「いま私にできること」竹虎の、ひとしずくの挑戦

日本唯一虎斑竹(Tiger Bamboo)


竹の成長力は驚異的でありわずか3ヶ月で20数メートルの親竹と同じ大きさになる生命力は継続利用可能な唯一の天然資源と言われています。竹虎が1985年から「21世紀は竹の時代」と話してきた所以でもありますが、日本には約600種、世界で見ると約1300種もの種類のある竹の中でも虎竹の里でしか生育しない虎斑竹(とらふだけ)という竹は本当に不思議な存在です。


かってイギリスBBC放送の取材に来られた時には「ミラクル!」という言葉を連発されていましたが、まさにミラクルバンブー。京都大学の研究者の方が二度来られても表皮に現れる虎模様は土質にある特殊な細菌の作用であるだろうと言うことしか分からず現在でも解明されていない謎なのです。


ところが、この虎模様に近年ずっと異変が起こっています、虎模様の竹が徐々に少なくなってきているのです。虎竹の色付きのメカニズムは分かっていませんが、土質の細菌の他に日当たりや潮風の影響など複雑な気象条件がからみあい生み出される大自然の意匠だと考えています。そこに山の職人の手が加わるのですが人の力は微力です、どうにもできない神秘的な力を感じます。


日本唯一虎斑竹(Tiger Bamboo)、竹虎四代目


「霜がおりると虎竹の模様が付く」


土地の古老の言い伝えのように聞いていた言葉があります。豊富に虎竹が山出しされていた当時は全く気にとめていませんでしたが、近年の温暖化により、冬でも温かい虎竹の里を考える時重く大きくのしかかってくる言葉となっています。


自分の小さい頃は、南国土佐と言われ黒潮が目の前を流れる温暖な土地であるこの辺りでも冬になれば一面真っ白い霜が降り、雪合戦ができるほど雪も降る事もあって冷え込みの厳しい日が続いたことを思い出します。


この言葉を裏付けるように高知大学の先生からは気温と植物の色付きの関係を教えていただく機会もありました。元々南方系の竹ですので、寒さはある種の刺激となり黒く色づく可能性があるとの事でした。つまり、現代の温暖化が虎竹の色づきに大きな影響を与えていると考えられます。


日本唯一虎斑竹(Tiger Bamboo)、竹トラッカー


昨年、虎竹を使った電気自動車「竹トラッカー」を製作しました。クラウドファンディングを活用したのも、虎竹の里から横浜まで1000キロメートルを11日間かけて走破したのも、衰退を続ける竹の可能性を一人でも多くの方に知って欲しいと思ったからでした。


そして、もうひとつの大きな目的が自分達が直面する環境に対する意識でした。二酸化炭素を出さない環境にやさしい電気自動車に、世界でも類まれな成長力をもった竹材の組み合わせ、日本唯一の虎竹を使うことで温暖化への警鐘を鳴らしたいと考えたのです。


ハチドリのひとしづく


「ハチドリのひとしづく」という本があります。火事で燃えている森に、一滴の水を口にいれて運ぶハチドリの話です。竹虎のやっている事も小さな試みであり、まさに自分とハチドリが重なります。しかし、「いま私にできること」こう思う時、本当に微力ではありますが全く無駄ではないことを確信しています。


竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)


3年に一度世界の竹関係者が一堂に会する竹のオリンピックともいうべき会議が、来年8月メキシコはXalapa(ハラパ)という町で開催されます。この会議に日本人としてただ一人基調講演の機会をいただきました。竹虎がこの不思議な美しい竹と出会って100年、地球温暖化の影響により初めて体験している虎竹の変化を日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を走らせる事によって伝えたいのです。


竹虎のハチドリのひとしづく、2018年に挑戦する一つです。


虎竹やたらソファベンチで夢の中

虎竹やたらソファベンチ


ご相談を頂いていた虎竹やたらソファベンチが出来上がりました。予想していた通り、これなら商業施設のエントランスに置いていただいてもバッチリ目立って、格好が良いのではないかと思っています。


虎竹やたらソファベンチ


前回、この30年ブログで紹介させていただいた時はまだ製作途中でしたが完全に編み込むとこのような形になるのです。


虎竹やたらソファベンチ


やはり、ひとつ形にしますと思った通りになる所、そうではない所が明確になります。特に座面の快適さを考えると芯に使っている鉄フレームの形や構造からやり直さねばならない事が分かりましたので既にコチラは修正点を書きだし打ち合わせ済です。新年早々には新しいフレームが出来てくる予定になっています。


虎竹やたらソファベンチ


同じ編み方で言いますと、前々から受注製作している虎竹ヤチャラ椅子には鉄フレームが入らず竹の編み込みだけで仕上げています。竹の強さ、しなり、弾力、軽さ等を感じていただける逸品です、横から見るとリンゴの形にも見える中央に穴の空いた虎竹スツールにもフレームは入っていません。


虎竹やたらソファベンチ


しかし、フレームを入れることによって竹編みだけでは実現できないデザインがあり用途は広がります。一番わくわくして楽しみにしているのは自分です。


虎竹やたらソファベンチ、山岸義浩、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


理想にはまだまだでも寝心地は最高です。横になりながら夢の中、以前より製作してみたかった沢山の方が腰かけられる、ちょっと目を引くユニークな形のベンチが出来上がりました。


100年間、虎斑竹と共に生きてた竹虎だからこそ

日本唯一の虎竹伐採、山の職人


昔に比べてますと年末年始の特別感は随分と少なくなりました、しかしそれでも歳末となると何となく気忙しく感じるものなのです。年末の風物詩と言うものがあります、たとえば全国ニュースでは上野アメ横の賑わいや、しめ縄作り、門松作りの様子など定番となっていて例年の事ではありますものの、つい見てしまいます。


日本唯一の虎竹伐採


高知で歳末の風物詩といえば自然豊かで海の幸、山の幸もいっぱいですので話題に事欠きません。高知城は日本100名城に選定されているだけでなく江戸時代に建造された天守という事で全国的にもファンの多い城郭のひとつですが、年に一度の笹の葉をつかった大掃除など必ず取り上げられる光景です。


日本唯一の虎竹伐採、山の職人


しかし、土佐の歳末の風物詩で忘れてほしくないものが、やはり虎竹の伐採ぜよ。日本唯一の虎竹の伐採は年末年始にかけて忙しくなってきます、今年はいつもより少し気温も低く、寒さが厳しい日が続いており農作物には大変な事もあるようですが、虎竹の色づきにとっては比較的良い状態で今のところは順調な山出しが続いています。


日本唯一の虎竹伐採、RKC高知放送テレビ番組「こうち eye」


取材にお越しいただいたRKC高知放送さんのニュース番組「こうち eye」では、さっさく放映いただいて虎竹の里の今ならではの竹林の様子を伝えていただきました。全国的には、もう十分に寒いようにも思われているかと思いますが、山の職人の口から出た言葉は「寒さが欲しい」でした。


日本唯一の虎竹伐採、RKC高知放送テレビ番組「こうち eye」


土壌にいる特殊な細菌の作用と言われる虎竹の模様の秘密は今だ解明されていないものの、気温変化は大きな要因だと確信するようになりました。ちょうど紅葉が気温の加減で色付きに変化があるように、虎竹模様にも影響を与えているのです。


地球規模で起こっている大きな現象が、まさかこの小さな虎竹の里に何らかの関係があるとは思ってもいませんでした。しかし、ここ数年の虎竹伐採をずっと見ていますと危機感を覚えます。竹の神様の計らいのようにタイミングよくお招きいただいた世界竹会議への参加を早々に承諾させていただいたのも、100年間にわたり虎斑竹と共に生きてた竹虎だからお伝えできる大きな課題があると考えているからに他なりません。大きな意味をもつ2018年がやって来ます。


黄色ブドウ球菌、モラクセラ菌に竹酢液は効果があるのか!?

