メガネを日常的に使うようになって久しいがですが、今まで通り過ぎよったメガネ屋さんに目が止まるきに不思議ですちや。そうして引き寄せられるように一本のお気に入りの眼鏡を手にいれましたぞね。丸い繊細なフレームに手が伸びたのは自分と全く逆やきですろうか?真っ直ぐにカクカクと行く事しかできない粗野な男ですきに、こんな柔らかい感じのメガネをしたら、少しは雰囲気が変わるかも知れんにゃあ。そう思うて買ってきたがです。
けんど、決めてはコチラの眼鏡メーカーさんが「ササ」と呼ぶ、セルフレーム部分の模様ながです。ササと聞くと「ササ=笹」に思えて、どうも縁がある気がしちゅうがですぞね。なかなか掛け心地もエイですし大事な一本になりましたけんど、自分の場合は、手元が少し見えづらくなりましたので、常に掛けているという事ではなく掛けたり、外したりする事が多いです。
そこで、メガネを持ちはじめた頃には工場でも職人さんの所でも、いつも忘れて探しまわったことが何度もありましたぜよ。そうそう一度などは羽田空港に置き忘れた事もありましたちや。後から郵送でお送り届けてもらって手元に帰ってきた時には感動したがですが、そんな事が続きましたので、こりゃあイカンにゃあ。せめて、事務所や仕事場ではメガネの定位置を決めねばと思ってから、随分とメガネが何処にいったのか行方不明になる事は少なくなったがぞね。
お気に入りのメガネであれば、あるほど、どんな置き場所を定位置にするかは、こだわるものではないかと思います。自分もそうながです、やはりこの一本やきに少し特別な竹籠を使いたい、そう思うて候補にあがったのがこの、おしぼり籠なのです。厳選した白竹で丁寧に編まれちゅうだけでなく、あまり感じることのない野趣あふれる面白味があるのは縁巻き部分です。
実は同じような縁巻きにした竹盛籠があります。ねじり編みというて川面を風が渡っていくような清々しさも感じるすばらしい編み目が特徴の籠ですが、縁巻きに根曲竹という細く粘りと強さをもった竹が使われているのです。
前に山形の雪深い山中で根曲竹に出会うた事がありまし、なるほど、上の竹葉までスッポリと雪に覆われていて、これは南国土佐では想像もできない事でしたが、雪の重みに耐えながら根部分が曲がっていくのです。この重みと厳冬の寒さが竹を鍛えあげ堅牢な竹細工を産むがぞね。
けんど、縁巻きに使う竹は、ただ強いだけではいけません。何より柔軟で柔らかくないと細かく巻き付けていけないのです。だからその年に生えた一年生の若竹を夏場に伐採して集め、縁巻き専用の竹として用意しちゃあるがです。竹職人の、こんな弛まない準備と技で、まるであの山の自然が家の中に飛び込んできたかのような、そんな錯覚すらするほどの竹が作られていくのです。まっこと日本の伝統の技には、いつも驚嘆するばかりです。
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