塩月寿籃さんは祖父の頃からのお付き合いのある作家の方で、渡辺竹清先生と同様にずっと懇意にしていただきゆう竹人のお一人なのです。最近はモノ作りはされちょりませんが、大好きな作品がいつも手元にあるせいか、自分の中では工房で竹と向き合う姿、そのままながです。
特徴的なのは漆使いぜよ。いつまで見ても飽きないような漆の使い方と、塗りの美しさは、しばらく出張など会社を留守にしていて見る事が出来ないと恋しくなってくる事があるほどながです。
天才的な編み込みと、漆と何とも引き込まれるような魅力のある作品達ですが、一番自分の思い入れがあるのは、やはり使われている竹なのです。実は寿籃さんの作品に使われた虎竹は全て祖父である竹虎二代目が自分で厳選した竹ばかり。
「虎竹が全部こんなに綺麗や思うとったら、あきませんで...」
祖父が言うていたそうです、つまり二代目好みの竹で編まれた籠達ながです。
毎日のように見ている虎竹も全て人の力の及ばない、この虎竹の里の自然が生み出しす模様であり一本として同じものがないがですが、寿籃さんの作品を眺めていると祖父好みの竹が見えてきますぞね。
日本唯一の虎竹の里には山出しの機械が通れるだけの細い山道が頂上に向かって何本も伸びちょります。今年のシーズンは終わっていますが、静かな竹林に立って耳を澄まします。
虎竹とは何やろうか?虎模様の入った竹のこと...。
それは虎竹の、ほんの一部分を言い表したに過ぎません。土佐藩山内家に年貢として献上されていた虎竹の里、そして竹虎初代宇三郎が初めてやってきた100年前から始まる竹虎の歴史。代々続く山の仕事を支えるこの山道さえも、父が登り、祖父が登り、曾祖父が通った道。虎竹とは、この全てを言うがぜよ。
傍らに立つ美しい虎模様の竹に手をやれば、今にも竹を伐り倒す音や、山出しの機械のエンジン音が谷間に響いてきそうながです。
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