実家の台所はとにかく竹製品であふれていました。お箸や箸置き、おしぼり入れ等は言うに及ばず、調理道具から器から、お盆や食卓にある調味料入れ、楊枝入れ、とにかく何でも竹ばかり。どうしてこんなに竹が多いのかと不思議に思った事がありますが、昔はありとあらゆるものが竹で製造されていたのです。そしてこれには、自分の幼い頃には虎竹の里は今とは比べられないほどの交通不便な場所だった事と関係があります。
車の行き違いも心許ないような曲がりくねった細い山道を、大きな乗用車でやって来られるのは虎竹を求めて遠くから来られるお得意様。立派な背広姿の方々を見るたびに、いつも田舎では食べられないような美味しいお土産を沢山いただくのでワクワクしていた覚えがあります。
周りに宿泊できるホテルなどない当時、やって来られる皆様は仕事を終えると決まって当家で宿泊されるのが常でした。そのため、お客様をお迎えする二階は旅館風な設えになっていて、そこでおもてなしをする食事の際に使われるのは全て竹製の食器類だったのです。
家庭用品として製造されたものですので大量生産されたものや、安価な物も多かったと思うのですが、そのひとつ、ひとつを今見ると本当に良く出来た竹細工ばかり、その出来映えに驚くほかないのです。
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