連日寒い日が続いていますが、寒いついでにもっと寒い地域の竹についてお話ししてみたいと思っています。根曲竹は大人の小指から親指くらいの太さしかない細身の竹なのです。竹という名前で呼ばれていますがチシマザサと言って笹の仲間であり寒い地方や高い山に成育する非常に粘りがあり堅牢な竹なのです。
スズ竹や篠竹などと同じような性質を持つ竹です。先日、ブログでお話ししました根曲竹製の椅子は優美な姿をしていましたが、一般的にはこの根曲竹茶碗籠を見ても分かるように編み上がる竹細工はより素朴な風合いでありその強さから農業用、漁業用として古くから広く使われ続けてきた竹なのです。
孟宗竹の北限は函館など南北海道だと言われていますが、竹林が広がり一般的な食文化としても根付いているのは山形県までではないかと思っています。それでも竹は元々南方系の植物なので、四国や九州など西日本の竹に比べると随分と細い印象を受けます。
なので根曲竹も寒い地方と言っても、せいぜい東北までのように思われがちなのですが実は北海道でも大量に生産され竹細工への利用もかっては盛んだったのです。
いつの時代のものか誰にも分からなくなっていますが少なくとも戦前に編まれて使われていたような風格を感じさせる北海道の根曲竹製魚籠があります。この籠ひとつとっても、手のこなれた職人とその背景にある竹のある暮らしが目に浮かぶようです。
この時期はすでに北海道は連日の雪ですので根曲竹の伐採は10月中頃までには終わっています。自分もいつもの龍馬ブーツでは滑って危ないので、数年前に帯広に行った時に量販店で購入させてもらったスノトレと言う雪用の靴を履いてきました。(ちなみに高知では暑くて一度も履いた事はありません)
しかし、こうして見ると北海道の山々には笹類が非常に多く繁っています。落葉して寒々とした銀世界に青々とした葉の色合いは一際目立ち、竹の生命力の強さを改めて感じます。
雪に埋もれて重みに耐えて春を待つのですが、根曲竹もこうした積雪により根が曲がる事から名前がついたといいます。こうして雪に鍛えられて強靭な竹の性質が生まれるのです。
笹といえども根曲竹の背丈は2メートルゆっくり越えて3メートル近くの大きさに成長します。特に竹細工に使える太い素材は山奥にまで入って伐採せねばならないそうですが、深い竹林に迷い込むと周りの景色が見えないため方向感覚を見失い帰れなくなる事もあるそうです。
まさに雄大な北海道ならではのお話しです。いくら神秘の竹林と言っても虎竹の里の山奥でも、さすがに方向を見失うまではいきません。道に迷うと、つい山を下りたくなるように思うのですが現地の方に言われました、
「道に迷ったら登る事だ、頂上はひとつだけだから迷わない。」
南国育ちの自分です、雪の中そんな山奥にまで行くことはありませんでしたが何やら人生の教訓のようにも聞こえました。
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