初めて訪れる国立ギメ東洋美術館(Musee Guimet)でしたけんど正面入り口に大きく掲げられた看板が見えます。「Shouchiku Tanabe」虎竹の編み込み、日本中どこで見かけても虎竹の里の竹と嬉しくなる虎模様は世界に来ても同じ事ぜよ。パリであろうと、何処であろうと自分達の虎竹なのです。
見上げていると玄関からフィリップ(Philippe)さん、武信さんが出てこられました。自分は初めてお目に掛かりますが今回の企画の担当をされ、田辺さんも大変お世話になっている方々との事でこのような大きな取り組みでは実に様々な皆様のお力添えがある事を感じます。
オープニグセレモニーには招待客の皆様でしょうか、沢山の方が列を作り入場をお待ちになられています。横から見ちょりましたが、さすがに美術館の招待で来られる皆様です元々パリのお洒落の雰囲気の方が多いのですが、中でも俳優かミュージシャンかと思うような出で立ちの方がチラホラ見えよります。
そして、どちら様もこれから観ることのできる作品への期待に、ちっくと興奮気味の様子ぜよ。自分も意識しちょりませんでしたがホクホクしていたに違いありません。コートやダウンを羽織るような気温の中、寒さが苦手なのに全く感じなかったのです。
田辺小竹さんの竹を使ったインスタレーションは「五大」は最上階のドーム型になった素晴らしいロケーションの中に創られちょります。細い階段をあがると目に飛び込んでくる竹編みの心を鷲掴みされるような気持ちにぞね。
沢山の招待客の皆様も自分と同じように思われている方も多いのではないですろうか?丸いドームの壁際に立って、まずその全体の大きさ、空間いっぱいに充満している特別な「気」を感じます。
以前の岐阜美術館のインスタレーションでも作者の田辺さん自ら靴を脱ぎ竹編みの部分に上がってもらう事をされていましたが、今回もお客様は喜ん素足になり竹の感触を楽しまれちょります。日本でも、このような経験はあまり出来ないことですのでフランスの皆様は恐らく初めての感触ではなかったかと思うのです。
ドーム横には小部屋があって、そこには用意されたモニターに田辺さんの工房での様子、そして虎竹の里の竹林の景色など、写真家ミナモトタダユキさんによる美しい映像が流されれています。撮影に来られた時に少しだけ拝見した事がありますが、幻想的な竹林を改めて魅入ってしもたぜよ。
まるで太古の昔からここにあって、太い樹木かツタの幹が絡み合うかのように伸びていく虎竹たち。
離れていると分かりづらい竹編みですが、神秘的にも感じられる微妙な作品の風合いは、その一本、一本の虎竹の竹ヒゴの自然な虎模様から生まれちゅうように思います。一本として同じ模様のない虎竹を、更に古い竹から新しい竹まで様々な風合いの竹が混在し組み合わせられることによって何とも言えない深みが表現されちゅうのではないですろうか?
作品を拝見していると熱いものが込み上げてくる。自分ではどうしようもない感情が沸き上がる。虎竹達が堂々と胸を張ってるように思えてならない、格好がエイぜよ。こんな思いになれるのなら、パリでも何処でも距離や時間は関係ない。
きっと100年前、大阪天王寺の工場を後にして虎竹の里を目指し船に乗り込んだ竹虎初代宇三郎もこんな気持ちやったろう。竹が無いなら生きている意味はない、いつ死んでもかまわない。
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