竹酢液抗菌実験


寒い日が続いていますので竹虎のお客様の中には、竹酢液のお風呂にゆったり温まる方も増えています。アトピーの方、肌の弱い方や乾燥肌の方に愛用者の多い竹酢液ですが湯冷めしにくくなる事も人気の秘密です。そんな竹酢液ですが確か夏前あたりでしたか、愛用する当社社員が、竹酢液の抗菌性を調べたいという事で簡単な実験を行いました。二つの培養液を用意して、ひとつには何もいれず、ひとつには約100倍希釈の竹酢液を入れています。


ゼラチンにダシの素を入れた自家製培養液に台所で採取したカビ菌を同じようにつけて1週間安置したそうですが、竹酢液なしの方にはカビ菌が増えているものの、竹酢液入り方には全くカビ菌が繁殖していなくて結果は一目瞭然、竹酢液の抗菌性が確認されたのでした。


黄色ブドウ球菌に対する竹酢液抗菌データ


「炭焼職人には水虫の人はいない」と言われて昔から竹酢液の高い抗菌性は経験的には知られていた事です。このように簡単な実験でも効果を確認することができていましたが今回、機会があって高知大学さんにお願いして黄色ブドウ球菌と、モラクセラ菌に対する正式な抗菌作用の実験をさせていただいたのです。


さすがにしっかりとした測定機器もあって滅菌水と竹酢液10倍希釈、竹酢液100倍希釈をそれぞれ用意して2種類の菌数がどのように変化していくかを時間の経過と共に測定する事ができたのでした。


モラクセラ菌に対する竹酢液抗菌データ


黄色ブドウ球菌は、食中毒などで名前を聞く事がありますが人や動物の皮膚、消化管の常在菌でアトピー性皮膚炎を引き起こす原因ともいわれる細菌です。また、モラクセラ菌は洗濯物を部屋干しの時などに臭くなる事がありますがこの原因となっている細菌です。


この菌も人の口や鼻の粘膜にいる常在菌と言いますので特別な細菌ではありません。臭いの原因になるのはモラクセラ菌が洗濯物の水分や皮脂などを栄養としてフンのようなものを出すそうで、これが臭いの原因だそうです。


今回の抗菌実験では黄色ブドウ球菌、モラクセラ菌のどちらにも竹酢液の高い効果が実証された形となりました。特に洗濯物のニオイについて、母などは昔から洗濯時に竹炭と同時に竹酢液も使っていましたので希釈の問題はありますものの、長年の経験からしていることには間違いがないと改めて感じています。


新春、虎竹葉の茶摘み

虎竹茶


竹虎の店舗にお越しの皆様には出来るだけ虎竹茶をお出しさせてもらい竹の香りを楽しんでいただきたいと思っています。多くの方が竹の葉のお茶など飲んだことがありませんので竹特有の甘さに驚かれますが、竹は糖分の多い植物なのです。油抜きの加工でバーナーの火が入ると中に含まれる水分と共に甘い香りが噴出してきます。


油抜き専門の職人は夏場に仕事を始めると必ずトンボが工場に入ってくると言ってました。トンボは前にしか進まないことから勝ち虫と呼ばれ、戦国時代武将の鎧やカブト、陣羽織などにも頻繁に登場しています。縁起が良いので自分が作務衣の上着にポケットに入れるハンカチも30年近くずっと同じトンボ柄です。


工場に入ってきていたトンボは、餌になる小さな虫たちを追いかけて来ていたものだろうと思いますが、その小さな虫たちが集まってくるほど竹の甘い香りが辺りに広がっていのです。


虎竹茶葉


そんな竹茶を現在では製茶会社さんにお願いして焙煎、パックまで一貫製造していただいております。お陰で遠く離れた皆様にもお茶を届けらるようになりましたが、どうやら年末、年始には全て無くなってしまいそうです。


竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)、山岸義浩、虎竹の里


虎竹茶の製造はすべて製茶会社様にお願いしていますが竹葉集めは皆で山に行き竹葉摘みをします。茶摘みではありません、竹の葉を摘むなど虎竹の里ならではでないかと思いますが、竹は旬があって新春1月末までが伐採の期限。つまり、竹葉摘みは竹が伐採される今の時期しかできない仕事であり、枝打ちされた竹葉がフレッシュな状態でないと美味しくできないので時間との勝負でもあります。新春は竹葉摘みで仕事始めも良いかも知れません。


竹虎四代目も歩けば人に当たる

竹虎四代目、小松嘉展さん


来年の干支は戌です。「犬も歩けば棒に当たる」という諺もありますが、竹虎四代目も歩けば人に当たります。たまたま京都に用があって出かけていましたら創業明治5年たけのこ料理の老舗「うお嘉」の小松嘉展さんにバッタリ出会いました。


不思議な事に自分の話を店員さんと話していたところだと言って案内された店舗のショーウィンドウには虎竹バックニューヨーカーの原型となった竹バックと同じ構造の製品が飾られています。


竹バックニューヨーカーの原型


竹材の特性からして国産のものではないようですが、このような竹製品が見直されファッションアイテムとしても取り入れられて来たことは嬉しいことです。


かって自分がニューヨークから里帰りした竹バックのデザインの素晴らしさに心を奪われたと同じように感じてくれた方が他にも多くいるはずです。60年も前に創作された小菅小竹堂さんも喜んでくれているのではないかと思うのです。


竹虎四代目、田中陽子さん


さて、店を出た後に何気なく目に飛び込んで来た文字に足が止まりました。


「ゆずりは」


もしや?と思ってガラス戸を開けて奥を覗いたら、そこにおられたのは田中陽子さんです。青森の十和田湖のほとりの店舗があり東北の工芸を紹介され続けている方ですが全国のギャラリーなどを周って展示会を開催されています。確か4年ほど前の高知展示会でお会いさせてもらって以来でした。


十和田湖


十和田湖のお店にはお伺いした事がありませんが、ほんの少し前に北海道出張した際、機内でふと目を覚ますと眼下に湖が見えました。特徴ある形ですのですぐに十和田湖と分かりましたが、その湖畔に店舗のある、暮らしのクラフトゆずりはさんの事を思い出しながらシャッターを切ったのでした。まさか、それからすぐに京都でお会いできるとは思いもしていませんでしたが不思議なご縁を感じます。


実は、この日と翌日には更に奇遇な再会が何度かありました。人にはご縁の波があって、こうして続く時には次々と嬉しい出会いがあると聞いたことがあります。来年もこの波が高止まりしてくれて、どんどん「人」に当たる一年になれば良いと思っています。


黒竹箸箱が弁当箱・携帯用限定で帰ってきましたぞね。

黒竹箸箱


黒竹箸箱が弁当箱・携帯用限定で帰ってきましたぞね。竹集成材で製作した箸箱本体こスライドさせる黒竹蓋部分は太めの黒竹を厳選して使用していますが、良質の黒竹材が少なくなってきたこと、そして自然素材そのままに活かした製品だけに加工が難しく、ずっと前に製造されなくなっていた商品なのです。


黒竹箸箱、虎竹ランチボックス


今回は持ち運びしやすい全長21センチのサイズの箸箱という事で、男性の方でも短めながら十分ご使用いただける19.5センチサイズの竹箸もお付けてしての販売です。竹虎にあります弁当箱にあわせるとしたら虎竹ランチボックス(長角)と同じ長さですのでペアでご愛用頂きますと雰囲気もピッタリなのは、画像でご覧いただいております通りです。


