金箔と聞くと何と言うても歴史大好きな自分などは、豊臣秀吉の黄金の茶室を思い出すのです。何かの展示で、その豪華絢爛な内装を再現しちょったことがありました。まっこと今の時代にも、あれだけキラキラと輝くような空間を拝見できる機会などそうそうあるものではありません。その昔に、あのような金に囲まれた部屋に座られた方は一体どんな気持ちになったろうか?想像することも難しいがです。
そんな非日常的な不思議な気持ちになる金箔は、金を薄く薄く打ち延ばして作られちょります。以前にデパートの催事で金沢の金箔職人さんとご一緒する機会も多く、実演される所を、何度か拝見させてもらった事がありますが、風が吹いたら飛んでいきそうなくらいの薄い紙状になっちょります。その金箔をガラスや漆器など食卓で使うテーブルウェアに使われていました。そう言えば、あの時にひとつ小さなグラスを買い求めてきましたにゃあ。内側に金箔をあしらったものですが、もったいなくて、あれから二十数年は経つかと思いますが、まだ使ったことがなく、金の輝きを放つ置物のようになっちょります。
今回、拝見させていただいた金箔は竹細工に施された美しいものです。ガラスや陶器など平面のものに、あの薄い金箔を貼るのは何となく分からない事もないのですが、立体感のある竹編みに、これだけ綺麗に金箔をされる技というのは、間近に見れば見るほどに凄いものではないかと思うがです。一本一本の竹ヒゴの表情に合わせて貼り付けられた金は、まるで、最初から金の竹ヒゴがあったかのような錯覚すら覚えるのです。
そもそも、この竹網代編みに金箔をするというアイデアは、ニューヨークに本社のある有名宝石店で活躍されていた、エレサ・ペレッティーさんという一人のデザイナーのものなのです。そして、その当時に竹網代編みの籠を提供していたのが当社の二代目義治と、ずっと昔から懇意にしていただく渡辺竹清先生やったのです。オープン・ハートという誰でも一度は耳にした事のあるアクセサリーを生み出した方として有名なデザイナーの方なのですが、渡辺竹清先生の工房に来られて最初の作品を開発した時のお話しは、いつ聞いても、まっこと興味深いものですぞね。
ニューヨークではパーティーバックとして発表されていた作品です。当初は竹素材そのままの籠であったものが形や大きさを変えてゆく中で、宝石店という華やかな世界にそう金箔という、日本の伝統の技をも竹の世界とマッチングさせた功績は大きいと思います。
たまたま今回の展示には金箔職人さんが考案された竹皮に金箔を貼ったものがあったのです。これは何に使うのかと思いよりましたが、盛り皿だそうです。例えば、おめでたい宴席での器としては素晴らしいものですろう。ただ、竹皮そのものでもグングン成長する不思議な生命力のある竹の皮なので、おめでたい席にはピッタリのものであろうかと考えちょりますが、そこまで皆様が思いをはせているか、どうかは別ですにゃあ。いずれにせよ、おにぎりを包む竹皮を製造する職人さんや、竹皮草履を編む現場にいる自分などからは、きっと生まれてこないアイデアには違いないがぜよ。
黄金の竹籠を拝見してから帰ってきましたぞね。華麗な輝きを見せる籠はパーティーバックとして使われているものやそうです。着物に竹籠は良く拝見させていただきますけんど、ドレスに竹籠を持つというたら、やはりこのよう派手さが必要かも知れません。
渡辺竹清先生から特別に頂いている数百年前の煤竹で編まれた竹手提げ籠を久しぶりに桐箱から出してみたがです。金のような輝きはありませんが、それに負けないような竹ならではの光沢、やはり日本の長い伝統文化、気候、人、技、暮らしそのものが生み出した竹、その迫力に圧倒されたり、ぬくもりに包まれたり、田舎の小さな竹屋に似合うのは、こちらのようですぞね。
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