所変われば品が変わると言われますけんど、この青々とした編み上がったばかりの竹籠も、普通のものとは、ちっくと趣が違うがですぞね。作った本人の職人さんは、お祖父さんの代からずっと同じ作りだよと涼しい顔で笑いながら手を動かしていますけんど、こんな丸籠に一文字の持ち手というのは、あまり見た事は無いのです。
しかも、その持ち手が縁巻き同様に素晴らしく綺麗に仕上げられちょります。これだけの腕前をされるという職人さんなら、ずっと若い頃から竹一筋に歩まれてきた熟練の方というのは明らか。そのような方が、こう話してくれるので、これは説得力があるがです。
いやいや、それにしても珍しいちや。重たい物を入れた時には籠の下を抱えるように持つので持ち手は必要ありません。畑に肥えをまくのに使われちょった竹籠なども、脇に抱えて楽に仕事できるように楕円形に作られちょります。片手で手提げのように持つというのは、あまり知られていない形です。
今までも日本各地に興味深い竹があり、竹細工があり、竹文化がありましたぜよ。暮らしの中から生まれた様々な籠も拝見してきましたけんど、このような一文字の持ち手はありませんでした。まっこと、この地方独特の竹の作りかも知れませんにゃあ。そうこうしている内になんと木製の持ち手もあることを発見しましたちや。これだけ綺麗に編まれた名人作の横編みの丸籠に、何と大胆な、木の棒のあしらい!かなりもったいな気持ちで一杯になってきますちや。
けんど、これか地域性というものながですろうか。自分達ならそのまま美しい丸籠として使うところを惜しげもなく一文字に竹を入れたり、木まで使うたりして、今まで知らない自分達と違うやり方だからこそ、面白いと思うがですぞね。
Kana Morita 返信
一文字の持ち手を敢えて付けたザルは、何に使われていたのでしょうか?