ブラジルJatobas竹農場の不思議

ブラジルJatobas竹農場の不思議


Jatobasの竹農場はサンパウロから高速道路を数時間走った山中にありました。虎竹の里の山道で未舗装道路には普通の方よりは慣れているつもりでしたが、身体が浮き上がるほどのダートは初めてです。そんな曲がりくねった道が延々と数キロ続いた先に美しい竹林が広がっているのです。


ブラジルJatobas竹農場の不思議


植えられている竹は南米らしく株立ちの竹ばかりです。グアドゥア・アングスティフォリア(Guadua Angustifolia)も株立ちらしいので、もしかしたらと思いましたがグアドゥアにも種類があるようで別の竹との事でしたが、株立ちでいながら孟宗竹よりも太い稈の竹など日本ではありませんので本当に見応えがあります。


ブラジルJatobas竹農場の竹種苗


ここでも竹は小さな苗から大事に育てられていました。ビニールハウスで育てている作物を美味しくするためにクラシック音楽を聴かせている農家さんの話を聞いた事がありますが、実はこの農園でもブラジル音楽でしょうか?心地の良いサウンドがずっと流れています。


ブラジルJatobas竹農場


それにしても、この農園はどこに行っても素晴らしく手入れされています。何でも常に12人のスタッフが竹の管理に当たっているとの事でした。


ブラジルJatobas竹農場


「Jatoba(ジャトバ)」とは南米北部に分布する樹木で、この立派な木がこの農園の名前の由来との事でした。木陰に腰かけると不思議と心が落ちつきリラックスした気分になってきます。


ブラジルJatobas竹農場


ところが、このJatobasの竹農場で本当に不思議な事が起ったのです。実は自分はこの農園に来た事がありました。そう言って現地の方に話すと「えっ?ブラジルは二度目ですか?」と聞かれたのですが、そうではありません。


園内を散策している途中で通った両側に竹の生い茂るスロープを何度か通った事があったのです。もちろん現実にではありません、夢の中のお話ですが間違いなく此処でした。この小道に入った途端に思い出し、何度も何度も振り返りながら、確かめながら歩きました。


もしかしたら昔から此処に来る事は決められちょったのかも知れません。


ブラジルJatobas竹農場の不思議


道を下った先には竹が生い茂り、川が流れる音が聞こえてきました。まるで日本の里山にいるかのような光景ぜよ、本当に日本の裏側のブラジルなのだろうか。そんな親しみも感じたJatobas竹農場やったがです。



Centro Max Fefferに整然とならぶ美しい竹

Centro Max Feffer


真っ直ぐな竹が整然と並んだ美しさは何とも言えませんぜよ。それが、このような大型の建造物なら尚更のこと、南米の一番期待して見たかった竹活用を前に思わず声があがります。


Centro Max Feffer


屋根の下に入ると遠くまで見える竹の連続が心地よく、風の通り抜ける開放感のあるスペースは公共施設として色々なイベントが開催されているといいますが集まる沢山の方の笑顔が目に浮かぶようなのです。


Centro Max Feffer


使われているのは孟宗竹のような大型の竹でした。実は次の日にお伺いすることになるのですが、日本人の方が持ち込んで移植した孟宗竹が大きな竹林に育っているのです。その竹林の竹をこの建物に使用したそうですので孟宗竹に間違いありません。時間がなくて駆け足でサッと見たところでは目立った割れ等もなかったようでした。


Centro Max Feffer


竹の一番の特徴である直線的な美しさを強調した屋根なので、その真っ直ぐな竹を使った曲線美も際だって綺麗に見えていました。


虎竹特別講義INサンパウロ州立パウリスタ大学

虎竹特別講義INサンパウロ州立パウリスタ大学


広大な竹林と言えばすぐに中国にある竹海を思い浮かべるのです。麓から山頂までビッシリと竹に覆われた山々が遙か彼方まで続く様子は竹文化の懐の深さを象徴するかのようにも思えてくるのですが、実はブラジルにも北部へ向かった温かな地域には世界最大級の竹林が広がっているそうなのです。


継続利用可能な唯一の天然資源である竹ですから豊富な資源として考えた時にも、これを活用しない手はありません。そこで国内でも有名なサンパウロ州立パウリスタ大学では竹利用を学ぶ学生さんがおられるのかも知れません。数名の学生さんが待ち構えていて案内いただいた室内には丸竹や竹集成材を使った大小様々の実験的な製品が並んでいました。


サンパウロ州立パウリスタ大学


簡単に施設を拝見した後は、早速教室に移動して講義を開始します。若い皆様に日本唯一の虎竹の事をお伝えしたいのは日本でも地球の裏側の国でも同じぜよ。通訳の方を通しての話は、やはりもどかしいのですが少し要領も得てきました。そして、何より目をキラキラさせて聞いていただけるのは嬉しい限りなのです。


到着して拝見した大学の研究室には竹編みの製品は小さな竹ざるが一つあるだけでした。竹は丸竹そのままの直線的な使い方と、細く割った竹ヒゴを編み上げていく曲線的な使い方がありますが、こちらの学生さんには竹編みにはあまり馴染みがないように思いましたので講義の中では虎竹の話の後に「編組(へんそ)」について自分が心得ているポイントをお話させて頂きました。


