直径が太く、高さも25メートルを超えるような大きな孟宗竹(もうそうだけ)は日本にある竹の中でも最大級のものですが、実は古くから日本にあった在来種ではありません。中国から海を渡ってきて、その大きさから珍重され全国各地に広がっていったものながです。虎竹以外の竹は見あたらない虎竹の里にさえ、何カ所かその竹林がありますので、どれだけ重宝されてきたのかが分かるというものなのですが、そんな孟宗竹も地表から上の目に見えている稈(かん)の部分の活用だけでなく、実は地下に隠れている竹根の部分の製品活用というのも当時からずっとされて来ているのです。
竹は土中の根の部分に細い根が無数に生えています。その細い竹根を切り取ると独特の模様の現れる素材になりますので、この面白い形をつかった花器などが昔は沢山製造されていて竹虎の本店にもガラスケースの中にズラリ並んでいました。最近はあまり見かける事もありませんが竹根部分の細い根をヒゲに見立てて人の顔を彫刻した装飾品が思いだされますぜよ。海外でも見かける事がありますので、あれは日本の職人さんのものだったのか?中国や台湾の職人さんのものだったのか?いずれにせよ、国内外の職人さんが趣向を凝らした竹細工があったのです。
さて、そこで、この金属製のヘラ状の道具ながです。一体何をする道具なのかと思いよりましたら、実はこの太い孟宗竹の竹根を切り取る道具でしたぞね。木製の長い柄の付いた道具は拝見したことがありましたけんど、こんなコンパクトなサイズのものは初めて見せてもらってのです。
工房に立てかけられたズングリと太い孟宗竹、そして、外に目をやりますと長いままの竹が山積みされちょります。こんな大きな竹達の根を、この片手でしか持てないような小さい道具で切っていくとは...。しかも、この職人さんが一日に掘り出す竹根の数は信じられないような本数やったです。何十年もやって来られた仕事とは言うても、まっこと職人さんの大変さと、凄さを思うのです。
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