黒革張りの雪駄は小さい頃には普通に店頭に並んでいた商品でしたが今では作る職人もいなくなり、それと同時に各部材を製造できる会社も無くなり残念ながら廃盤となってしまっていたものなのです。いちど出来なくなってしまった技の復活は、ほとんど不可能に近いものがありますが、そのパーツや道具なども同じです。何とか再販売したいと思いつつも黒革雪駄は、新しくリニューアルした形で製造できるようになるまでに数年の月日を費やすことになりました。
しかし、その廃盤のさらにずっと前の事。材料も手に入りづらくなって来て今後は製造できなくなるだろうからと最後の商品だと職人から一足の雪駄をいただきました。日頃から鼻緒の履き物を履く事も多く、黒革雪駄も自宅や仕事場、車内にも置いてますので個人的にも常に数足使っています。いつも愛用している事を知ってくれていたこの職人が最後の記念にと手渡してくれたのが今まで見た事もなかった迫力満点の雪駄だったのです。
あれからずっと大事に保管し続けてあった雪駄は今では手に入らないタイヤ底。通常はつま先だけにしか縫いつけていない補強の黒革が雪駄の両サイドと更にカカト部分にも縫い込まれているまさに、最強の黒革雪駄とも言うべき一足ぜよ。
「最後の一足」と聞けば足を入れることもままならずいたのですが、今回黒革雪駄の復刻を契機にどうにかあの幻の雪駄を復刻させて履くことができないものか?たとえ数足でも世にだすことはできないものか?底材は新しく製造してもらったゴム底に変わりましたが、それ以外は合皮の鼻緒も当時そのまま、まったく同じに復刻したいと思ったのです。
出来あがって手にするまで信じられないような気持ちでしたが、本当にあの時の雪駄と同じ形で復活したのです。黒革雪駄でさえ復刻できたのが数年待った自分からしたら奇跡です。最強となると、まさに天の恵みのような心持ちぜよ。