虎竹特別講義INサンパウロ州立パウリスタ大学


農業の盛んな国でもありますので、農地で利用されている竹編みの籠は目にする機会もあるのかも知れません、しかし、日本のように生活の隅々に竹籠があり、繊細に扱われているということは新鮮かも知れないと思ったのです。そういえば、ジャパン・ハウスサンパウロにも名人だった故・廣島一夫さんの用の美の極致のような竹籠が展示されていました。使い心地を考えて到達した竹の進化を、日本人の細やかな心配りと結びつけてご覧いただく方もおられたでしょうか。


ブラジルの建材


やはりブラジルでの竹と言えば建材や資材という側面で捉えられる事が多いようです。竹材の中にコンクリートを詰めて補強した柱で学生の皆さんが建てている建築物も見せていただきました。竹そのものの品質に重きを置くことが多いためか、こちらでは竹の製品化だけでなく日本ではあまり見られない種苗から竹を育てる研究もされています。大学も広い試場を持っていて多数の種類の竹を育てていましたが土壌や肥料の違いから竹の生育が微妙に異なるとの説明をいただきました。


ブラジルの竹


そもそもブラジルではサトウキビを使ったバイオエタノールの活用が前々から進んでいて、現在では価格の関係で石油燃料の車の比率が高いようではありますがこの分野では先進の国なのです。資源大国らしく竹の利用開発がこれから進んでくれば、エネルギー分野でもかなり高い可能性があると感じています。


JAPAN HOUSE Sao Paulo、竹のインスタレーションたち

JAPAN HOUSE Sao Paulo、田辺竹雲斎作虎竹インスタレーション


JAPAN HOUSE Sao Paulo(ジャパン・ハウス サンパウロ)には自分の大好きな天才とうたわれた竹芸家の作品も展示されていますし、一度だけお会いした事のある伝説の竹職人の作品も飾れてています。しかし、何と言っても人気は竹のインスタレーションたちですぞね。


中央には四代目田辺竹雲斎さんの虎竹を使った迫力の作品が来場された多くの方の目を釘づけにしているのです。地名など話ても誰ひとりとして知らない小さな小さな虎竹の里にだけ成育する竹が、こうして地球の裏側にまで運ばれてきて恐らくはじめて出会った瞬間かも知れません。


Marjorie Yamaguti作


実はホテルから会場に向かう道すがらに地元サンパウロで活躍するMarjorie Yamagutiさんという日系女流竹作家の作品があるのです。はじめてブラジルに来て、この竹の回廊を通ったものだから気持ちはヒートアップ、高揚感そのままに日本の竹展に向かいました。あとで話を聞くと、この方の活動もまっこと面白い。飛行機で30時間も離れているのに、きっと又出会うと確信するのです。


日詰明男作、竹インスタレーション


ジャパウハウス入り口脇にある屋外スペースに展示されている日詰明男さんの作品も目をひきます。これは一体どうやって製作されたがですろうか?かなり緻密に計算しないとこうは出来ないのではないかと思います。作家の情熱たるや凄まじいものを感じるがぜよ。


川島茂雄作、竹インスタレーション


大分県別府市の川島茂雄さんの作品を拝見するのは二度目でした。昔からこのような大きな竹編みに取り組んで来られた竹芸家の方、以前お会いした時は製作中でしたので今度はゆっくりお会いさせていただきたいと思いながら拝見させてもらいましたぜよ。


このような大作の他にもジャパン・ハウス サンパウロでの「竹 ― 日本の歴史」展は見所が満載です。来月7月9日までの会期です、自分の竹の講演にも2000キロ、3000キロの彼方から飛行機で駆けつけて頂いたブラジルの竹人の方々がおられたとの事です。けんど、まっこと遠くからでも来た甲斐のある竹の展示です。是非一人でも多くの方にご覧いただきたいと思うちゅうのです。



JAPAN HOUSE Sao Paulo「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」

JAPAN HOUSE Sao Paulo「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」


日本の情報発信のために作られたJAPAN HOUSE Sao Pauloは、ロンドン、ロサンゼルスに先がけてブラジルはサンパウロのパウリスタ大通りというメインストリートにオープンしています。沢山の人々が集まる目抜き通りであり、建築家の隈研吾さんがデザインを担当した建物は温もりを感じさせる木が多用されていて周りの建物とは、まるで違う空気感が漂っていて圧倒的な存在感を放っていました。


JAPAN HOUSE Sao Paulo


スタートより来場者数も予想を大きく超えているそうで、平日にも関わらず多くのお客様が来られているのには驚きました。さらに、その一人一人の皆様が竹の芸術作品から日常使いの竹細工、竹玩具のようなものに致まで熱心にご覧になられ、連れ添って来られた方々と楽しそうにお話されているのが印象的で、ブラジルでの日本文化への関心の高さを肌で感じる事ができたのです。


JAPAN HOUSE Sao Paulo竹虎四代目講演


そんな中での「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」と題した講演にも立ち見がでるほどの来場をいただきました。サンパウロには日本からの移民として来られた方々も多いそうですが、高知県人会の会長様はじめ数名の方がご夫婦揃って来場いただいていた事にも感激たがです。


JAPAN HOUSE Sao Paulo「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」


自分にとっては当たり前の100年続いてきた虎竹の里の事をお伝えさせていただくだけだったのですが曾祖父から、祖父、父、そして自分が歩いてきた細い山道から虎竹を満載にして山出しする、ほんの数十秒の短い動画をご覧いただくと会場から大きな拍手が起こりました。しばらく声になりません。


