倉富敏之先生の版画をはじめて目にしたのは、もう随分と前のことでずっと心のどこかに引っかかっていて時々思い出しては懐かしさにも似たような不思議な温もりを感じていたのです。
ある竹職人さんのご自宅をはじめてお伺いした時にも壁に掛けられている大きな版画に再会し、いよいよご縁のある版画だと思いながらも、なかなか倉富先生にお会いできるチャンスはありませんでした。
たまたま突然機会が訪れて福岡県久留米市にある先生の工房にお邪魔したときには、倉富ワールドの迫力に圧倒されて声が出なかったぜよ。しかし、初めて行ったはずなのに全く初めての気がしません。竹の版画に囲まれていると何とも心地よい空気感が漂っていて朝から晩まで一言も口もきかずとも飽きることがないようにさえ思えてきます。
「かごはごづくし百選」と名付けられた作品には竹冠のついた文字が並びます。竹虎では「籠」という漢字をよく使いますけんど籠にも「篭」をはじめ数種類の文字があり、それぞれ品物や職人にもよって使う漢字が違っていて面白いがです。
竹冠のつく漢字は常用漢字だけでも140もある事をご存じでしょうか?竹がどれくらい日本人の生活に密着し、愛されてきたかが分かるかと思います。倉富先生もきっと、その事を多くの方に知って欲しいとの気持ちからこのような作品が生まれたがですろう。
版画とはご存じのように木材等に彫った版を作り墨をひいて紙に表現しています。漢字の形も逆さに彫らねばなりませんが、仕上げられた作品しか拝見した事がなかったのに、こうして実際に原版に触れると改めて倉富先生の竹への情熱を感じることができます。
版画家 倉富敏之先生の作品
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