黒竹箸箱と竹箸


製作が大変なだけに通常の箸箱と比べても自然の黒竹の風合いそのままに活かした箸箱は格別です。長さを揃える事によって持ち運びの利便性もよくなりました。


竹には大きな特徴として竹節があります。竹製品を作る場合には出来るだけ節のデザインを活かしていくのですが黒竹蓋にも竹節が取り入れられ見た目にも感じが良いし、スライドさせる時にも使いやすくなって一石二鳥の作りなのです。


大火災から30数年、まだまだ燃えている。

 
竹虎四代目家族


物心ついた時から日本唯一の美しい竹林に囲まれ、多くの職人に囲まれ、山のような竹材と数万点の竹製品に囲まれて育ってきた。自宅も、遊び場も竹だらけ、朝から晩まで竹の中、そういう意味では、竹の英才教育を受けて来たのだと思う。


日本唯一の虎竹林、Tiger Bamboo


自分にとっての幸運は、小さい頃からの環境と大学四回生夏休みの大火災。その火災も何かの声に引き寄せられて第一発見者になるという不思議な体験もした。誰に言われたわけでもないが、当時60名ほどいた全社員を集めて挨拶をさせてもらったのもあの夜が初めてだった。


竹虎大火災


工場も店舗も全焼して全てを失くし焼け野原のようになった竹虎の敷地の広さに、そして後片付けに参加いただく地元の皆様、県外から駆けつけていただく皆様に、改めて地域の中での竹虎、そして日本唯一の特産虎竹の役割と責任の大きさを教えられた気がした。


竹虎大火災


そんな中、まだ煙がたちのぼりそうな状態で祖父は商品を満載した10tトラックを引き連れて売り出しに行った。工場や店舗にはお金で買えないほどの貴重な竹があり、戦後本社をこの地に移してからの財産が灰になったショックで寝込んでいてもおかしくないと言われていた。しかし、「虎竹の里はワシが守る」という、あの気迫。二代目は何も言わなかったが、あの後ろ姿を見せられて当時はまだ学生だった自分にも火がついた。


竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)、山岸義浩


竹は油分が多くて一度火がついたら消すことは困難だ、当日も「まるで化学工場の火事だ」と消防の人が話していた。翌日、雨もあがり大火災は昼頃には鎮火したが、自分に引火した火はあれから30数年、まだまだ燃えている。


NHKスペシャル「世界里山紀行 中国・雲南 竹とともに生きる」登場の竹の虫

虎竹の里、竹虎四代目(山岸義浩)


NHKスペシャルでは、いつも素晴らしい番組を放映されていますが先日は中国雲南省の竹と共に暮らす人々の様子が放映されていました。数年前に放映されたテレビ番組の再放送だったのですが、古き良き時代の日本の里山を見るようで懐かしい気持ちにさせてくれます。


日本の竹細工も大陸からの技術が元になっていますので、やはり中国の竹文化というのは奥が深いです。竜竹という名前の大きな竹があり、竜が地上に降り立った時の化身とされていて毎年竜の誕生日に竹を植えるといいます。成長の早い竹を植えるとは日本では考えられませんが、それだけ竹の活用が盛んだという事なのです。


なるほど番組を見ていると川にかける大きな橋を村人が共同で作っていました、材料は何から何まで全てが竹です!手際よく役割分担してあれよあれよと言う間に進んでいく作業の工程を見ると本当に竹が人々の生活に根差し、常に関わりながら生きている事が伝わってきます。


竹の虫の害


一つ気になるシーンがありました、ユーグワンと言うゾウ虫の仲間が登場します。いかにも熱帯に住んでいそうな強烈な赤い色をしていました、この虫は筍の先端に卵を一つづつ生んでは、次の筍、また次の筍と回っていくといいます。


大自然の営みなので竹を食す虫も当然いるのですが、竹材や竹製品を扱う自分達にとっては害虫として非常に困った存在です。例えば先日も黒竹箒の柄部分をタケトラカミキリの幼虫に食べられましたが、このような細い竹だと簡単にポキリと折れてしまうほど食害にあってしまうのです。


ブラジル・サンパウロの竹林


先のユーグワンという虫の幼虫も竹を食しますが、他にもタケノメイガという虫の幼虫を竹の節の中から採取するシーンなどもありました。一節の中に何匹ものイモムシのような幼虫がいましたので食害に合うとするなら、かなりの痛手です。


しかし、現地ではこの幼虫を大きな深鍋にいっぱい炒めて食べています、つまりここでも竹が人の役に立っていました。自然と上手に共存している姿に感じ入りつつも日本では知られていない虫の登場に、今年6月に訪問させてもらったサンパウロでの竹林を思いだします。


ブラジル、サンパウロの竹の虫による食害g


竹の稈の所々に黒く穴の開いている部分がありますが、これが竹の害虫によるものなのです。移民された日本人が持ちこんで広げたという淡竹(はちく)の竹林はここが遠く離れたブラジルだということを忘れさせてくれるほど見事なものだっただけに初めて見る虫の食害には驚きました。


虎竹にしても出来るだけ虫の被害にあわないように旬の良い時期に伐採し、管理していますが自然のものなので旬の良し悪しに関係無く食害にあうこともあります。今でさえ虫対策には苦労していますので気候変動により、このような害虫が入ってこないことを祈るしかありません。


冬の室内消臭に竹炭を使う

竹炭(バラ)


今年の冬は高知県でも寒くて本当に大変です。温暖化が言われるようになってから暖冬が続いていたせいか更に冷え込みが身体に堪える気がするのです。実は日本唯一の虎竹の色づきには気温の低さが影響していると言われていますのでここ数年は寒さを待ち続けていました。


霜が降りると虎竹の色が付くと古老の言い伝えもありますので少しくらいの寒さは我慢、我慢なのです!しかし、実際に本格的な冬将軍がやってくると(高知ですから将軍というほど大袈裟なものではありませんが)南国育ちの自分などはやはり動きが鈍くなります。


室内の窓も締め切ったままですので部屋のニオイもこもりがち、そこで活躍するのが竹炭の消臭パワーなのです。先日もお客様から嬉しいお声をいただいていますので少しご紹介したいと思います。


「商品を購入して消臭効果に驚いております!猫を室内で5匹飼っておりますがトイレのニオイ問題で長年試行錯誤をして色々な商品を購入してきましたが今までで一番効果があります!!期待以上の効果で本当に買って良かったです。煮沸・乾燥して繰り返し使用出来るのでエコだし、お得に感じます。」


土窯づくり竹炭(バラ)消臭用


竹炭と一言にいいましても燃焼温度帯によって性質が違うということは、たまにお話しさせていただきます。お声をいただきましたお客様のように猫ちゃんのトレイ臭には400度程度で焼いた低温の竹炭がアンモニアの吸着などに優れていてオススメなのです。なのでペットのいないご家庭でもトレイや室内の生活臭のために置くには竹炭(バラ)が最適なのです。


シックハウス対策最高級竹炭


新築のマンションなどでは敏感な自分などはすぐに体調が悪くなることがありますが、そのような新建材やシックハウスの原因となるホルムアルデヒドなど対策には1000度の高温で焼き上げた最高級竹炭をご使用いただきます。


シックハウス対策最高級竹炭、癒しの竹炭かご


竹集成材で専用ボックスを製作している飾り竹炭は割竹を1000度の高温で焼き上げた最高級竹炭、銀色に輝き、電気伝導率も高いのが特徴です。それぞれ長い竹炭は40センチ、短いタイプは25センチでカットしていますが、竹炭が部屋にあるだけで気持ちが良いという方も多いのでシックハウス対策などの機能面だけでなく、見た目でも楽しめるようにできるだけ美しい竹炭を選別しているのです。