JAPAN HOUSE Sao Paulo「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」


山の職人や、地域の人々、竹虎の社員にとっては何という事の無い日常が実は全く当たり前ではなく、他では決して見られない江戸時代から脈々と続くかけがえのない価値そのものだという事に改めて気持ちが引き締まる思いだったのです。


JAPAN HOUSE Sao Paulo竹虎四代目講演


本気の話、熱いモノがあふれ出します。日本とは時差が12時間もある地球の裏側のサンパウロ、皆様に虎竹の里の毎日をお伝えできる機会を頂けたことに心から感謝しちょります。


大好きな職人さん手作りの竹帽子

竹帽子


南米ブラジルといえばアマゾンぜよ。熱帯雨林が生い茂り、強烈な太陽が照りつける。そしてリオのカーニバル。サンパウロからほど近いリオデジャネイロで開催される世界最大級のお祭りでは熱狂的な踊り子たちと激しいリズム、まさに暑い常夏の国とずっと思いよりました。


日本でも南国土佐と言われる高知で生まれ育っていますので暑さには強いと自信はありますものの、これからの季節ますます暑くなってくるこの時期に南米へ行くからには猛烈な暑さ対策が必要だと思っていたのです。そうなると、強い陽射しを遮る竹帽子を持参しないワケにはいきません。


「さて、どれにしようかのう?」


そもそも帽子というのは色々とあっても共通しているのは素材の柔らかさ。布のにしろ、革にしろ、植物を使ったものもありますがフィット感が重要なのでソフトなものが多いと思います。前に帽子作家の方に竹皮を素材として提供させていただいた事もありますが全て肌触りが優しいものばかりです。


竹帽子


ところが自分の使う竹帽子は真竹製ぜよ。もともと職人さんのお父さんが自分用に編んでいたものを見よう見真似で作って被っていたのを見て欲しくなり編んでもらったのが始まりです。最初は分からないので自分のもっていた布製の帽子と同じ寸法に作ってもらいましたが、薄い布生地は頭の形にあわせてくれますが竹ヒゴはそうはいきません。そこで何度かやり直したり、少しデザインを変えてもらったりしているうちに複数の帽子が出来あがったというワケなのです。


「よしっ!今回はコレにするかにゃあ」


手に取って持って行くことを決めたのは良いのですが、南米は日本の裏側。うっかりしちょりましたが、これから真夏に向かう日本とは反対に冬になるそうぜよ!?サンパウロの気温も調べたら、これから7月と言ったら最低!一年で一番寒い時期ながぞね!薄手のセーター、カーディガンなど持って行ったら良いと書いちゃある!?まっこと(本当に)田舎者何ちゃあ分かってないきにイカンちや。


竹帽子


まあそうは言いつつ、あの大好きな職人さんの帽子にも、南米を見せたいと思い持ってきたのです。


ブラジル・サンパウロ講演、「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」

ジャパンハウスサンパウロ

 
竹は本当に魅力的な植物です、知れば知るほど他にはない生命力と秘められた神秘性を感じます。虎竹の古里である焼坂の山を車で登っていくと、人が一人あるけるような細い道が枝分かれするように伸びています。それは竹林に続く道であり、父や祖父や曾祖父が通った道。一人行けば土佐藩政の頃の息づかいさえ感じずにはいられない魂の場所。


竹虎は今年で創業123年、ずっと竹と向き合い竹と共に生きてきました。竹の可能性を思い「21世紀は竹の時代」と言い始めたのは1985年の事、世の中はバブルと呼ばれるような好景気に向かっていましたが、自分達にとっては竹が急速に忘れられ時代に置き去りにされたかのように感じる暗い冬の時代の到来だったように覚えています。


虎竹


しかし、どんな時代であっても世間がどうであろうとも、虎竹の里では季節になれば筍が生え、青々とした葉を風に揺らしながら大きく育ち、時期になれば伐採された竹が前の年と、その前の年と、更にその前の年とも同じように山から運び出されて来るのです。


まるで息をする事と同じように当たり前に、ずっと小さい頃から何ひとつ変わることなく続いてきた虎竹の里の営み。在サンパウロ日本国総領事館のお招きでジャパンハウス・サンパウロ(JAPAN HOUSE Sao Paulo)でお伝えさせて頂く内容はそんな自分達がずっと続けてきた、ごく当たり前の日常の話。これからの100年に向けた竹虎四代目の、ささやかで、たったひとつの願いでもあります。


ブラジル・サンパウロ講演、新しい龍馬ブーツ

龍馬ブーツ


見出しにある「新しい龍馬ブーツ」とは、あの坂本龍馬が日本人で初めて履いていたというブーツの事なのですが、実は昔の資料を研究して復刻されている方がおり自分もずっと愛用しちょります。


龍馬ブーツ


実はサンパウロに行くことになって、ふと足元を見た龍馬ブーツ。靴底を2度張り替え、もう7年以上も履き込んでいますので革は良い感じになっているのですが、先日は靴磨きをお願いした方にサイドゴアのゴムが伸びきっているので修理した方がよいとススメられてもいます。


龍馬ブーツ、竹虎四代目、楠本逸雄さん


龍馬ブーツを復刻製作された楠本逸雄さんは亀山社中のあった縁の深い長崎におられます。いつもお世話になっているブーツの製作者であられますので常々お会いしたいと思っていましたし南米大陸には初めてお伺いするこの機会に靴を新調する事にしたがです。


