竹は古来、日本人の衣食住に深く関わってきましたので色々な所に竹が使われています。本日お話させてもらいたい竹は「衣」に関わる道具のひとつで竹筬(たけおさ)と言うものです。恐らく「筬」を「おさ」と読めない方も多いかと思いますが、当然の事かも知れません。ほとんど知られていない道具であり、竹が使われていると言ってもあまりに専門的にすぎて竹材を扱う方や竹職人の方でもほとんどの方は読み方はおろか、何なのかさえ分らないのではないですろうか。
自分も最初は何なのか?と思っていましたが実は竹筬は機織りをする際に使う道具のひとつなのです。簡単に言えば薄く剥いだ竹ヒゴを40数センチ幅の木枠にはめた物なのですが、この木枠にズラリとならぶ竹ヒゴの数は多いもので1400本と言いますのでかなり密に並んでいる事がお分かりいただけるかと思います。機織りの際には経糸(たていと)と緯糸(よこいと)がありますが、筬に細い経糸を通すことにより織物の密度を一定にし、また幅が決められるという事で無くてはならない大事な道具なのです。
今でも、その地方ならではの織物というのが残っていたりしますが、かっては機織りでの生産は全国各地で盛んに行われていました。岐阜県穗積町祖父江地区(現在の瑞穂市)には、何とこの竹筬組合があり竹筬に使われる筬羽製造が行われていました。長良川がすぐ横を流れるこの辺りは、歴史の好きな方でしたら良くご存じの太閤秀吉の出世物語に必ず登場する、あの有名な墨俣一夜城の舞台となった場所が近くにあります。
実は、そんな事もあってそれまでも何度か訪れた事がある地域です。ちなみに、墨俣には当時の砦とは違い天守を備えた墨俣一夜城(歴史資料館)が建てられています。そこに秀吉の馬印である千成瓢箪が展示されていましたが、そこに虎竹が使われいて嬉しく思ったことがあるのです。
地元の方に聞くと、竹筬製造が盛んな頃には伐り出して運ばれてきた大量の竹材が、この長良川の土手に所狭しと並べられ乾燥させていたともお聞きしています。さて、そんな竹筬の歴史を、ちっくと(少し)紐解いていくと、日本の竹産業が直面している同じ問題が見えてきますぞね。
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