いよいよ、蘆花浅水荘の竹の間に入る事になったがです。この部屋は竹と名前が付くだけの事はあって、まっこと竹づくしなのです。ありとあらゆる所に竹が配置されていて見ていて飽きることがありません。特に変竹と呼ばれる竹が床の間にも配置されちょって、自然に曲がりくねった面白味のある捻れが独特の空間を創造しています。
竹の間の見せ場のひとつの丸窓もしかり、あまり見かけることのない竹が装飾と使われています。
障子を閉めると満月にススキがゆれているような風情、なんとも粋な創りになっちゃあるのです。
山元春拳氏は、よほど竹に思い入れがあり好きだったと見えます。そして、普通のものでは満足できず、竹にも芸術家らしい自然の意匠を求められていたような気がします。
襖絵にも竹ですし網代編みされた竹を張り付けた引き戸には、極端に楕円形に押しつぶれたような竹節を活かしています。
引き戸の取手には、他にもこのように細部まで神経の行き届いたデザインの凝ったものがあり楽しくなってきますぞね。
ここに使われちゅうのは、しぼ竹ですろうか。シワが付いたように見える竹肌は自然が産んだ偶然の産物ぜよ。幻の竹とも言われる事があるようですけんど、このような珍しい竹が、まっこと好きな主やったようですちや。
この部屋を照らす照明も当然ながら竹製ですぜよ。竹ヒゴを細く取って編み込んだ竹細工ではなく、あえて、丸竹を使うた灯りがこの部屋には似合うちょります。この部屋の主役は竹ながです。あくまでも竹職人ではありません。竹そのものを愛し、竹そのものに価値を見いだした山元春拳画伯が偲ばれます。
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