龍馬ブーツ


店に行くと本当に全国から龍馬ファンが来られて注文されているようです。当時の新聞なども、しっかり用意されていました。


龍馬ブーツ


新しいブーツで、新しい世界に踏み出せそうぜよ。


続・南米の竹、グアドゥア・アングスティフォリア(Guadua Angustifolia)

 
割れ防止加工白竹


南米では竹が多用されていて大きな建造物や橋などにも竹材がそのまま使われているのを画像で見た事があります。建築法などの違いもあるし、竹材そのものの性質の違いなどありますが日本ではそのような使われ方は皆無なので、もし大きな建造物への竹活用が見られるのならこんな嬉しい事はありません。


そして、そんな竹材にコンクリート注入されているという技法についても日本でも空洞部分にスポンジ素材を入れて割れ防止加工にした竹材もありましたので南米の代表的な竹と言われるグアドゥア・アングスティフォリア(Guadua Angustifolia)では十分な強度を保ちながら建材利用が可能なのかも知れません。


虎竹林


昔の民家の壁は土壁でしたので骨組みに竹が使われていたのはご存じですろうか?虎竹の里に育つ竹も全てに美しい虎模様が出るワケではなくて、いわゆる「シロ」と呼ぶ虎模様の付かない竹もあります。そんな竹は選別されて、この壁竹用に割って大型トラックで出荷していました。


土壁に竹が使われるのでコンクリートにも使えるだろうという発想はごく自然だったかも知れません。鉄の代わりに竹を使ってコンクリートを施行していく竹筋コンクリートは第一次大戦から第二次大戦終戦まで世界的な鉄不足があり日本でも見られたそうながです。


昭和17年(1942年)に架けられた岡山市郊外のコンクリート橋である大原橋は竹が使われている橋だと何かで読んだことがあります。解体してみないと真偽のほどは分からないそうですけんど実際ずっと使われ続けているところを見ますと、もし竹筋だとしたらその耐久性の高さに認識を新たにされる方も多いかも知れませんぜよ。


南米の竹、グアドゥア・アングスティフォリア(Guadua Angustifolia)

ジャパンハウス・サンパウロ


今回のお招きでは講演だけではありません、楽しみなのはブラジルの竹関係の皆様とのパネルデイカッションや竹業界の方々への訪問なども予定されちょります。南米はどこの国にも一度も行ったこともないのですが竹は熱帯系の植物であり、その種類も量も豊富にあって日本とは全く違う活用がされていると聞いて前々からずっと関心がありました。


サンパウロで見ることが出来るのか分かりませんが、特に興味があり又面白いと思っていた事のひとつに建築材への活用方法です。何と竹の稈の空洞部分にコンクリートを注入して強度をあげる手法があるそうなのです。東南アジアには空洞部分にもギッシリと身の詰まった竹がありますが南米ではどうなのでしょうか?


孟宗竹


エクアドルやブラジルに国境を接するコロンビアではグアドゥア・アングスティフォリア(Guadua Angustifolia)という舌を噛みそうな覚えにくい竹が有用竹として多く利用されてるそうですが太さが平均直径18センチと言いますので日本の孟宗竹より一回り大きな竹のようです。ならば、やはり中は空洞でコンクリートを詰めるような技法が必要なのかも知れません。


いずれにせよ最初知った時には自分の目で確かめないと本当の事かどうか信じられない程の驚きがありました。まさか、こんな形で現地を見られるかも知れない機会が来ようとは思いもしませんでしたがブラジルの竹の専門家の皆様との交流の中で確認できればと思いゆうがぞね。


ジャパンハウス・サンパウロ、田辺竹雲斎さん虎竹インスタレーション

ジャパンハウス・サンパウロ、田辺竹雲斎さん虎竹インスタレーション


ジャパンハウスとは外務省の展開する海外にある日本の発信拠点のようなものだそうです。日本の正しい姿の発信、日本の多様な魅力の発信、親日派・知日派の育成という3つを取り組みの柱とされていて2017年にロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの3つの都市に開業しお互いが連携しあいながら日本文化を発信するとの事なのです。


そんなジャパンハウス・サンパウロ(JAPAN HOUSE Sao Paulo)ですが5月6日に他の2拠点に先駆けて同市内ベーラ・ヴィスタ地区にオープンしています。海外から日本を見た時、「竹」と言うイメージがとても大きなウェイトを占めることは度々し申し上げている通りですが、こちらのオープニングを飾る様々なイベントの中でも注目の田辺竹雲斎さんのが作られた虎竹インスタレーションが来場された多くの人々の目を惹き付けています。


虎斑竹


ジャパンハウスの展示に日本唯一の虎竹を使っていただいた事などがご縁となり今週は在サンパウロ日本国総領事館さんにお招きいただきブラジル、サンパウロにて「日本唯一の虎竹と共に100年、持続可能な地域資源活用」と言うテーマで講演をさせていただく事になりましたぞね。


竹虎では1985年から「21世紀は竹の時代」とずっと発信を続けてきましたが、伐っても毎年生えてくる継続利用可能な唯一の天然資源としての竹の素晴らしさ、可能性は大自然からの大いなる贈り物として感謝しかないのです。


