根曲竹(チシマザサ)は主に東北、北海道はじめ寒い地方に育つ竹で、竹と名前が付くものの笹の仲間であり高さも直径も通常の真竹などに比べるとかなり小さい竹なのです。雪の多い地域で育ちますので重みで根元が曲がるから根曲竹といいます。
寒い地方竹はスズ竹にしろ強靭で粘りのある特性をもっていて実用性のある竹細工には最適ですが、この根曲竹も雪に鍛えられたような堅牢さが持ち味で昔から生活用品のみならず農業用、漁業用の竹製品の素材として広く活用されてきました。現代でもその竹の風合いは根強く支持されていて籠やざるに加工されていますが本日の主役は同じ根曲竹でも、そのような小さな竹細工ではありません。
この背もたれの付いた座り心地の良さそうな椅子をご覧になって何で作られたものか分かる方が何人いるでしょうか?恐らくは、ほとんどの方が籐製の家具か何かと思って気にもとめないかも知れません。籐家具なら海外で沢山製造されていますし、目を見張るようなデザインのものも見かけることがあります。
しかし、実はこれらがかって非常に高い評価を受けていた根曲竹製の家具なのです。今から60数年前、戦後の日本は物資不足ということで竹製品にも多く需要があり農村工業の副業として竹細工の籠が売上で日本一の地域などもあったと言う、竹を取り巻く環境も現在とは全く違う時代背景がありますが、根曲竹をひとつの工芸的な製品化として目指された方々がいた証です。
これらの根曲竹の椅子は、おそらく50年くらい前の作品ではないかと思います。弾力に富み加工性の高い根曲竹の性質を活かした家具は今では全く見る事すらできませんが、当時はテーブルなども創作されていたようです。
このように竹を丸く曲げる技は、黒竹を使った丸窓などに残っているものの黒竹が装飾であるのに対し強い根曲竹を加工する事により実用的な家具とした所が非常に面白く興味をひかれるところです。
今の時代にあれば喜んでいただける方も多いであろう根曲竹の家具、しかし、たまたま出会うことがあってこうして僅かながらもお伝えすることができています。時代の流れの中で残念ながら消え去り、忘れ去られてしまった竹細工、竹製品は数えきれないほどあるのだろうと思います。
Yuki lock 返信
これ欲しいです!いいね入れました。フェイスブックにもしエアしました
竹虎四代目 返信
コメントありがとうございます!根曲竹の椅子、カッコイイですよね。自分も使ってみたいのですが残念ながら今では製作されていない逸品となっています。このように時代と共に惜しくも無くなっていった竹製品は多いです。