続々・北の大地と根曲竹

北の街角


北海道の初めて名前を聞く小さな町にやってきました。どんよりと曇った空に、キンと冷えた空気、南国土佐からは随分と遠く離れた場所だと改めて思わされるのは日暮れの早さです。まだ早い時間なのに辺りは薄暗くなりつつありました。


根曲竹の戸


かって、そのお店では根曲がり竹を使った竹籠の製造もされていたと聞きました。勝手口の扉には北の山深い竹林から伐採されたであろう根曲竹が独特のカーブを活かしてはめ込まれていて、この家の主がどんなに、この竹を愛し素晴らしい籠を編まれていたのかが偲ばれます。


根曲竹祝儀籠


今ではその職人であったご主人さんもいなくなり、ひっそりとした店頭をのぞかせていただくと先々代が編んだのではないかという古い持ち手付の籠がありました。なんという飴色の渋い風合い、根曲竹細工でこのような美しい経年変化をした籠は今まで見た事もありません。


100年もの間、大事に保管されていたのだと思い惚れ惚れとしていましたが、きっとこれは祝儀籠として使われていたのではないでしょうか。高知にも、ちょうど同じような籠があり目出度い席に鯛を入れて挨拶に行くための籠にそっくりでした。


根曲竹スツール


小物入れを兼ねたスツールにも根曲竹を使われています。耐久性の高い竹なので、このような使い方も出来るのだと職人さんが自分用に製作されたものかも知れません。


根曲竹手付き籠


不思議な話をさせていただかねばなりません。店頭には什器として根曲竹の竹籠がいつくか使われていましたが、その中のひとつにどうも気になるものがあります。実は一歩足を踏み入れた時から最初に目につき、ずっと気を引かれていた籠でした。


どうしたのか尋ねてみたら、ご主人さんが懇意にされていた友人の方に赤ちゃんが生まれた時にベビーベットとして使ってもらいたいと特別に心をこめて編まれた竹籠だったのです。同じものを2個製作され、一つはご友人に、そしてもう一つが遺されているとの事でした。


根曲竹手付き籠


ゆったりとした形、大きさ、持ち手、根曲竹の力強さを繊細に優しく編み上げている竹籠にどうしても魅かれてしまい、拝見させて頂く事にしたのです。他の竹細工とは少し違うオーラを感じていました。


根曲竹手付き籠


屋外の光で見たくて外に出ていましたが、眺めているうちに随分と冷えてきたので室内に戻ろうとして手に取ってふと裏面を見た時に稲妻が落ちたような衝撃を受けたけのです。


根曲竹手付き籠、竹虎四代目(山岸義浩)


「何だ、お前かよ!」


さっきまでシンシンと冷えてきた辺りの空気が一気に温まった気がして思わず笑みがこぼれます。底の両サイドの一番傷みやすい部分に補強のために使われている力竹は、何を隠そう日本唯一の虎竹でした。


北海道の名も知らぬ町、会ったことのない竹職人さん。しかし、この方が大事なご友人の赤ちゃんのためにと編んだ竹籠の支えの部分に使ってくれたのが自分達の竹。根曲竹に虎竹を合わせている籠など初めて見ました、恐らく他にはありません。余程、この竹籠への思い入れがあったのだとモノ言わぬ籠から伝わってきます。


虎竹の里の山々を眺めれば、いつもと変わらず風にそよぐ虎竹。しかし、この竹の凄さを心底感じるのは、まさにこの様な時なのです。


続・北の大地と根曲竹

根曲竹イクラ籠


北海道の根曲竹細工で感心するのは機能的であり美しい形をしたイクラ籠でした。鮭の卵を取り出した時に水切りに使われてきた竹籠との事ですが根曲竹の表皮部分を内側に編んでイクラをキズつけることなく作業できるように工夫されています。


根曲竹


雪で鍛えられた無骨な感じの根曲竹も表皮を磨けば綺麗な竹肌になります。そう言えば篠竹でも内側に竹表皮を向けて編み込んだ魚籠を持っています、笹類特有の表皮部分の滑らかさを活かした特徴ある作りです。


根曲竹箕


北海道といえばジャガイモなどの栽培も盛んですがそんなイモ類を入れるイモ籠でも根曲竹が活躍していると聞きました。今回は拝見する事ができませんでしたが、このような箕もありますので、自分たちの周りで真竹や淡竹などを使った農家用の籠と全く同じように根曲竹の籠が使われてきた歴史を垣間見る思いです。


根曲竹文庫、衣装籠


更に珍しい根曲竹に出会いました。なんと文庫と衣装籠です、屋外や仕事場で活躍する籠の多い根曲竹でこのような家庭用の繊細な編み込み、しかも作りの難しい角籠まで作られていたとは驚きでした。よほどの名人の作のようで角の折り目が丁寧で、このような歴史のある籠を触らせていただける事に幸せを感じます。


北海道の笹類


北海道の山道を少し走ればこのような沢があり、笹が繁ってずっと向こうまで続いています。


根曲竹ムロ


太くて長い根曲竹を求めて山深い土地に入り竹を伐り出してくるのですが竹の保管方法にも虎竹などとは違って独特の方法があります。乾燥すると折れて使えなくなるので、ある時には雪の中に埋もれたまま保管したりこのようにムロ作って適度の湿気を保てるようにされているのです。竹材は秋に伐り出した分しかないので、編まれる竹製品が限られるのは虎竹と同じなのです。


北の大地と根曲竹

根曲竹茶碗籠


連日寒い日が続いていますが、寒いついでにもっと寒い地域の竹についてお話ししてみたいと思っています。根曲竹は大人の小指から親指くらいの太さしかない細身の竹なのです。竹という名前で呼ばれていますがチシマザサと言って笹の仲間であり寒い地方や高い山に成育する非常に粘りがあり堅牢な竹なのです。


スズ竹や篠竹などと同じような性質を持つ竹です。先日、ブログでお話ししました根曲竹製の椅子は優美な姿をしていましたが、一般的にはこの根曲竹茶碗籠を見ても分かるように編み上がる竹細工はより素朴な風合いでありその強さから農業用、漁業用として古くから広く使われ続けてきた竹なのです。


根曲竹(チシマザサ)


孟宗竹の北限は函館など南北海道だと言われていますが、竹林が広がり一般的な食文化としても根付いているのは山形県までではないかと思っています。それでも竹は元々南方系の植物なので、四国や九州など西日本の竹に比べると随分と細い印象を受けます。


なので根曲竹も寒い地方と言っても、せいぜい東北までのように思われがちなのですが実は北海道でも大量に生産され竹細工への利用もかっては盛んだったのです。


根曲竹魚籠


いつの時代のものか誰にも分からなくなっていますが少なくとも戦前に編まれて使われていたような風格を感じさせる北海道の根曲竹製魚籠があります。この籠ひとつとっても、手のこなれた職人とその背景にある竹のある暮らしが目に浮かぶようです。


竹虎四代目、スノトレ


この時期はすでに北海道は連日の雪ですので根曲竹の伐採は10月中頃までには終わっています。自分もいつもの龍馬ブーツでは滑って危ないので、数年前に帯広に行った時に量販店で購入させてもらったスノトレと言う雪用の靴を履いてきました。(ちなみに高知では暑くて一度も履いた事はありません)


根曲竹


しかし、こうして見ると北海道の山々には笹類が非常に多く繁っています。落葉して寒々とした銀世界に青々とした葉の色合いは一際目立ち、竹の生命力の強さを改めて感じます。


北海道の笹


雪に埋もれて重みに耐えて春を待つのですが、根曲竹もこうした積雪により根が曲がる事から名前がついたといいます。こうして雪に鍛えられて強靭な竹の性質が生まれるのです。