虎竹の里


虎竹はそんな竹の中でも、わずか1.5キロの間口の谷間でしか色づきが無く他の土地に移植しても美しい色合いにはならない本当に地域限定の不思議な植物です。命名の父である高名な植物学者・牧野富太郎博士も移植を試みたものの思うような色づきが出ないと記録を残されています。文献に残っているだけでも江戸時代から脈々と続く竹文化を含めて、世界的にみても極めて特異な場所だと虎竹の里を考えているのです。


ブラジルは日本から移住された方も多いと聞いていますが、たまたま数年前から知り合いになっている日系の方がジャパンハウスに行った時の画像を届けてくれましたぞね。熱心に魅入っているお客様が写っていますが、地球の裏側の遠い土地で自分達の虎竹が田辺竹雲斎さんの技によって活かされ楽しませている現場に立てるのかと思っただけで、まっこと(本当に)嬉しくなってくるがぜよ。


国産竹すだれの重み

国産竹すだれ


日除けのといいますと竹をはじめとしてヨシ、御形(ごぎょう)、萩、がま等色々な自然素材のものがありますが竹表皮を残した竹簾は節部分をジグザグ模様に編んでいますので特徴的ですぐに見分けられますぞね。


国産竹すだれ


肩に担ぐとズッシリとくる重さが丈夫さの証のように思えるのです。学生の頃、西日の強い部屋に住んでいましたので近くのホームセンターさんで買ってきた安価な簾を使っていましたがすぐに傷んで毎年買い換えていましたが、さすがにこの竹なら耐久性はかなりありそうぜよ。


国産竹すだれ


簾は日本的で良いものだと、いつも思います。風通しがよくて気候風土に合っているのはもちろんですが、何かにつけてファジーながです。相手との境界をハッキリさせません、控え目に優しく和を大事にしながら仕切をします。


国産竹すだれ


昔からずっと暮らしの中にあって、日本文化に大きな影響を与えているものの一つだと思うちょります。



虎竹ミニトング

虎竹トング


竹は、その柔軟性を活かしてトングに使われる事も多くいくつか種類があるのですが小さいもので良いものがなかなかありません。たとえばテーブルに置かれているお漬け物やガリ等を取ろうとすると上手く挟めなかったり、弾いてしまったり使いづらい事が多いのです。


虎竹ミニトング


ちょっと見るとピンセットのような形をした使いやすい虎竹トングがあります。長さが21センチ程度ありますので3分の1に小さくした約7センチサイズにしてみたら、これが思うより素晴らしい使いやすさ。竹製品をスケールダウンするのは結構難しいのですが今回はそのままのイメージで小さくなっています、さすが長年竹に携わる手ならではと感心するのです。


四種類の竹抱き枕

竹の抱枕


それにしてもニューヨークは毎日すごい日差しが照りつけて暑かった。空気が乾燥していて過ごしやすいと良く聞きますがいやいや滞在中は湿気も高くて南国高知の真夏ぐらいの感じやった。そんな猛暑にまだ身体が慣れていないのか、ちっくと(少し)目眩を覚えそうでしたが、実はまだ太陽がカンカン照っているうちは良いのです。これが、これからの雨続きの梅雨時になりますと更に不快指数はウナギのぼりとなり、ジメジメ、ムシムシの蒸し暑く寝苦しい夜がやってくるのです。


竹細工はひとつひとつ竹材の用意から完成まで手仕事で時間がかかるものばかりです。なので、まだまだ夏の事など考えもしていない春先から試作をして用意していた竹抱き枕は今年のは四種類にバリエーションも増やしちょりますぞね!


真竹抱き枕


例年の白竹抱き枕六ツ目70センチからご要望をいただいておりました長めの100センチサイズが新登場です。さらに、真竹の磨きの竹ヒゴを使い弾力を活かすことにこだわった長さ100センチサイズの抱枕が今年の人気となりそうな予感。本格的な夏到来の前にご用意しとうせよ。



42年前の腕時計、SEIKOファイブアクタス

42年前の竹虎四代目思い出の時計


出張前に25歳から愛用している時計が突然止まったのです。一つの金属の塊をくりぬいて作られた耐久性の高い時計とは言っても手入れもせず酷使してきましたのでオーバーホールしてもらおうと思って時計屋さんに持って行きました。ところが、これがすぐには出来あがりません、そう言えば前回に定期点検をお願いした時にも1ヶ月半くらいは待ったように思い出しました。


そうなると今回の海外に行かねばならない出張には、ちっくと(少し)不便だと思っていたのです。もちろんスマホなどで時間を確認する事もできますが、元々がアナログ人間なので時差のある場合には自分の手で時刻や日付を変更しできる方が安心出来ます。


そこで何かないかと思い巡らしていてふと開けた引き出しから取り出したのが42年前、父に買ってもらった腕時計、SEIKOファイブアクタスです。オモチャのような時計をした事もあるし、母のブランド物を譲ってもらい持っていた事もあります、学生の頃からはアンティークの時計が好きで手巻きのタイプを数本持ってました。しかし、どれもこれも何処かにいって無くなってしまいましたが不思議と、この時計だけは今でもずっと手元に残っていたのです。


ガラスは細かいキズだらけで、所々には数十年の垢がこびりついています。動くのか?振ってみると力強くネジが巻かれる感触が手に伝わってきました。正確に時を刻みだした秒針、青い文字盤、はじめて腕にまいた中学の頃には戻れませんが今回のニューヨークでは止まることなく順調にスケジュール通り働いてくれましたぜよ。やはり凄いちや、日本の技。


