変わる竹、変えない竹

竹職人


若き日の職人さんのお写真を拝見する機会がありましたぜよ。自信に満ち溢れた表情、竹がまだまだ人々の暮らしに普通にあった頃、竹を扱う仕事は周りにいくらでも沢山あり、そんな当たり前の中でバリバリと仕事をされていた頃だと聞きますが、その様子が伝わってくる一枚です。


当時は一つの竹製品を編み上げるまでに、竹ヒゴを取る方、下編みをする方、仕上げの方等それぞれ4人ほどの職人が役割分担をして流れ作業のような形で仕事されよりました。品質は当然なのですが、とにかくスピードを一番大事にされていたと言います。


生産の早さにこだわっておられたのは、それだけ注文が多かったからですろう。同じ編み方、同じ形の竹細工を毎日のように繰り返していく内に技は磨かれ、自ずと熟練度は増していったそうぞね。お客様を待たせる事はモノ作りの自分達としては恥と感じ、工房の中で他の職人たちより、朝は少しでも早く作りはじめ毎晩遅くまで競い合うように製作されていたと昔を懐かしんで話してくれるがです。


竹照明早見表


一心不乱に集中して製作されているのは照明の笠ぞね、今では竹編みの照明などはホテルや旅館、あるいは飲食店など少しこだわりを感じるような場所でしか見られなくなくっちょりますが自分の子供の頃は一般のご家庭でも普通に使われよったように思います。そんな証が職人さんの仕事場に残っているのを見つけましたちや。竹照明器具の型、品番を手書きで早見表にされちょります、こんなに多種多様な竹製品が定番として作られていたことに改めて驚くと共に、今では全てが廃盤となり一つとして作られていない事に複雑な思いが交錯するがです。


これは、何も竹照明だけではありません。作っても、作ってても竹籠が沢山売れるので「誰が籠を食べているのか?」そんな冗談を職人さんが言うて笑っていた時代が確かにありました。ここ数十年の竹を取り巻く環境は大きく変わってきましたが、きっとこれからも変わり続けていくがですろう。変わる事、変えない事が竹に求められちゅうがです。


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