広大な竹林と言えばすぐに中国にある竹海を思い浮かべるのです。麓から山頂までビッシリと竹に覆われた山々が遙か彼方まで続く様子は竹文化の懐の深さを象徴するかのようにも思えてくるのですが、実はブラジルにも北部へ向かった温かな地域には世界最大級の竹林が広がっているそうなのです。
継続利用可能な唯一の天然資源である竹ですから豊富な資源として考えた時にも、これを活用しない手はありません。そこで国内でも有名なサンパウロ州立パウリスタ大学では竹利用を学ぶ学生さんがおられるのかも知れません。数名の学生さんが待ち構えていて案内いただいた室内には丸竹や竹集成材を使った大小様々の実験的な製品が並んでいました。
簡単に施設を拝見した後は、早速教室に移動して講義を開始します。若い皆様に日本唯一の虎竹の事をお伝えしたいのは日本でも地球の裏側の国でも同じぜよ。通訳の方を通しての話は、やはりもどかしいのですが少し要領も得てきました。そして、何より目をキラキラさせて聞いていただけるのは嬉しい限りなのです。
到着して拝見した大学の研究室には竹編みの製品は小さな竹ざるが一つあるだけでした。竹は丸竹そのままの直線的な使い方と、細く割った竹ヒゴを編み上げていく曲線的な使い方がありますが、こちらの学生さんには竹編みにはあまり馴染みがないように思いましたので講義の中では虎竹の話の後に「編組(へんそ)」について自分が心得ているポイントをお話させて頂きました。
農業の盛んな国でもありますので、農地で利用されている竹編みの籠は目にする機会もあるのかも知れません、しかし、日本のように生活の隅々に竹籠があり、繊細に扱われているということは新鮮かも知れないと思ったのです。そういえば、ジャパン・ハウスサンパウロにも名人だった故・廣島一夫さんの用の美の極致のような竹籠が展示されていました。使い心地を考えて到達した竹の進化を、日本人の細やかな心配りと結びつけてご覧いただく方もおられたでしょうか。
やはりブラジルでの竹と言えば建材や資材という側面で捉えられる事が多いようです。竹材の中にコンクリートを詰めて補強した柱で学生の皆さんが建てている建築物も見せていただきました。竹そのものの品質に重きを置くことが多いためか、こちらでは竹の製品化だけでなく日本ではあまり見られない種苗から竹を育てる研究もされています。大学も広い試場を持っていて多数の種類の竹を育てていましたが土壌や肥料の違いから竹の生育が微妙に異なるとの説明をいただきました。
そもそもブラジルではサトウキビを使ったバイオエタノールの活用が前々から進んでいて、現在では価格の関係で石油燃料の車の比率が高いようではありますがこの分野では先進の国なのです。資源大国らしく竹の利用開発がこれから進んでくれば、エネルギー分野でもかなり高い可能性があると感じています。
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