ニューヨーク、メトロポリタン美術館で初の日本竹工芸展

ニューヨーク、メトロポリタン美術館、田辺竹雲斎虎竹インスタレーション


ニューヨークのメトロポリタン美術館で日本竹工芸展が来年2月4日まで開催されます。「歴史的な」という言葉が飛び出すのも、そのはず実は竹工芸展は初めての開催、日本の竹の技は、まだまだ世界には知られていないのかも知れません。


ニューヨーク、メトロポリタン美術館、田辺竹雲斎虎竹インスタレーション


これからの長い会期中には大勢の世界からの皆様に日本の竹工芸を鑑賞いただける事になりますがその特別会場への入り口にもの独特の雰囲気とオーラで入場されたお客様をグイグイと引き込んでしまいそうな虎竹インスタレーションがあります。


ニューヨーク、メトロポリタン美術館、田辺竹雲斎虎竹インスタレーション


広いメトロポリタン美術館ですが、遠くから見ただけで「あれはっ!?」と思わず足を向けさせる力があります。高さ3メートル、幅4メートルの大迫力の作品を製作されたのは四代田辺竹雲斎さん。「The Gate」と言う名前を付けられていますが、まさにその名の通り日本の竹への素晴らしい入口となっています。来られた皆様は、竹に導かれて奥へ奥へと進み日本の竹を堪能してもらえる事だと思います。


ニューヨーク、メトロポリタン美術館、田辺竹雲斎虎竹インスタレーション


このような世界的な美術館の大事な意味あいのあるインスタレーションに日本唯一の虎竹を使うて頂けてまっこと光栄です。かっては土佐藩からすら出される事がなかった虎竹を、地域の特産に育て広めたいと志を立てた百年前の初代宇三郎が見たらどう言うろうか?


もう見て喜びよりますぞね。


再会なるか?メトロポリタン美術館の竹工芸展

小菅小竹堂さん


数年前、小菅小竹堂さんの作品が海外の美術館に渡る前、身近に鑑賞できる最後の機会との事で伺った事がありました。作品は今回お伺いするメトロポリタン美術館はじめアメリカの何カ所かのに運ばれるとの事でした。実は、あの時から、この作品たちが海外で展示されるのを心待ちにしてきたのです。


いつの事になるのは分からないけれど、今こうして手にとって拝見させてもらっている竹たちが世界の檜舞台に上がると、どんな風に見えるのだろうか?必ず行きたいという思いが通じたのか機会は案外早くやってきました。


虎竹バックニューヨーカー


虎竹バックニューヨーカーは、小菅小竹堂さんが日本の竹を世界に発信するために考案されたデザインを元に復元したものです。竹の特性を活かしきり、バックとしての機能美と量産可能な構造、流通のことまで念頭に置いて編み出された逸品でした。


当時の事を知る詳しい資料はほとんど残されていませんが、同じ技法で製造されていた竹製品を作ってきた職人さんに話を聞く機会が何度かありました。竹が元気だった頃の日本には、いつも眩しさを感じずにはいられません。量産され主にアメリカに輸出されていた事は昨年参加させてもらったニューヨークCOTERIE展で、子供の頃この竹バックで遊んだ思い出のある方に偶然出会ったことからも知れるというものです。


やはり竹は面白い、無限だと思います。ただ感嘆するばかりの竹に生きた偉大な先人の皆様に、今日は会えそうです。


ニューヨーク、メトロポリタン美術館での竹工芸展

ギメ東洋美術館、田辺竹雲斎さん「五大」


ずっと楽しみにしていた竹工芸展がニューヨークのメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)で開催されるのです。この美術館には30代の頃に2日間通った事がありますけんど、ちょっと行ったくらいではとても観きれないほど広大で所蔵品も凄すぎて声を失ってしまうほど世界中の様々なものが展示されていました。あの世界最高峰の美術館で日本の竹工芸が披露されるのですから一体どんな作品が観られるのか、まっこと(本当に)わくわくなのです。


しかも、今回は館内にフランス、ギメ東洋美術館でも「GODAI」なる荘厳な作品を創作された田辺竹雲斎さんが同じように虎竹を使ってインスタレーションを作られていると言います。これは、どうしても行かねばならない展示会なのです。


松本破風さんパンフレット


ずっと前から千葉の工房に行きたいと思っていた松本破風さんの個展の案内を頂いております。ちょうどメトロポリタン美術館から歩いてもすぐのippodo NewYorkさんにて今月30日まで開催されていて、来週13日(火)には飯塚万里さんとギャラリートークをされるそうなので、お話の方もまっこと(本当に)楽しみです。


飯塚万里さん、松本破風さん、竹虎四代目


松本破風さんは飯塚万里さんの父、人間国宝・飯塚小かん斎氏に師事しておられた竹芸家ぞね。竹林に生えている竹よりも竹らしさを感じられるような、たまらない作品をじっくり拝見できる良い機会と感謝しています。


空中散歩、日本唯一の虎竹の里より

虎竹の里の虎竹林


虎竹の里の山々や竹林はいつも見慣れている景色ではありますが、こうしてドローンで上空から撮影してもらうと又違って見えてきます。焼坂の裾野からずっと続いている竹林は山頂で途切れ向こうの山々には竹が見えません。四国遍路の途中で出会った方が、竹の多い山道なのに峠から先には竹が全く無いと不思議がっていた事をいつも思いだすのです。


虎竹の里


上空から見える長閑な景色は自分が小さい頃から変わりません。ずっと変わらずにいて欲しい、そんな願いで見渡すこの狭い谷間の竹にしか虎模様ができない神秘は人知を越えています。


それにしても、焼坂からの眺めは素晴らしいです。先人もきっとこの空を海を眺めて手を止めた事ですろう。そして、自分が思うように、須崎湾から土佐湾に続き、そして世界に繋がる海に開かれた安和の地から、この地にしか育たない竹を届けたいと思ったに違いありません。



竹虎のウェブサイトは世界10カ国の言語

竹虎四代目(山岸義浩)


もしもし、竹虎ブログは世界10カ国の言語に対応してるよ。
Hello, TAKETORA's blog corresponds to the language of the ten countries in the world.


