物置の棚の上に古い竹の帽子がひとつ、ホコリをかぶり置かれていました。見覚えのある竹編みのベースボールキャップは母のものです。考えたら竹編みは通気性は抜群、薄く剥いだ竹ヒゴを使っているので軽く、若干のしなりもあって被りやすい帽子として当時は大変な人気の商品だったことを覚えています。
懐かしくなって少し被ってみました。麦ワラ帽子のような形の凝った竹帽子でしたらその当時もあったようですが、素材が竹でありながら野球帽のような形にしたというデザインが斬新で多くの方に支持された理由でしょうか。サンバイザーのような形の物もあって、価格も手ごろだったと思いますが毎日気軽に使える生活用品のひとつとして定着していたように思います。
竹虎では、母だけでなく、父も祖父も祖母も使っていました。確か九州の製造メーカーさんだったと思います、そこから届けてもらった竹キャップは竹虎の店舗に沢山並んでいて家族が使うものですから自然と近所だけでなく社員にも広まったようで、この帽子姿で働く職人さんを工場では良く見かけたものでした。
若かりし母がかぶっていた頃には竹は白く太陽の光に輝いていましたが、長い年月ですっかり落ちついた良い色合いになっています。ふと見るとツバの裏側にマジックの手書きで「竹虎マーク」が書かれているではないですか!
土佐市蓮池から虎竹の里に嫁いで来た母。竹の事など全く知らなかったのが竹虎に来て虎竹と出会い、竹と共に歩むことになります。どんな思いでこの拙い手書きマークを描いたのか、しばし自分の知らない遠い昔を思うのです。
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