30年間に渡ってKazuyo Nakano New Yorkのブランドを掲げてアメリカのバック業界で活躍を続けられている中野和代先生は、ニューヨーカーをご覧になられた最初から、この構造の素晴らしさをずっと言われていました。そして、この造形をもっと際立たせるように違う素材感で同じ形を作る事によって、竹が更に引き立つのと同時に又違うアプローチが出来ると教えていただいちょりました。
けんど、新素材とは何やろうか?ヒントは、何度も話しに出てくる、ひとつの眼鏡メーカーでした。ニューヨークに店舗があると聞きましたので最初はピンと来ませんでしたが、実は自分も近年ずっと愛用しちょってついつい欲しくなり5本も持っている福井県は鯖江市のメーカーさんと知って驚きます。ニューヨークでお会いさせて頂いた翌月、来日された中野先生は虎竹の里にやって来られるのです。
今の虎竹バックも良いのだけれど、それを多くの方にご覧いただくには何かの工夫が必要とは自分もずっと考えちょりました。この竹バックの面白さは、戦後の竹産業の歩みにも触れていただく事ができ「古い=遅れている」という既成概念を打ち破り、もしかしたら新しい竹の世界が広がるツールとなりえる事ですろう。そうならなければ、せっかくの竹バック復刻の意味はないと感じちょったのです。
鯖江には運良く知った会社様があり、社長様のご尽力でセルフレーム素材のセルロースアセテートの原板を拝見させていただく事ができました。いつもメガネになって店頭に並んでいる素材は磨かれ最高に美しい状態ぞね、そんな素材感と一枚の大きなコンパネのような板とはあまりに違いに驚きましたけんど、まずひとつ試作してみるという事で細かな仕上げ加工を何もしていないアセテート素材のニューヨーカーが出来上がったがです。
アセテート素材はメガネの素材ですので、小さなサイズで使われる事ばかりで小振りであっても今回のようなバックのサイズ感では加工機械も無いという状態です。竹と同じ厚み、幅のフレームでは強度的にモノ足りない感じで、改めて竹という自然素材の強さ、柔軟性の素晴らしさを思う事にもなりました。
磨き上げて美しい色合いになったアセテート素材を留めるには使用する紐も大事になってきます。ファッションの世界でモノ作りをされてこられた中野先生です、この辺りにも妥協はありませんでした。ご紹介頂いた紐メーカーさんでイメージにあった細くとも強度の強い糸を探し当てるがです。
出来上がったアセテートニューヨーカーを見ると、この色合いを同色にして控えめになった糸がフレームラインの輪郭をクッキリと強調させてくれているのが良く分かりますぜよ、まっこと流石なのです。
竹の事なら多少は分かるつもりでおりますが、自分が今まで知らなかった異業種の皆様の多大なご理解とご協力があって今回の新バック作りがひとつひとつ進んできたのです。まだまだモノ作りが終わったワケではありません、これから更に手作りを考え、新しく取り組んでいくつもりながですが、今回の製作を通じても竹細工の世界同様に日本の作り手の問題は業種を越えて横たわる大きな課題だと痛感しちゅうがです。
さて、そう言うたら昨年の展示会場には、こちらでお仕事をされていたフジテレビの阿部知代アナウンサーもお越しになられちょりました。バッチリと決まったお着物姿、髪形も素晴らしいちや!まっこと、ここがニューヨークというのを忘れてしまいそうな程やったです。けんど、このような美しい和装の女性にも、そして今風な流行の洋服であっても似合うような新しいニューヨーカーにしたいのです。それが、いよいよ誕生間近、中野和代先生の熱意が最大の推進力となって、ようやく一つの形になろうとしちょります。
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