今年に入ってから、どういう訳は分かりませんけんど海外から来られる方が多くなっちょります。一昨日はシンガポールから見学にお越しになられた方々がおられましたぜよ。本店や工場、そして日本唯一の虎竹の竹林などご覧いただきましたけんど同じ東南アジアの方なら、竹などそんなに珍しくないのではないろうか?と心配しよりましたが、竹細工などを本当に喜んで手に取っていただき嬉しく思うたのです。
考えてみたら日本でも、これだけ竹が沢山あって海外の方からすると「日本=竹」というイメージを持たれているのにも関わらず実際は竹林などには足を踏み入れた事もないという方がほとんどなので、竹文化圏のお客様と言うても竹に日頃触れ合われている方は自分が思うよりも、ずっと少ないのかも知れませんにゃあ。
さて、そのシンガポールからのご一行様の中に、最初からずっと気になる方がお一人おられました。一番ご年配で貫禄のある方でしたのでリーダー格の方に違いないと思いよりましたが周りの方の気遣いなど見ていると、どうやら間違いないようです。名刺には「Dr.」と書かれちょりますので何かの博士ですろうか。けんど博士には、あまり似つかわしくない普通のズボンに上着だけ作務衣を着用されちょります。恐らく日本に来られてから何処かで手に入れられて羽織られている感じでしたが、その作務衣がどうも自分が30年近く愛用していて、今日も着ている笹倉玄照堂さんのもののように思えて仕方ないのです。正面から見てハッと思いましたが、後ろ姿の肩のステッチを見て確信しました。そこで思い切って作務衣の事を聞いてみる事にしたがです。
「ステキな作務衣ですね、お好きながですか?」
そして、背中裏側についたタグを拝見させていただくようお願いしました。快くご了承いただけたので、襟首をつまんで見てみると...
「笹倉玄照堂!!!」
見事に見慣れたブランド名がありましたぜよ!しかも、驚いた事に白文字ではないですか!?実は、現在のタグは全て赤文字になっていますが、かっての笹倉玄照堂は白文字でした。いつの頃に文字色が切り替わったか定かではありませんが自分も20着持っている中で白文字は4着しかないので時代としては、かなり古いモノのはずぞね。
むむむ、、、古い時代の作務衣を何故シンガポールの方が!?
不思議に思いよりましたが謎はすぐに解けました。案内をされている日本の方が、珍しいものを見て頂こうと骨董品屋さんにお連れしたそうなのです。そして、そこで日本的な上着という事で目にとまり購入されたとの事でした。
なるほど、デッドストック。それで新品のような生地やったのか...。
その作務衣の生地はメーカーさんに何度も問い合わせしたものの今では生産できない自分の大好きな厚手の生地でした。形自体は笹倉玄照堂なのに生地に違和感があって、ちっくと迷ったのもこのせいやったのです。
それにしても、体格の良い海外の方にピッタリの上着がよくあったものちや。もしかしたら、あまりに大きなサイズなので着られる事なく今まであったのかも知れませんにゃあ。まっこと、ご縁で遠く海外に行くことになった笹倉玄照堂ですが、この方とは、言葉は分からないのに作務衣で意気投合しましたきに必ずどこかで又作務衣姿でお会いできると思うちゅうのです。
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