれていますが、竹工芸で初の人間国宝になられた生野祥雲齋が竹細工の世界に取り入れた籠だけあってずっと作り続けられている籠であり、冬ならミカンなど入れる馴染のある定番の籠のひとつなのです。
子供の頃から随分と目にしてきた馴染みの竹細工なので最盛期にはどれだけの生産がされていのたかと思っていましたが、ある職人さんに当時の様子を聞くと、ご夫婦で朝から晩まで作って何百個という単位で仕上げていたと言うから驚いた事があります。もちろん大量生産の時代は分業化が進んでいて、それぞれの内職さんから出来あがってきた部材を合わせて最終工程のみの場合が多かったと思うのですが、それにしても面白い時代があったものです。
いくら編んでも注文が来るので「誰か竹籠を食っとるのか?」と職人が冗談を言ったという、そんな時代も経てきた籠でもありますので、素朴な中にも完成された美しさのある鉄鉢です。
今回は虎竹で作ってみた鉄鉢シックな感じに編み上がっています。いつものミカンも美味しそうで、つい手が伸びてしまいそうなのです。
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