その日は新聞を見てビックリ!そして本当に嬉しく思いました。高知新聞厚生文化事業団主催の第25回高新大賞を「ねはんの会」の土居瑞(みず)先生が受賞されたのです。地域の障害福祉に50年以上も取り組んでこられた土居先生とは祖父の代からのお付き合いになっていて瑞先生と呼んで親しくさせて頂いてきました。
昔は黒竹暖簾というものを作っていて小さい竹、短い竹筒に糸を通すという細かい仕事が沢山あったので、瑞先生の施設におられる生徒さんに手伝ってもらっていたのが、そもそもの始りだったようです。
ある程度の年代の方でしたら覚えておられる方も多いのではないでしょうか?昔の室内の天井に吊られた灯りにはスイッチ紐がついていました。その紐を引っ張って電気を点けたり消したりしていたものですが、スイッチ紐にも黒竹や染竹を使った製品があって当時は大ヒット商品だったのです。
「生涯現役 余生はなし」がモットーの先生は今でも高知市春野町にある多機能型障害福祉サービス事業所「涅槃(ねはん)の家」で多忙な日々を送られていますが、高知新聞さんから表彰状と副賞が贈られるとの事で自分もお祝いに駆けつけていました。
事業所に通われる皆様、ご家族の皆様、職員の皆様で会場はいっぱい、熱気に包まれています。
そして、瑞先生の受賞挨拶を拝聴して改めて先生の功績の偉大さ、大きな意義を痛感しました。
こちらには何度もお伺いした事がありますが、いつも楽しみにしているのが皆さんの筆文字です。書道をたしなむ瑞先生の指導で素晴らしい文字を書かれているので感動です。自分が下手なりに筆を持つようになったり、竹筆を製作したりしたのも実はこちらで多くの書道の作品を拝見させてもらった事が理由のひとつなのです。
瑞先生のご自宅には祖父である竹虎二代目義治が製作した門セットがありました。もう数十年前の仕事ですので古くなり朽ちかけていました。
それを新しくして欲しいとの電話を頂いてからが瑞先生と自分とのお付き合いの始まりです。まだ20代の後半だった自分は竹が一体誰の役に立って、誰に喜んでもらっているのか知らずにしました。
「こんな竹なんか、こんな竹なんか、こんな竹なんか...」
何千回、何万回思ったことが分かりません。しかし、どうしても忘れられない虎竹。あの職人の顔、歴史を刻む山々、竹しかないボロボロの工場。背を向けても、どうする事もできず、あふれるのは涙だけ。そんな時に「自分の虎竹」を教えてくれたのが瑞先生だったのです。
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