根曲がり竹


笹といえども根曲竹の背丈は2メートルゆっくり越えて3メートル近くの大きさに成長します。特に竹細工に使える太い素材は山奥にまで入って伐採せねばならないそうですが、深い竹林に迷い込むと周りの景色が見えないため方向感覚を見失い帰れなくなる事もあるそうです。


虎竹の里


まさに雄大な北海道ならではのお話しです。いくら神秘の竹林と言っても虎竹の里の山奥でも、さすがに方向を見失うまではいきません。道に迷うと、つい山を下りたくなるように思うのですが現地の方に言われました、


「道に迷ったら登る事だ、頂上はひとつだけだから迷わない。」


南国育ちの自分です、雪の中そんな山奥にまで行くことはありませんでしたが何やら人生の教訓のようにも聞こえました。


虎竹の里、動画撮影

虎竹の里、竹虎社員


動画撮影をしようと思いついたのは夏前のことで、撮影開始予定は9月上旬予定でした。ところが今年の高知の天候は非常に不順で雨が続いており実際に撮影できるようになったのは10月に入ってからでした。雨や曇りの日の竹林も実はそれはそれで美しいものなのですが、やはり竹の葉ごしに差し込む日差しや明るさは太陽が出ていればこそです。


虎竹の里、竹虎社員動画撮影


気持ちの良い秋晴れの下、始まった今回の撮影は来年に向けてもっと沢山の方に虎竹を知っていただきたいという思いからスタートしています。


虎竹の里、竹林、竹虎社員動画撮影


ドローンでの空撮などした事もなかったのですが、虎竹の色づきに潮風が重要な要素として考えられる事や、狭い谷間にしか成育しない事をお伝えするのには虎竹の里を上空から眺めてもらうのが一番分かりやすいかも知れません。そこで初めて外部スタッフにお願いして撮影いただく事になりました。


虎竹の里、竹虎社員動画撮影、幡多正樹さん


撮影いただくのは株式会社花咲の幡多正樹さん、ユーチューバーとしても有名な方ですが、機材の扱いやドローンの操縦は素晴らしいものがあります。撮影が始まると心から楽しんでいる姿に出来あがる動画の完成度の高さを確信していました。


虎竹の里、竹虎社員動画撮影、幡多正樹さん


とは言え、やはりいくら撮影機器の性能がよくて撮影される方が上手であっても、自分達がしっかりしていないと面白いものにはなりません。どのように動画を撮るのか?どうしてこの動画が必要なのか?誰にご覧いただきたいのか?自分の中では当たり前の事ですが社員にひとつひとつ話していきます。


虎竹の里、竹虎社員動画撮影


虎竹の里を発信する自分達が一番楽しくないとご覧になられる方々も楽しくないと思います。しかし心配ご無用ぜよ!この青い空、青い海、濃い緑の山々とサンサンとふりそそぐ陽の光には誰でも笑顔がこぼれます。


竹虎、動画撮影


山に登ったり、海外まで歩いたりしての慣れない撮影は思いがけず長時間になりました。社員もグッタリの様子ですが、もう一頑張り。虎竹の里は日本唯一の虎竹林があり、青い土佐湾がありこんなに美しく暮らしやすい場所なのですが、このような機会を作ると毎日通う社員でも改めてその自然の豊かさに気づくことがあるようです。


虎竹の里、竹虎動画撮影


さて、撮影再開。「手はこうやって広げるがぜよ!」と言いながら撮った画像がこれです。


虎竹の里、竹虎動画撮影


本当に小さな事ですが、これも毎日の積み重ねです。自分たちのしている仕事に誇りや喜びを感じていないと出来ません。日本でここにしかない竹、江戸時代から続く竹文化、これを守るのを助けてくれないか?自分がいつも話している事がこんな時に表れるのではないかと思っています。


昼寝には合格、虎竹やたら編みソファベンチ

虎竹やたら編みソファベンチ


やたら編みソファベンチで昼寝したいと思って簡単な絵を元にして鉄製フレームの製作をしてもらったその後。こればかりに取り掛かる事もできないので少しづつ進めてきましたが、ようやく形が見えてきましたぜよ。


電気自動車竹トラッカー製作の時に車内シートをヤタラ編みした事がありました。三角形の柔らかいシート素材を竹で包みこむのは結構大変な作業ではあったのですが、少し厚めにした竹ヒゴと下地のソフトな素材感とが絶妙でした。


竹トラッカーやたら編みシート


座った感じそのものも良いのですが、竹とシートの隙間に適度の通気があり熱がこもらず蒸れないのです。昨年の「チャレンジラン横浜」で高知から横浜まで1000キロの道のりを走行したのは猛暑の8月でした。11日間連続で朝4時から夜10時まで座らねばなりませんでしたが全く違和感なく、快適に走り抜けたのは、このシート×虎竹のお陰だったのです。


虎竹やたら編みソファベンチ


ところが今回の鉄フレームへの編み込みは少し勝手が違ってきます。不特定多数の方にお使いいただくために安全性、耐久性を一番に考えた製作にしていますが、竹編みのやさしさも同時に実現したいと考えているのです。


鉄フレーム部分はあくまで文字通り縁の下の力持ちでいてもらって、しっかり土台を固めてもらい、竹編みのしなやかさが表舞台に出られるような工夫がいります。自分の昼寝用としては合格ですが、また一からやり直していきます。


黒竹の伐採

黒竹伐採


虎竹の里のすぐ隣町である中土佐町には黒竹の竹林が広がっています。虎竹と同じように江戸時代から有名な産地であり「笹場に黒竹なる名品あり笛に適す」と藩政時代に記された文書にも残されているほどなのです。


黒竹玄関すのこ


現在では伐採する山の職人が少なくなったことや、海外からの安価な竹の出現で生産量は昔ほどではありません。しかし、竹虎には黒竹玄関すのこなど特産の黒竹ならではの製品も多数あって少しでも地元の竹の伐採量を増やして、せっかくの地域資源を活用しようとしています。


黒竹林


黒竹の生産量の変化のひとつには開花があったことも見逃せません。昭和60年(1985年)頃に開花が始まり、当時3万束の出荷があった黒竹が平成元年(1989年)には8000束にまで減少しました。竹は開花すると一斉に枯れてしまい、同じような竹林の復活には10年単位の長い時間が必要です。


伐採できる竹林がなくなり、空白の時間が続くと技の伝承はじめ全てが止まってしまいます。こうして、かっては大型トラックまで動員して集荷せねばならないほど生産されてした黒竹は減少の一途をたどってきたのです。


黒竹伐採


黒竹は海の近くの高知でも温暖な地に多く、品質も良いのですがこれには虎竹と同じように潮風の影響もあるのではないかと自分は考えています。


黒竹伐採


伐採は来年1月末まで行われます。集荷して油抜き、矯め加工などしてからそれぞれの製品に製造していくのですが思えば山の竹林から最終のエンドユーザーまでの長い道のりのスタートラインです。


鼓を習っているのではない

 
竹虎四代目、鼓椅子


年齢を重ねると歌舞伎や能、狂言など古くからある日本伝統の舞台にも不思議と関心が沸いてきます。だからと言って、鼓を急に習いたいと思っているワケではありません。そう、鼓の形をした竹スツールなのです。


虎竹網代鼓椅子


本体部分を支えるのは、幅の広いしっかりとした白竹ですが、中央部分に絞りを入れて弾力のある竹の特性を活かした作りとなっているのです。そして、その形は本当に鼓そっくりぜよ!


