長野県松本市といえば日本最古の天守で有名な松本城ですが、そこから徒歩でもそれほど遠くない所に残る明治時代初期の洋風校舎、旧開智学校があるのです。モダンな校舎は被写体としても、こじゃんと人気のようで観光で来られた沢山の方が写真を撮られよりましたので関心のある方は是非インターネットで検索されて、ご覧になられると良いかと思いますぞね。けんど、自分が前々からずっと見たいと思っていたのは、この美しい校舎のたたずまいではないのです。
実は、この校舎の中にスズ竹という竹を使い、しっかりと編み込まれた床があるのです。床と言うと少し語弊がありそうで、板張りの床の上に敷かれた敷物の方が正確な表現かも知れません。
しかし、これは単なる敷物ではなく床一面を熟練の職人が編み込んだ、まさに竹編みの床。今回は嬉しい事に、たまたま当時の写真を拝見させていただく機会もあり、施行当時の様子がよく分かります。全ての教室がこのように竹編みされているワケではありませんが生徒さんが一同に会したであろう広い部屋一面にも圧巻の細工が施されていて感動するのです。
スズ竹は東北はじめ寒い地方に育つボールペンほどの細さの竹で、竹と名前が付いていますが分類すれば笹の仲間になります。厳しい自然の中で鍛えられているせいか強く、粘り、しなりがある素晴らしい竹素材であり、特に日常使いでの性能が重んじられた当時は人々の生活になくてはならない存在やったと思います。
行李と言うても今の若い方は知らない人がおられますが、プラスチック素材などが普及するまでは物流には、この行李が活躍しちょりました。ヤナギ製の行李なども多用されていましたが、スズ竹の製造も行李などが中心だったと聞きます。材料のスズ竹が高く積み上げられていますが、これだけの製品を製造するには、さぞ大量の材料が必要だったと考えられます。まっこと、想像するだけてワクワクしてきますぞね。
松本ではスズ竹の細工の事を「みすず細工」と言います。不思議に思っていましたが信州には「美須々(みすず)」という地名の他、みすずと名前の付く物が多々あるようです。これは、それだけ信州一帯の広い地域でスズ竹が大事な産品だった証であると思います。
そんな伝統のせいですうろか?籠やザルなどの生活用品を取っても技巧に優れた興味深いものが多く残されています。今でも十分使えそうなモダンな雰囲気のボストンバックや、実用性と共に装飾性の強い細工など目を見張るような製品が作られていたのです。そして、そんな地域特有の竹文化が生み出したのが竹編みのフローリングだったのかも知れません。
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