竹筬(たけおさ)の復活

竹筬(たけおさ)


古来、竹は日本人の生活、文化に深くとけ込んで衣・食・住の全てに竹があると言うのが当たり前やったのです。近年、どんどん新しい素材への移行があり竹が使われなくなっているのはご存じの通りですが、多くの方に使ってもらい認知されていた物で消えて行く竹細工がある一方で、一般の方の目には触れることなく、その存在すら知られる事なく忘れ去られていく「竹」もありますぞね。手元の資料に紛れ込んでいた長さ8センチ、幅5ミリほどの竹製のヒゴなども、そんな製品の一つですろう。


竹筬


この短い竹ヒゴは竹筬(たけおさ)と言う道具に使われる一部ぜよ。そもそも竹筬を「たけおさ」と読む事すらままなりませんが、一体に何に使う物かと言う織物の織機の一部として使われるパーツなのです。竹ヒゴがズラリと並んでいますが、この竹の間を糸が一本一本通り織物になっていきます。なので経糸の密度を一定にする、織物の幅を決める等織物には無くてはならない道具との事でした。


竹筬製造


明治初期の頃、織物の産地として知られちょったのは関東の足利、福井、久留米、愛媛などと聞きます。そのような織物の産地には、当然この大切な道具である竹筬を製造される職人さんもいたようですし、また現在この竹筬を復活させようとされている岐阜県祖父江地区でも大量に製造されていたものが衰退した原因は金筬と言われる金属製の製品ができてからのようです。


しかし、竹筬を使った事もありませんが織物の糸がその細い間を通り抜けて一枚の織物になるのであれば、金属製の物と竹製の物と比べるならば明らかに織りあがりに違いがあるだろうと容易に想像ができるがです。竹筬の良さは、自然素材での扱いやすさ、筬羽に竹の弾力があり歪みに強い、経糸の摩擦に優しさだと言います。


竹筬素材


短い竹ヒゴ状のものの事を筬羽と呼ばれちょりましたが、この筬羽作りには、原料の竹材を簾にして乾燥される竹編み、竹割、荒引き、幅を揃える幅取り、二番引き、皮取り、上引き、羽揃え、羽切り、傍(わき)仕上げ、焼き入れ、縁仕上げ、面取り、筬編み、仕上げと様々な行程があります。一枚の筬羽を触ってみても、手触りもなめらかで本当に丁寧に作られている事が伝わるがです。この竹がズラリと並んで、その間を絹糸が通ると思えば、竹筬ならではの織物もあるのではないかと思うたりましすぜよ。


竹筬作業場


それにしても一度は無くなってしまった伝統の技術を研究会を立ち上げて復活させた皆様の努力には頭が下がります。関係者の方や文献資料が残されたいた事もあるようですが、技を継承していく事は並大抵の事ではなかったはずですぞね。定期的に技術研修などされているようですが、若い方が参加されていたり多くの方が真剣に取り組まれる姿に感動した事を思い出しましたぞね。


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