最後に、もう一度だけ竹林をご案内させていただく事にしたがです。今度は竹を伐り出した場所とは別の違う谷間で車を降りて、やはり細く急な山道を登っていただきます。ご存じない方が来られたら、獣道に少し毛が生えた程度の何でもないような道に見えるかも知れませんがこの道を曾じいさんが100年前に登り、祖父も父も通った竹虎の歴史の詰まった竹の道だと思うから、自分にとっては唯一無二のかけがけのない心の拠り所の道ながぜよ。誰に教わったワケでもなく、仕事を手伝って来た事があるというワケでもなく高校の時に進路に困って行きついたのもここやったのです。
そんな竹林にヒロタリアンさんと一緒に立って思うがです。耕運機を入れた納屋に仕事場のスペースを作って仕事をしてくれよります内職さん編まれる竹も、この山々から運び出された虎竹。
竹虎の工場で意外に手のかかる細工に驚かれていたのも同じ虎竹。
山で伐採し、選別され、油抜きされた竹が様々な形に変わってく工程をご覧いただけて本当に良かったと思うちょります。クラウドファンディングなどという新しい手法を何も考えずに挑戦してしまって最初はどうしようかと思いよりましたが、ひとまずボーダーラインを越える事ができて成功させていただき、そして、そのお陰で又新しい試みができているのです。
「ガタガタガタ......」
麓の方からエンジン音が聞こえてきましたぞね。山の職人さんが、山出しに使う機械と一緒に山道を登って来ているのです。自分達の所まで上がってきてスイッチを切ります。その途端に、虎竹の里の竹林は静寂を取り戻します。耳を澄ませば、微かに揺れる竹葉の音と、近くを流れるせせらぎと、小鳥の声だけぞね。
「こんな模様が入るのが虎竹という竹よ。」
山の職人さんは、県外からのお客様を連れていると聞いて竹の説明をしてくれます。最近は温暖化で虎竹の色付きが、あまり芳しくないがです、本当に困った事だと言いながら、その言葉の節々には、この地の竹への愛情と誇りを感じてしまうがぜよ。
ヒロタリアンさんも、きっとその事をお分かり頂いていたのだと思います。ベタベタの土佐弁で、もしかしたら何を言っているのか分からない言葉もあったかも知れませんが、ずっとずっと職人さんの話しに聞きいっちょったのです。
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