少し前に竹虎に見本品として持ち込まれた竹ざるが編み上がりました。青々としていた竹ざるは天日に晒して水分を抜いてから微調整するのが、この職人の流儀。若い職人も驚くほどの堅牢な作りの竹ざるが、こうしてようやく完成したのです。
ところが、社員が出来あがりを連絡させて頂くと「まだ送らなくて良い」とのお返事だったと聞きました。これは意外です、少なからず驚きました。
プロの方が仕事で三十年、四十年使いたいから最高の竹笊をと言われましたので職人に無理をいって太い真竹を探して伐りに行ってもらいました、大きなサイズなので力が物凄く必要とされる骨のおれるお仕事なのですけれど、せっかくだから早いほうがよいかと思い仕上げていただきました。
もしかしたら多くの皆様は、このような横編みの竹ざるは目にする機会が多いのでどこにでもあるように思われるかも知れませんが実は製作が非常に難しいのです。輸入の竹細工のこと分かりませんが国産でこのように美しい編み込は本当に少なく、特にこのような特大サイズは、いくら費用がかかっても良いのなら別ですが普通に編むのは無理です。
しかし、このような返事を言われるのは、お客様が悪いわけではありません。竹の価値や、別誂えの竹細工の重みをしっかり社員に伝えていなかったから起こる間違いです。横編みの竹ざるは、小さなサイズだと竹虎には沢山あるので普通の事だと思ってしまっているです。しかし、実際には日本製の横編み竹ざるは貴重です。
職人さんも出来映えが素晴らしく「待ってました!今から車飛ばしてでも見に行きます!」そんなお声を頂けるような自信があるだけにお客様がどんなに喜んでいただけるのかを、ずっと楽しみにしています。早く届けてもらって、お客様に見てもらいたい気持ちなのです。
お届けさせていただくのは今回は2個だけ、しかし、別誂えの竹細工は最初から上手くできなかったり、サイズで微妙な違いがあったりしますから試作で何個が作るのが常です。つまり、2個の注文のところ、実際には倍の4個編んでいたりします。
そんな表には出ない苦労もありますが、お客様が何とか製作して欲しいという熱量を感じて作っています。熱には熱で応える職人を、いつも横目で見ている自分からしたら「違うな」と思いますけれどそれを伝えていなかったから自分の責任です。もし、ご存じならこのような事はありえません。亀仙人になって山ごもりして反省したい気持ちです。
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