京都の真竹

真竹水洗い


竹と言えば虎竹の里と自分達は思いよります。それは虎斑竹(とらふだけ)という日本唯一の虎模様の入る竹が、ここにしか成育せず、他の場所に移植しても不思議な事に美しい柄が出ることがないからなのです。虎竹は淡竹(はちく)であり、竹細工に多用される竹のひとつですけんど、もうひとつ日本には真竹という代表的な竹があるがです。今日は、この真竹について、ちっくとお話しさせていただきますぞね。


普通、皆様が「竹」と呼ばれる時に頭に思い浮かぶのは、孟宗竹か、淡竹か真竹かの3種類の事が多いがです。それだけ一般的に目にされる機会も多い竹だと思います。先ほど言いましたように虎竹は淡竹の仲間ですが、同じような太さ、高さの竹で真竹という竹は全国各地に生育しちょって、節間の長さ、身の厚み、粘りやしなり等から竹細工には最適の竹ながです。


お米にしろ、野菜、果物なども寒暖の差が大きいと美味しいと言われますが、実は竹にも同じ事が言えて、寒暖の差が竹の品質に大きく関わるようです。日本全国に質のよい竹というのがありますが、土質や竹林環境は違うものの気温差という条件は似ている気がしちょります。京都の真竹が良いと言われるのも、盆地で寒暖の差があるからですろう。伸びが良く、身が厚く、質のよい真竹、けんど、さらに京都の真竹の名声を高めるのは竹職人の晒しの技なのです。


竹は青竹のままですと耐久性に劣りますので、必ず油抜きのという余分な油をとる加工が必要なのです。「晒し」と言うのは真竹の油抜きという加工した後に、天日に干して晒す事から「晒し竹」と呼ばれちょりますが、こうして製竹される竹は、よくご覧になられる事も多い白竹ですぞね。この加工での京都の竹屋さんでの真竹の扱いは「むむむ、さすが...」と思わせるものがあり、それが、まず一本一本丁寧に柔らかいブラシ等を使う洗いなのです。真竹の油抜き加工には、熱湯で加工する「湯抜き」と「火抜き」という二つの方法があり、それぞれ違いがあるがですが、湯抜き加工しか行わない竹屋さんから見たら、この水洗いは衝撃ぜよ。熱湯を使い仕上げていく場合には、水洗いなど考えた事もないからです。


真竹加工用ガスバーナー


けんど、京都の竹屋さんでは時間をかけて職人さんが手洗いしよります。こうやって綺麗に汚れを落とした後にガスバーナーで火抜きするのです。この油抜きの違いは湯抜きは竹内部の成分が全て抜けるので、割れが入りやすくなるのに対し、火抜きは比較的割れが入りづらいと言います。これは火抜きにより竹の油成分が表皮に染み出して、ある種のコーティングされたよう状態になるからと職人さんは話されます。


割れに常に気を配り、注意を払っているのは、京都の真竹は加工用としての用途もさることながら、京銘竹として室内装飾などに利用いただく機会が多いからなのです。火抜きの前の水洗いなど手間を惜しまない加工の工程も、ツルツルとなめらかに仕上げられる美しい竹肌をそのまま活かす製品なら用途の地域性があるからと感じます。火抜きの際に竹の油分を拭き取るウエスがありますけんど、あらかじめ水洗いして汚れを落とした竹です。竹虎の工場での虎竹の火抜きに使うウエスと比べると断然綺麗なものでした。火抜きの前に既に余分な汚れが十分に取り除かれている証です。


京の真竹が真っ白というよりベージュがかったような特有の光沢を放つのは火抜きのせいであるのですが、その真価が問われるのは、実は加工直後の竹ではありませんぜよ。時が経てば経つほどに深まる飴色のような色合い、静かにではありますが貫禄と風格を、さりげなく漂わせる晒竹の迫力、歴史のある京都だからこ育まれた、竹文化の一つではないかと感じるがです。


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