日本唯一の虎竹の山々で自然な竹を見た後に竹虎の工場にある虎竹を見ると、その色合いの違いに同じ竹とは思えないと感じられる方がほとんどかも知れません。虎竹は淡竹(はちく)の仲間で竹表皮にはうっすらと靄がかかったような竹肌が特徴です。その竹をガスバーナーの高温の炎で熱を加えると竹の油分が切り口から吹き出すくらい出てくるのです。その油分をウエスで拭いて美しい竹の色合いを出してくる作業を虎竹の油抜き加工といいますけんど、ここに沢山置かれちゅう竹はすべてこの加工を済ませた竹ながぜよ。竹林に自然に立っている竹とは、また全く別モノの竹に成っているのです。
ここはトラックで運ばれてきた虎竹を、それぞれの部材に切断する作業場。ヒロタリアンさんが、山でご覧になられた自然の色合いの原竹が沢山集められる場所でもあるがです。
「あれあれ、これが日本唯一の虎竹自動車か...」
ちょうど近くに置いてあった自動車の本体にヒロタリアンさんが近よりますぞね。大きなご支援をいただいたお陰でスタートする事ができたプロジェクトです。光岡自動車さんのLike-T3に決めたのは電気自動車で二人乗りの車はこれしかなかったからですが、お伺いさせて頂いた富山の本社工場では、モノ作りに対する真摯な姿勢に感激しました。その車はカバーを外して裸の状態にしたまま、これからどうするか考えている途中やったのです。
「この車をどんなにするつもりなのですか?」
ヒロタリアンが聞かれます。今回のプロジェクトでは、「何故、竹の車なのか?」と言うことが大きなテーマだと思うちょります。これは、そもそも竹とは何か?という事にも繋がるがですが竹は草でも木でもなく、竹は竹ぜよ。当たり前の事のようですけんど竹特有のしなやかと、硬さという両極端な二つの性質を併せ持つ特殊な存在です。
軽く、丈夫、身近にあって加工しやすい竹と日本人は数千年の付き合いがあると言われます。青森県三内丸山遺跡から編み込みバックが出土したのは有名な話しです。ビックリしますが縄文時代前期5500年前のものらしいです、竹ではなく木の皮を編み込んでいますが現在の竹編みと何ら変わらない編み目を考えると、加工性の高い竹も当時から日本では広く活用されちょった事ですろう。
そんな特性と、歴史のある竹が今の日本では無くなりつつある。日本人の心から忘れられつつあるのです。かっては台所をはじめとして家の中も、外も竹がありとあらゆる所で活躍しちょました。だから、竹のつく常用漢字は140もあるがですが、今の生活の中では竹は活かされず、これだけ人々の生活を助け、役立ってきた無くてはならない存在やったのに竹林は荒れて、まるで悪者のように言われる事すらあるがぜよ。
これを何とかしたいがです。意識をかえたい。問題として考えてもらいたい。そのための自動車ながぜよ。竹虎は、こんな不便な田舎にあって誰も来てもらえませんけんど車やったら、動きますので自分の方から人の中へ乗っていけますろう!
ところが、こんな思いを具現化するのが一番大変なところながです。工場長の専務をはじめ、竹虎の職人が頭を悩ましよりますぞね。
ヒロタリアンさんにはクラウドファンディングでは、こじゃんと助けていただきましたが、実際にお会いさせて頂いてからも、ずっと無言の応援いただいているような気分ぜよ。心が温かくなるような優しい笑顔は、「大丈夫、大丈夫」言うてグイグイと背中を押していただきゆうに思えるがです。
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