青物細工は毎日の生活の中でずっと使われ来た、日本人には一番馴染みのある竹細工のひとつです。道具としての機能性を最も求められる竹細工ですので、長い竹の歴史の中で鍛えられ、無駄は削ぎ落とされ、究極の竹製品となっている愛しい籠達は本当に素晴らしい表情をしています。
そんな青物の達人と言われた佐藤千明さんという竹職人さんがおられたのですが、昨年ひょんな事から40数年前からそこにあって、今では棚の上で忘れられたように鎮座してあったと言う佐藤さん作の籠と出会いました。ホコリをかぶり、底には虫の食った粉が沢山ありましたが注意して掃除をしてみますと中に入れてあった他の竹笊の粉だった事が分かり安堵したものです。
この竹籠の特徴は何といっても底にあります、足部分が膨らみ、尖り、四つのツメのように立ち上がっています。内側から竹表皮を残した底部分を手でなぞってみます、通気という機能性もさる事ながら四ツ目底の湾曲さのダイナミックさが圧巻、柔と剛のまさに竹の生命力が伝わってきます。
磨きの竹細工は時間の経過と共に色合いが深みを増してきます、飴色に変化した竹肌がこの籠の魅力を更に際立たせているのです。籠全体の丸みを帯びた雰囲気と相まみえて用の美の極致、いつまで見ていても飽きない温もりと味わいを感じる美しい竹籠です。
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