直径が70センチ近い大きな竹ざるを持ち込んで来られたのは老舗味噌屋さんでした。仕込みで使われるというだけあって大きさもさる事ながら、一目でその堅牢さが伝わってくる丈夫な作りとなっちょります。
古くなってきたのでそろそろ新しいモノが欲しくなって馴染みの竹屋さんを当たられたそうですが、時すでに遅し。今まで作ってくれていた職人さんもいなくなり、途方にくれて遠くからわざわざ竹虎までお越し頂いたとの事でした。
一昔前ならこのような真竹を使って籠やザルを編む、いわゆる青物と呼ばれる竹細工をする職人さんは全国各地におられたのです。ところが、安価な輸入製品が大量に入ってくるようになり竹籠や竹ざるはホームセンターで手軽に買える使い捨て容器のような扱いになってしまうと昔ながらの竹細工をされていた職人の多くが竹を諦め、伝統の技の中でも一番最初に次々と消えてしまったのです。
しかし、今回お客様が求められている「竹」は、プロが本気で何十年と使いたい品質。使用して傷んでしまえば修理しながら又使うという、まさに失われてしまいつつある熟練の手仕事が必要とされていたのでした。
この大きさで、これだけのタフな竹さるを編む職人は日本に何人おりますろうか?もちろん費用がいくらかかっても良いというのなら話は別ですが、味噌屋さんや酒屋さんが何個か注文できるお値段となれば極端に少なくなります。
工房の入り口には職人自ら山に入り伐採してきた思わず手で撫でたくなるような見事な真竹が数本置かれちょります。良い仕事をする竹職人は、とにかく手も早い。大きく、丈夫な竹ざるで決して簡単ではないのですが2個、3個と編み上げられているのです。
このような頼もしい竹職人は皆いわゆる世間一般で言うところのお年寄りばかりではありますが、50歳は青二才、60歳は若手です。70歳や80歳、時には90歳の現役がバリバリ活躍する竹の世界は、これからますます進行する超高齢化社会には最先端の仕事なのです。
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