竹の成長力は驚異的でありわずか3ヶ月で20数メートルの親竹と同じ大きさになる生命力は継続利用可能な唯一の天然資源と言われています。竹虎が1985年から「21世紀は竹の時代」と話してきた所以でもありますが、日本には約600種、世界で見ると約1300種もの種類のある竹の中でも虎竹の里でしか生育しない虎斑竹(とらふだけ)という竹は本当に不思議な存在です。
かってイギリスBBC放送の取材に来られた時には「ミラクル!」という言葉を連発されていましたが、まさにミラクルバンブー。京都大学の研究者の方が二度来られても表皮に現れる虎模様は土質にある特殊な細菌の作用であるだろうと言うことしか分からず現在でも解明されていない謎なのです。
ところが、この虎模様に近年ずっと異変が起こっています、虎模様の竹が徐々に少なくなってきているのです。虎竹の色付きのメカニズムは分かっていませんが、土質の細菌の他に日当たりや潮風の影響など複雑な気象条件がからみあい生み出される大自然の意匠だと考えています。そこに山の職人の手が加わるのですが人の力は微力です、どうにもできない神秘的な力を感じます。
「霜がおりると虎竹の模様が付く」
土地の古老の言い伝えのように聞いていた言葉があります。豊富に虎竹が山出しされていた当時は全く気にとめていませんでしたが、近年の温暖化により、冬でも温かい虎竹の里を考える時重く大きくのしかかってくる言葉となっています。
自分の小さい頃は、南国土佐と言われ黒潮が目の前を流れる温暖な土地であるこの辺りでも冬になれば一面真っ白い霜が降り、雪合戦ができるほど雪も降る事もあって冷え込みの厳しい日が続いたことを思い出します。
この言葉を裏付けるように高知大学の先生からは気温と植物の色付きの関係を教えていただく機会もありました。元々南方系の竹ですので、寒さはある種の刺激となり黒く色づく可能性があるとの事でした。つまり、現代の温暖化が虎竹の色づきに大きな影響を与えていると考えられます。
昨年、虎竹を使った電気自動車「竹トラッカー」を製作しました。クラウドファンディングを活用したのも、虎竹の里から横浜まで1000キロメートルを11日間かけて走破したのも、衰退を続ける竹の可能性を一人でも多くの方に知って欲しいと思ったからでした。
そして、もうひとつの大きな目的が自分達が直面する環境に対する意識でした。二酸化炭素を出さない環境にやさしい電気自動車に、世界でも類まれな成長力をもった竹材の組み合わせ、日本唯一の虎竹を使うことで温暖化への警鐘を鳴らしたいと考えたのです。
「ハチドリのひとしづく」という本があります。火事で燃えている森に、一滴の水を口にいれて運ぶハチドリの話です。竹虎のやっている事も小さな試みであり、まさに自分とハチドリが重なります。しかし、「いま私にできること」こう思う時、本当に微力ではありますが全く無駄ではないことを確信しています。
3年に一度世界の竹関係者が一堂に会する竹のオリンピックともいうべき会議が、来年8月メキシコはXalapa(ハラパ)という町で開催されます。この会議に日本人としてただ一人基調講演の機会をいただきました。竹虎がこの不思議な美しい竹と出会って100年、地球温暖化の影響により初めて体験している虎竹の変化を日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を走らせる事によって伝えたいのです。
竹虎のハチドリのひとしづく、2018年に挑戦する一つです。