虎竹網代鼓椅子座面


座面は、日本唯一の虎竹を細かく網代編みして貼り付けています。白竹×白竹も格好が良いかと思いますが、白竹×虎竹だと色合いにアクセントが効いて更に格好良いのです。


虎竹網代鼓椅子、竹虎四代目(山岸義浩)


「おまん、ちっくといざらんかえ(君、少し座っていきませんか)」。庭先にでも、どこか屋外にでも置かれていたら思わず誘いたくなる座り心地です。




玄照堂藍染め作務衣

玄照堂作務衣、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


玄照堂さんの作務衣と出会ってから、かれこれ30年近くなると思います。仕事でどうしても着用せねばならず年寄りくさく見られそうなのが嫌だったのですが仕方なく着たのが始まりでした。ところが、いざ着用してみると身体にしっくりくるし動きやすい。


すっかり好きになって頻繁に着るようになると地元の土佐つむぎの作務衣だけでなく他の生地やメーカーさんの物も着て試したくなり色々と購入してみたのですが結局、本物の藍染を探求しながらシンプルであり、裏地の当て布等見えないところにこだわりのある玄照堂さんに辿りつきました。


作務衣、竹虎四代目(山岸義浩)


中学高校と全寮制でスポーツの盛んな明徳でしたので身近に空手部や剣道部の胴着を見ていましたし、当時は毎日のように法被を着る機会も多かったです。また、高校で弓道を習っていた事も和装の衣服にもあまり違和感がなかった理由かも知れません。とにかく楽ですし毎日着るようになり今では出張はもちろん、いつでも、どこでも作務衣です。


玄照堂作務衣


20数着持っている中で良く着るのは15着あり、一応オールシーズン着られるものが中心ですが夏用、冬用もあるので気に入っている作務衣は結構着用頻度が高いのです。着れば着るだけ馴染んできて着心地も良くなってきますが、唯一襟首部分が擦れて糸がほつれてくる事が気になります。


そこで玄照堂さんに無理を言って、ほつれる度に襟首部分に当て布をしていただき補強をしてもらうのです。今回も3着の上着が手直しされて帰ってきました。着古して色落ちした作務衣に襟首部分だけ真新しい濃い生地の色合いは少し目立ちますがこれは、これでアクセントになっていて格好が良いですし、洗濯を繰り返すうちに落ち着いてくるのです。


玄照堂作務衣、竹虎ロゴマーク


作務衣ばかり着ているので実はお客様から自分の着ている作務衣はどこのメーカーですか?とか同じものが欲しいとのリクエストをいただく事がありました。もう何年も前の事ですが、たて続けにお問合せいただくので当社オリジナル作務衣を用意させてもらっています。


玄照堂作務衣、竹虎四代目、後ろポケット


オリジナルと言いましても襟の下部分の背紋のところに竹虎ロゴマークを入れさせてもらっているだけですが、自分が個人用として購入する時にも必ず別注させてもらう後ろ右側のラフップ付ポケットも取り付けています。


作務衣、竹虎四代目(山岸義浩)


実際に作務衣を着て動く場合にはポケットがいくつかあった方が便利です。特に20年以上前の玄照堂さんの作務衣には上着にひとつ、ズボンの右側サイドにひとつしかポケットがなくてそこだけは不便を感じていましたので最初の作務衣からお尻部分にはポケットを取り付けてもらっているのです。


玄照堂作務衣、竹虎四代目


しかし、ポケットの数は少なかった初期の玄照堂さん作務衣ですが、その生地は素晴らしいものがありました。江戸時代の藍染を再現したと言われている独特の深みのある藍色で長く愛用するとジーンズのようにタテ方向に色落ちがしてくるのです。


若い頃、ジーンズは自分なりの色落ちを楽しむためにデッドストックのものを数年間洗濯せずに履き込んだりしていました。さすがに作務衣はそういう訳にはいきませんが、藍染のものは出来れば水洗い、最低でも漂白剤の入った洗剤を使うのは避けたほうが良いです。


玄照堂作務衣、竹虎四代目(山岸義浩)


繊維業界も竹と同じように工場も職人も減ってしまい昔のような手のかかる生地を織ってくれる所がなくて困っていると社長さんは話されています。現在販売されている定番の藍染は明治以降の製法のものらしくて、それでも製造には苦労をされているようです。しかし数十年来のファンである自分などは、いつか以前のような昔の藍染生地の作務衣が復刻されることをずっと心待にし続けているのです。


竹虎四代目の30周年記念!年賀状とは?

竹虎四代目(山岸義浩)


それにしても長く続いたものです。大学4回生の時にその一年を一枚の写真に込めて全国の友人に送ろうと思ってはじめたポストカードの年賀状。そもそも明徳中学、高校が全寮制で全国から生徒が集まっていましたし、進学した大阪の大学にも各地から学生が来ていましたので、田舎に帰ったら会う機会は随分と少なくなるからとスタートしました。


ところが毎年続けていきますと、友人本人だけでなくご家族にも楽しみにされている方がおられると言う話を聞いて、本当なら10年前にやめる予定でしたが結局やめずに、まだまだ続きそうな勢いで遂に30回目となりました!今回も新年には4000名近い皆様に年始の挨拶をお送りできる事を本当に幸せに思うちょります。


写真家ミナモトタダユキさん


この年賀状は企画から撮影、製作までずっと自分達でやってきましたが一昨年より撮影を数々の映画ポスター、テレビ、有名雑誌、海外で活躍されるアーティスト展覧会図録など世界を駆けて活躍されている写真家のミナモトタダユキさんが担当してくれています。


四代目田辺竹雲斎さん、ミナモトタダユキさん、竹虎四代目


また、今回は特別にミナモトさんとのご縁を繋いでくれた日本を代表する竹芸家、四代田辺竹雲斎さんが撮影に使用した虎竹細工の小道具制作を担当いただくという何とも豪華な年賀状となっています。偶然ではありますが30周年記念にふさわしい年賀状、一体どんなものなのか?それは元旦のお楽しみぜよ。


奇跡、三入り子の衣装籠

磨き竹衣装籠


ずっとこんな角籠が欲しいと思っていましたが、職人さんも高齢化していて、なかなか新しい竹細工が出来ることは少なくなっています。そんな中、ラインナップに加わることになった磨き竹衣装籠は、なんと三入り子になっています。もちろん、大中小とサイズが分かれ、それぞれお客様のお好みの大きさをご購入いただけるのですがこれが、輸入品ではありせん。なんと国産の竹籠ですので、まっこと(本当に)奇跡的と言うしかないのです。


竹笊三入り子


昔ならサイズ違いの丸笊はじめ、角籠などでも何種類かの大きさがあり、入り子になっていて思い思いのサイズをお求めされるのが常の時代もありました。ところが、近年ではこのようなサイズ違いの角籠など本当に見ることはありません。


磨き竹衣装籠


今回はまるで一昔前を彷彿させるような三入り子の衣装籠。しかも、角籠というのが素晴らしい!やはり物入れに使う籠は角型の方が使い勝手がよいのです。竹ヒゴの表皮を丁寧に薄く磨いて編み込まれていますので手触りも優しく用途は色々と広がります。


このようなシンプルな形でもっと色々なサイズをご用意させてもらえたら様々な生活シーンにご愛用いただけて多くの方に喜ばれるのではないかと思いますが今のところこの三入り子のサイズ展開です。とにかく奇跡が起こったような気持ちで改めて手にもって見直してみるのです。


3年に一度、世界各国で開催される竹の祭典。竹のオリンピックと呼びたい第11回世界竹会議(WORLD BAMBOO CONGRESS)メキシコ大会

世界竹会議(WBC...WORLD BAMBOO CONGRESS)2018年


世界竹会議(WBC...WORLD BAMBOO CONGRESS)という世界中の竹研究者、竹業界、竹関連に従事される竹に関心を持つ方々が集まり様々な議題を検討する場があります。3年に一度世界各国様々な国や地域で開催されている、まさに竹のオリンピックのような大イベントです。次回で第11回目となる会議は、来年2018年の8月14日(火)から18日(土)まで5日間の日程でメキシコはXalapa(ハラパ)という町で行われます。


このメキシコ大会には幸運なことに日本人としてただ一人自分がKeynote Speakers(基調講演)としてお招きいただいていますので来年の大会は竹虎なりの竹への向き会い方を報告させてもらうつもりです。WBCのサイトにはプログラムとして一番最初に掲載頂いてますがスケジュールを確認すると講演は最終日の最後に予定されているようです。


世界竹会議(WBC...WORLD BAMBOO CONGRESS)


竹は継続利用可能な唯一の天然資源と言われていて、自分達も1985年から21世紀は竹の時代と言ってきましたがそれが日本をはじめ竹資源を豊富に持つ人々の理解されているかと言うとそうではありません。地球規模の大きな問題や課題に対して自分個人や竹虎のような小さな会社ができる事はあまりにも微力であり、無駄に見えてしまいますが本当にそうでしょうか?