対応しているとは言ってもGoogleの機能でテキスト部分が翻訳されるだけなのですが、これは結構便利なのです。海外のウェブサイトを見ていますと、たとえ正確な翻訳ではなくとも大まかな意味合いが分かるだけでも大いに助かる事がありました。日本の竹に関心のある海外の方がご覧になられた時により深く知っていただく契機になれば思います。
(※ちなみに画像で使っている虎竹電話は非買品)


竹虎四代目(山岸義浩)


急げ!竹虎のブログは世界10カ国の言語に対応したそうだ。
hurry up! It seems that TAKETORA's blog corresponds to the language of ten countries in the world.


前々から英語など数カ国語は翻訳できるようにしていましたが、もう少し言語を増やそうと思い英語、中国語、韓国語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ヒンディー語など日本を含めると世界11の言語で文章が読めるようにしたのです。


竹虎四代目(山岸義浩)


何度言ったら分かるんだ!?竹虎のブログは世界10カ国の言葉で読めると言ってるだろう。
How many times can you tell! Is it? You can read TAKETORA's blog in terms of the ten countries in the world.


それにしても、こんな画像どうしたのか?不思議に思われる方もいるかも知れませんにゃあ。しかも「24」のジャック・バウアーのパロディだと聞いたら、どうですろうか?呆れますにゃあ、ああ、恥ずかしい。


百年前、竹亀の法被姿は竹虎初代山岸宇三郎

虎竹の里海岸


もう100年も前の事になるのです。当時は曲がりくねった細い山道があるだけの遠い遠い南国土佐の小さな安和村までは、小舟でやって来るくらいしか交通手段のなかった時代の話です。


この地域特産の虎竹ばかり扱うようになって「竹虎」の屋号になったのは戦後の事、それまで大阪天王寺の竹材商、山岸竹材店は「竹亀」と言う屋号を使っていました。


虎竹の里


はじめて初代が降り立った浜辺であり、土佐藩政の時代には山内家への年貢として高知城下まで運ばれる竹材が積み込まれた場所でもある安和海岸。


竹虎四代目


だから小さい頃から遊び場にしてきたこの岸辺も、自分にとっては特別な場所。一人歩くと土佐湾に向かって見える景色は初代が見たものと何ら変わる事のない水平線。寄せては返す波音も昔と変わらず心地よく聞こえるのです。




青竹踏みの繊細さ

青竹踏み


青竹踏みほど手軽で簡単な健康器具はないと思うちょります。だから古来ずっと日本では愛用され続けてきたものであり、現代になって様々な商品がある中でも一際存在感を放ち続けているものだと思っています。テレビを見ながらや、電話をかけながら等、何をしつつ、フミフミとするだけで気持ちよく足の疲れが取れるのはお使いの皆様でしたら良くご存じの通りです。


だから、こんなに良いものだった大切な方にオススメしたい、贈りたいという気持ちが起こってくるのは自然なことぞね。実は青竹踏みを母の日や、父の日、または誕生日などに気軽なプレゼントされる方も多いのです。竹虎では、そんなギフトの方のために少しでもと考えて竹虎包装紙で包んでお届けするサービスをしていました。ところが、青竹踏みは文字どおり青々とした竹をそのまま活用した製品です。湯ぬき加工して余分な油を落としはしますが、自然素材に極めて近い竹製品であり、それゆえに自分達がそれぞれのご家庭にお届けしたいという気持ちで続けている志の一品でもあるのですが、


青竹踏み製造


天日に当てて十分に乾燥させてた竹材であっても、紙に包み箱に入れた状態ではカビが生えることがあるのです。特にこれからの湿気の多い季節では管理に大変です、もちろんカビが生えるのは竹の内側の身部分でありご使用には全く関係はないのですが、せっかくの青竹踏みが台無しです。そこで先日より包装紙での対応を取りやめる事にしています。天然竹材の取り扱いは、このように繊細かつデリケートなのです。


虎竹和紙団扇への道

丸竹うちわ


もういつの事か忘れるくらい前の事なのですが、この団扇を初めて見た時は一目惚れ。すぐ手にとって誰もいない薄暗く静かな店内でずっと持ち歩いていた覚えがあるがぜよ。ふっくらとした楕円形の形は一扇ぎで優しい風がフッと来るのですが何といっても持ち手の丸竹が素晴らしい。


昔は竹根部分を持ち手にした贅沢な団扇もありましたが、このような丸竹団扇は近年珍しかったのです。特にこれだけ太く持ちやすい女竹を使った団扇などそうそうあるものではありません。


