山元春拳旧邸「蘆花浅水荘」

山元春拳旧邸「蘆花浅水荘」


高名な画家山元春拳氏が、ご自身の生誕地に近い膳所に別荘として建てた、蘆花浅水荘(ろかせんすいそう)のお話しを伺ったのは、それほど前の事ではないのです。美術にはとんと疎いもので、この画家の方の事も知らんかったのですが、後にはこの芸術家の創作の場となった建物に興味を持ったのは、平成6年には国の重要文化財に指定される程の素晴らしい、数寄屋造りを基調とした建物の中に「竹の間」と呼ばれる竹づくの部屋を拝見し、たからなのです。


竹


蘆花浅水荘には円融山記恩寺が開山されちょりますので、訪ねられる場合には、どちから迷う事もあるかも知れませんが、大津からも近い琵琶湖湖畔に静かに建っています。けんど、ここも入り口の門から凄いがぞね。自分が、ついつい目を奪われてしまうのは桧皮の重厚な屋根ではなく、格子に使われちゅう竹。当時は匠が太さや節間など一本づつ丁寧に選別した竹は、長い歳月の間にすっかり枯れた風合いになってはいますものの、当時と同じような凛とした佇まいを今でも、しっかりと残しているようです。


水屋の簀の子


水屋の竹にも同じような風情を感じますぞね。新しくやり換えられた竹は清々しく気持ちも新に引き締まるようですので、年初に向かい竹を取り替えられる事も多いのですが、こうして、誰かに大事に愛でられながら年月を経た竹には、独特の景色が見えてくるように思うのです。


船屋形天井


ゆったりとして見事な船屋形天井にも竹が効果的に使われちょって、ゲストとして招かれた皆様の気持ちを和ませた事やろうと思うがです。この廊下は一面ガラス戸が設えてあって、埋め立てて道路が出来る前の当時は、すぐ目の前まで琵琶湖の水がせまり、何ともいえない風情を醸し出していたろうと想像するだけで、まっこと楽しくなってきますちや。


竹灯り


灯りを吊しているのは煤竹です。天井に使われているのは確か北山杉と言われていたように覚えちょりますが、年期を感じさせる色合いに煤竹が馴染んでいるのは、もしかしたら建造当初より今の方が落ち着いて見えるかも知れません。竹の間に行くまでにも随所に見られる竹のあしらいに、この建物の主の方の竹への思いがヒシヒシと伝わり、ゆったりとした幸せな時間が流れる蘆花浅水荘なのです。


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