まんじゅう笠と言うて昔ながらの製法で竹皮と細い竹ヒゴを使って作る笠があるのです。地元高知の芸西村で作られるこの笠は、竹の子笠とも呼ばれますが材料には淡竹(ハチク)の竹皮を使いますので、孟宗竹や真竹を使用する竹皮草履などとは同じ竹皮でも出来映えが違って上品な白い色合いとなっているのです。
ご存じの方も多いかと思いますが竹の皮というのは筍の皮の事ですぞね。筍が伸びる時に竹皮が地面に落ちるのを毎日のように竹林に入って集めていくのですが、実は孟宗竹、淡竹、真竹、それぞれに筍の生える時期というのはが少しづつズレています。
竹皮草履の素材を集める苦労はよく知っていますが、まんじゅう笠の材料である淡竹の竹皮もちょうど時期的に梅雨にかかり大変だと言うことです。
ところが先日見かけた真っ黒いまんじゅう笠があります。自分の知っている白く繊細な竹肌とは似ても似つかぬ風体。確かに形、編み方など同じ笠には間違いはありまんが、まるでわざと色を染めたかのようにも見えるほどぜよ。
すっかり色合いの変わった淡竹の皮を渦巻状に留めているのは蓬莱竹の竹ヒゴですぞね。職人さんは土用竹とも言いますし、高知ではシンニョウチクと呼ばれる事が多いのですが、とにかく節が低く、節間が長くて丈夫でしなやかですので、このような細い竹ヒゴにヒゴ抜きして使用するのにも最適な素材なのです。
拝見したのは高知歴史民俗資料館の展示品の一つだったかと思います。あの真っ白い竹皮が、飴色を通り越して「黒い」と表現しても良いくらにいなるまでには一体どれくらいの時間が経過したのでしょうか?
龍馬の脱藩にも使われたとの逸話のある竹皮の笠、当時はこのような色合いに変わるまで大事に長く長く愛用されてきた事を物語っていますし、竹皮の耐久性をも知る事ができるのです。
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