黒竹団扇


そんな丸竹団扇への思いが募って、その後知り合いの団扇職人さんにお願いして女竹ではなくて黒竹で団扇を製作してもらっていました。和紙は虎竹の端材から土佐和紙職人さんに作ってもらった虎竹和紙、渋い団扇ができたと喜んでいたのですが、数年後には丸竹を骨にする為に細かく裂く工程で職人さんがいなくなり出来なくなります。黒竹は独特の粘りがあり熟練の職人でないと上手く裂くことができなかったのです。


虎竹和紙ウチワ


そうして、黒竹柄の団扇ができなくなってから今の団扇を作る事にしました。あの当時の団扇とは、丸竹か平竹かという竹骨はもちろんですが、虎竹繊維を粗めに残した竹和紙と柿渋仕上げが違います。


渋引された和紙は何と100年も耐久性があって、竹と同じように経年変色は素晴らしいのです。長く使うほどに味のでる所が気に入ってこの団扇を今年も製作いただきました。


日経MJに「注目の一品」として掲載いただいた竹炭敷きパッド

日経MJ掲載、竹炭敷きパッド


暑くなってきました、それもそのはず既に6月に入って今月はジメジメ、ムシムシの梅雨がやって来ます。さて、そうなると否が応でも思い出すのが少し前になりますが日経MJに「注目の一品」として一際大きな枠で掲載いただいた竹炭敷きパッドぜよ。


竹炭敷きパッド開発秘話


そもそもの作ろうと思ったキッカケが自分が「オヤジ臭い」「加齢臭」などと家族から言われるようになり消臭効果のある寝具を使いたいと思った事が始まりです。それでなくとも、汗や体臭が気になってくる季節でもあります、竹炭の消臭パワーは日頃から実感しているので、もしかしたら寝たきりの方など介護に携わる皆様のお役にも立てるのではないかと思いました。


竹炭敷きパッド


四大悪臭と言われるものにはアンモニア、イソ吉草酸、ノネナール、酢酸があります。竹炭にはこれらの物質を吸着する性質がありますが実は燃焼温度帯によってその性能に違いがあるのです。テストを繰り返した結果、400度の低温で焼かれた竹炭の樹脂綿が加齢臭の加齢臭の原因であるノネナールガスを86%も減少させていたの今回の竹炭敷きパッドには低温窯で焼かれた竹炭を長時間かけて微粉末にして使っています。


竹炭敷きパッド


試作段階からずっと愛用していますが、実は今年の3月にパリの展示会に参加させてもらった時にも一枚を持参してホテルで使っていました。もちろん消臭効果を期待しての事ではありますが、自分の場合は地元の山々で竹と向き合う竹炭職人さんの温もりまで伝わってくるような敷きパッドなので長い出張だと少し手放しにくいなあと思ったのです。


耐久性を高めた炭化加工の竹ぐい呑み

炭化加工の竹ぐい呑み


さて、そこで竹の器をできるだけ長く衛生的に使用したいという事で考えられた方法があります。この方法は、まず青竹を湯抜きと言われる熱湯の中に入れて竹の余分な油成分を取り除く事からはじまります。


竹ぐい呑み、盃製造


ウエスで拭き取った竹は青々とした一瞬の輝きを見せますが時間の経過と共にあれよあれよという間に落ちついた色合いに変わっていきます。このまま天日に晒していますと晒し竹(白竹)になるのですが、竹の器の場合には更にここから炭化加工をしていきます。


熱の高温の窯で蒸し焼き状態にした竹は焦げ茶色に変色して窯から出てきますが、こうする事によってカビを防ぎ、虫の喰いにくい耐久性の高い竹材ができるのです。


竹ぐい呑み、盃製造


炭化窯から出された竹はひとつひとつ職人の手により表皮を削られ竹ビアグラス、竹タンブラー、竹蕎麦猪口、竹ぐい呑み等それぞれの製品に加工されます。できあがった製品の竹表皮は、まるで何か透明の塗料でも塗ってあるかのように綺麗に磨かれていますがそれも、そのはずです。


元々これだけ厚みのあった竹が磨かれているうちに、このような薄さの竹器になるのです。ひとつの竹ぐい呑みにも職人の技がどれだれ注がれているのかを実感します。


青竹を水筒にできませんか?

青竹ぐい?み、酒器


この季節になると決まって何件かは竹の筒を活かした水筒や酒器、コップなど竹の容器についてのお問い合わせをいただく事があります。だんだんと暑くなってきて人の身体は自然と青竹の涼味を求めるのでしょうか?おそらく誰に教えてもらったでもない日本人のDNAに刷り込まれている深い部分で青竹の清々しさを知っているような気がしています。


青竹酒器、盃


竹には天然の抗菌性もあり容器としてはもってこいの素材のようにも思っていただいているかも知れません。しかし、伐ったばかりの竹をほんの数日の間に青竹酒器としたり、盃にしたりして楽しむには問題ありませんが青々とした竹の姿というのは本当に一時のもので切り口からすぐに色褪せてきます。


生鮮食品は常温で置いておくと傷んで食べられなくなるのと同じように青竹は鮮度が命であり切ったばかりの旬を目と舌で味わうものなのです。青竹をそのままにしておきますと色が悪くなるだけでなく、カビや割れなども発生してきます。竹筒に加工しても、そのままの状態では長くお使いただく事はできないものなのです。


青竹ぐい?み、酒器


青竹盃などは宴席が終わった後には、ご希望の方にお持ち帰りいただいている場合も多いのではないかと思いますが、青竹ならではのこのような特徴をもった竹器だからなのです。