これは随分と古い竹製品が出てきたものですぜよ。片目は無くなっていますし、まわしも綱も色褪せ形も崩れちょります。恐らく初めてご覧になる方も多いかと思いますが、かっては、このような竹人形が竹虎の店頭にズラリと並んでいた時代もあるがです。作られちょったのは40年...いやいや50年も前の事やろうか。陳列されていたのは竹虎だけではありません、観光施設やお土産物販売所、レストランなどでも販売されたり、又この竹人形に「いらっしゃいませ」などの文字プレートを付けて飾って店頭に置かれちゅう所もあったりしましたぞね。
けんど、これは立派な図面竹が使われています。図面竹は京都で職人さんによって孟宗竹に模様を色付けされた竹ですが、この竹の風合いを活かして高知の逞しい土佐犬をイメージして製造されていたのです。太い竹を使っていますので高さも50センチほどはあるでしょうか、当時はこのような大きさの竹製品であっても流通していた事を思えば、ゆるやかな川の流れのように変化の少ない竹業界であっても住環境の変化や時代の移ろいにより竹の商材もどんどん変わってきていることが分かるのです。
それにしても懐かしい。すっかり忘れかけていましたが、この竹人形を見ていたら幼い頃に周りに埋もれるくらい沢山あった竹の事をひとつ、ひとつ思い出してきましたぜよ。あんな物もあった、こんな物もあった、ああ、そうやった...。思えば思うほど当時の竹が、どれだけ豊かで、いかに生活の中に竹があふれて様々に役立っていたのかを改めて感じるのです。
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