世界竹会議(WBC...WORLD BAMBOO CONGRESS)


テーマは昔から変わりません「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」という演目でお分かりのように自分達が竹屋としてやってきた事、これからやっていく事だけです。


虎竹は、わずか1.5キロの間口の谷間でしか生育しない不思議な竹ですが、その特徴である表皮の虎模様は温暖な虎竹の里にあって、霜か降りるくらいの気温の低下でもたらされるとの説があります。この説がクローズアップされているのは近年の地球温暖化が日本唯一の虎竹の色づきにも影響を与えているからなのです。


竹を生業として生きてきた地域であり、会社であれば虎竹の色づきは、まさに死活問題であり、竹虎初代宇三郎が命がけで惚れ込んだ自分たちの100年来の誇りでもあります。


日本唯一虎竹電気自動車竹トラッカー


虎竹は江戸時代には土佐藩山内家への献上品として記録が残ります。ごく狭い地域の特産でありながらイギリスbbc放送はじめ海外メディアが取材にお越しただく事もありますが、この世界でも類まれな竹の事を世界にご覧いただくのは自分の思いは当然なのですが時代の宿命だと考えています。


そこで、はるか遠いメキシコではありますが虎竹電気自動車「竹トラッカー」をご覧いただく事も、皆様の前で走行することも絶対に必要な事だと思っています。すでにこの夏から関係機関と、その準備を進めていて調整を続けています。様々な問題や課題があり、費用的な事も含めて先が見えていません。最初は無理だと言われていました、しかし、不可能な事などありません。不可能だとすれば、それは通過点であり不可能は可能性です。きっと道は開けると確信しているのです。

虎竹の里 竹炭石鹸の美肌

竹炭石鹸、竹虎四代目


竹は衣食住すべてに関わり人に役に立ってきた稀有な植物です。人に寄り添う縁起のよい植物であり、神事などにも多用されてきています。自分達はこの竹の中でも日本にここにしか成育しない虎竹を百年を越えて生産し続けれている幸せをもっと感じていますが、竹製品を製造する中で他の真竹や孟宗竹、淡竹など三大有用竹と言われる竹にもそれぞれの魅力があり使っています。


竹炭もそんなひとつであり、昔から「炭焼き職人には水虫の人と胃腸の悪い人はいない」と、ずっと伝え聞いて来た事から様々な製品化にも取り組んできたのです。自分は小さい頃から皮膚科の薬が手放せないアトピー体質でした。一年中掻き傷があったので、誰の身体にもこの程度は掻きキズがあるものだろうと何となく思っていて、中学から全寮制の学校に入った時に大浴場で友人達の肌にキズがないので少し驚いた事があるのです。


竹炭せっけん


年齢を重ねた今では随分と落ち着いて来たものの、やはり季節や体調、食事によりアトピーが酷くなることがあります。竹に愛着があるので竹炭の吸着力やミネラル成分を活用したいとずっと思っていて自分と家族用にと炭石鹸を作ったのが15年前のこと。無添加にこだわり数あるメーカーの中から時間をかけて自分が一番良いものを選んだので使い心地には大満足できるものができたのです。


ホテルに備え付けられているボディソープは、どうも肌に合わないものが多く使えないので特に連泊せねばならない出張には今でも必ず竹炭石鹸をひとつ持参します。頭の先からつま先まで、これひとつ、オールインワン?と言うのかどうなのか分かりませんがとにかく面倒なしで気持ち良く使えるので助かります。


竹虎四代目(山岸義浩)、虎竹の里


さて、そうこうして使い続けていると最近、顔の肌が綺麗とか色つやが良いとよく言われます。もちろんお世辞かも知れませんが、男性からも、女性からも、あるいは年齢もお年寄りから自分より二回りは若いような方からも言うていただき、あまり何度も続くので少し気になるほどです。


最近は男性でも顔にパックをする時代だそうですが、まさか自分はそんなお手入れらしい事は全くしていません。とにかく化粧品のようなものは肌に刺激がありそうですし、面倒です。全国各地で言っていただくたびに心当たりがあるとすれば、この虎竹の里竹炭石鹸だといつも心でつぶやいています。


昼寝できるような、虎竹やたら編みソファベンチを創りたい

 
虎竹ヤチャラ椅子"


羽田空港の出発ロビーに革張りの四角いソファがあるのをご存じでしょうか?それがただのフラットな正方形ではなく中央部分に段差のあるような不思議な形をしています。社名はよく耳にする有名なカッシーナ・イクスシーが製作したとの事で荷物の多い旅行客ばかりの空港で使われるソファなのでちょっとした小さな荷物置きなどの機能性を考えたものかも知れませんが非常に印象的です。


虎竹ヤチャラ椅子、竹虎四代目


実は前々からあのようなソファを虎竹で作ると面白いなあと思っていました。虎竹ヤチャラ椅子という竹の弾力だけで編んだ一人がけの椅子は製作することはありますので、竹の弾力や肌触りを活かして広く大きな座面が出来るなら、沢山の方が思い思いに腰をおろして休めるのがソファだと何と素敵なのか!


竹ハンモック、竹虎四代目


今年は竹ハンモックなども体験することができて改めて竹と人との関係を考える機会も多かったのでより実現したいと考えるようになったのかも知れません。


虎竹ソファベンチ図面


しかし、いきなり大きなサイズをいざ作るとなると難しい問題が沢山出てきそうです。まず自分のイメージを話して絵に描いてみます。


竹虎四代目(山岸義浩)


サイズや不特定多数の方にお使いいただける強度を考えて鉄フレームを製作いただくことにしました。フレームの出来あがりを見ると、すぐに完成した虎竹やたら編みソファベンチと横になってくつろぐ笑顔の自分が浮かんできます。まだまだこれから虎竹のあしらいをせねばなりませんが、もう頭の中には出来ているのです。


地球の裏側、虎竹の里に繋がる

ブラジルサンパウロ、Japan House竹虎四代目講演


思い返せば今年6月にはブラジルサンパウロに開館したばかりのJapan Houseで竹の展示がありました。日本を世界に発信するための施設で一番最初の展示テーマが「竹」という事に感激していましたが、幸運にもコチラにお招き頂いて現地の皆様を前にお話をさせてもらう機会があったのです。


ブラジルサンパウロ、Japan House


サンパウロの目抜き通りに、木材を使った独特の外装が異彩を放っているのがJapan House、手がけたのは高知県とも縁の深い建築家、隈研吾さんでした。


外務省のすすめる、このプロジェクトは今後ロサンゼルス、ロンドンと続いてオープンして行ってオリンピックに向けて日本文化発信の拠点となるそうですので、日本の竹文化もこの機会に世界に向かって大きくPRしていければと願いを込めてお話しさせてもらいました。


ブラジルサンパウロ高知県人会


さて、はじめてサンパウロにお伺いさせていただきまして交流させて頂いたのが来年設立65周年を迎えるブラジル高知県人会の皆様だったのです。日本から海外に新天地を求めて移住されたという事は何となくは知っていましたが、自分たちの暮らす高知県からもこれほど多くの方が行かれていてしかも、当地に高知県人会という組織まであり、故郷土佐の文化を受け継ぎながら今日に至っていることに大いに感動しました。


ブラジルサンパウロ高知県人会への贈り物


そこで、帰国してから地元の有志の皆様にお願いして故郷の産品を色々とお送りさせてもらっていたのです。サンパウロの税関の内容物検査や、ちょうど郵便局のストなどもあり約1カ月も配達ストップがあって心配していましたが、ようやく日本からお送りさせてもらった荷物が届いたとの連絡!今年も今月で終わりますので、年内に贈ることができて本当に安堵しています。ご協力いただいた各企業の皆様には改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思っています、本当にありがとうございました!


2018年は日本人ブラジル移住110年だそうです。ブラジルサンパウロでも様々な記念行事が予定されていると聞きます。地球の裏側にも小さな高知県があって、古き良き土佐文化が息づいています。実は8月のお盆休み明けに、当社のすぐ近くからブラジルに移住された古谷さんという方が里帰りさせていて偶然にもお会いする事ができたのです。


ブラジルに移住された古谷さん


ブラジルから虎竹の里へ、里帰りの古谷さん」に書かせて頂いてますが家はすぐ近くですし、数年前に退職した当社職人の同級生でもあり、祖父の事や自分の知らない虎竹の里の事もご存じでした。サンパウロの新聞に掲載されたJapan Houseでの自分の記事を読まれたそうです。全てが繋がっていると感じたこの一年、来年にも繋がっていきます。


根曲竹の椅子たち

根曲竹スツール


根曲竹(チシマザサ)は主に東北、北海道はじめ寒い地方に育つ竹で、竹と名前が付くものの笹の仲間であり高さも直径も通常の真竹などに比べるとかなり小さい竹なのです。雪の多い地域で育ちますので重みで根元が曲がるから根曲竹といいます。


根曲竹


寒い地方竹はスズ竹にしろ強靭で粘りのある特性をもっていて実用性のある竹細工には最適ですが、この根曲竹も雪に鍛えられたような堅牢さが持ち味で昔から生活用品のみならず農業用、漁業用の竹製品の素材として広く活用されてきました。現代でもその竹の風合いは根強く支持されていて籠やざるに加工されていますが本日の主役は同じ根曲竹でも、そのような小さな竹細工ではありません。


根曲竹椅子


この背もたれの付いた座り心地の良さそうな椅子をご覧になって何で作られたものか分かる方が何人いるでしょうか?恐らくは、ほとんどの方が籐製の家具か何かと思って気にもとめないかも知れません。籐家具なら海外で沢山製造されていますし、目を見張るようなデザインのものも見かけることがあります。


根曲竹家具


しかし、実はこれらがかって非常に高い評価を受けていた根曲竹製の家具なのです。今から60数年前、戦後の日本は物資不足ということで竹製品にも多く需要があり農村工業の副業として竹細工の籠が売上で日本一の地域などもあったと言う、竹を取り巻く環境も現在とは全く違う時代背景がありますが、根曲竹をひとつの工芸的な製品化として目指された方々がいた証です。


根曲竹家具


これらの根曲竹の椅子は、おそらく50年くらい前の作品ではないかと思います。弾力に富み加工性の高い根曲竹の性質を活かした家具は今では全く見る事すらできませんが、当時はテーブルなども創作されていたようです。


根曲竹家具


このように竹を丸く曲げる技は、黒竹を使った丸窓などに残っているものの黒竹が装飾であるのに対し強い根曲竹を加工する事により実用的な家具とした所が非常に面白く興味をひかれるところです。


今の時代にあれば喜んでいただける方も多いであろう根曲竹の家具、しかし、たまたま出会うことがあってこうして僅かながらもお伝えすることができています。時代の流れの中で残念ながら消え去り、忘れ去られてしまった竹細工、竹製品は数えきれないほどあるのだろうと思います。


神秘の竹林へ、ようこそ

日本唯一の虎竹林


神秘の竹林などと言ったら少し大袈裟のようでもありますが、日本全国にこれだけ竹が生えていて北海道、東北の一部をのぞけば何処にでも竹林は見られるのにもかかわらず、虎模様の虎竹がこの虎竹の里でしか生育しない事を思えば「神秘」という冠にも頷けるというものです。しかも、この虎竹にはこの地にしかない江戸時代から続く竹と共に暮らしてきた人々の歴史があります。


牧野植物園にある日本唯一の虎竹の説明書


虎竹の命名の父は高知県出身で世界的植物学者であられた牧野富太郎博士であり、そのご縁もあって高知市五台山にある牧野植物園に虎竹を移植させてもらっています。ここは、元々人気の施設ではありますが最近は特にパワースボットとして若い方も行かれるようですが園入り口にある売店奥のレストランに隣接したテラスデッキから見える竹が虎竹なのです。説明書きもしっかり付いてますので間違えることはありせん、機会があれば一度ご覧いただきたいと思います。


日本唯一の虎竹、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


牧野植物園の虎竹は移植してから随分時間が経っていますので竹の寿命を考えれば当時の竹は無くなっていて残念ながら今の竹達は普通の淡竹(はちく)に戻ってしまっています。


しかし、虎竹の里では今年もこうして色付きの良い嬉しくなってくるような虎竹達が伐採され山出しされてきています。伐ったばかりの竹は水分も多くズシリと肩に重たいのです、これが虎竹の里の明日を担う重さです。


虎竹ふすま、道の駅かわうその里すさき


虎竹の竹林には、なかなかお越しいただく機会は少ないと思いますが美しい虎竹の立ち並ぶ様子が見られる場所がありますのでお教えさせてもらいます。


それが「道の駅かわうその里すさき」なのです。虎竹の里からひとつ山を越えた所に流れるニホンカワウソのいた新荘川ほとりにある道の駅ですが、ここの2階レストランには神秘の虎竹を入れたフスマがズラリと並べられていて壮観です。


梅干しざるや野菜干しに最適!エビラ籠の網代編み

竹職人ヒゴ取り


太く伸びのよい孟宗竹が運ばれて来ます、職人が粗割した厚みのある竹ヒゴを4枚に柾割していきます。先月の15日に開催された全国竹の大会高知県大会では高知の孟宗竹をミロクテクノウッドさんがトヨタレクサスの竹ハンドルに製造される話があり、現地研修会でも大人気でしたが、そのような活用はつい最近の事なのです。


真竹が豊富とはいえない高知では孟宗竹を竹編みに使うことが多く、真竹や淡竹で編まれる横編みの竹笊や竹籠などでも芯には丈夫な孟宗竹が使われているのです。


エビラ竹網代編み


エビラをご存じない方のためにお話しさせていただきますが、この竹籠は元々は蚕籠として木枠の中に竹編みをしつらえられていた古くからの道具が元になっています。当時はまさか都会で干しざるとして使われようとは思ってもみなかった事だと思いますが、地元の農家さん用とは別に使い勝手の良いハーフサイズを作ってみたところ人気となり今では大きなサイズも皆様にご愛顧いただいております。


竹は旬の良い時期だけの材料を使わねばなりません。梅干しの土用干しなど来年の梅雨明けの頃の事ですので、まだまだ先ではありますが竹編み部分はこうして前もって少しづつ編んで用意しているのです。