竹を逆さに立てる、もうひとつの理由

 
晒竹(真竹)


皆様ご存じのように竹は元の方が太くて先端になるに従い細くなりますぞね。だから、竹を壁に立てかける場合にはウラ(先端)を下にするのが普通ながです。もし、元を下にたてかけていったとしたら最初はエイかも知れませんが、段々と元の部分ばかり前にドンドンと張り出してきて、しっかり整理して保管することが出来づらくなってくるのです。


竹は伐採時期が決まっちょって、一時期にその年の竹が全て出そろいますので、竹の量が大量に工場に入って来たときなどは、ウラと元と交互に立てかけていくなどという裏技もあるにはありました。今ではそんな事は夢のような話し、懐かしい思い出話しぜよ。長尺の竹もそうですが、1メートル程度に短く切断して、2箇所、3箇所紐で縛った竹束なども元の方を下にして置いたら最後、その衝撃で紐が緩んで束を再度縛りなおすような事にもなりかねませんぜよ。細いウラの方を下にして立てると反対にギュッと紐がしまるのです。


さて、竹を逆さに立てかける理由は一応そんな所なのですが、専門の方でも案外しらない、もう一つの理由というのが実はあるがぞね。それはベニカミキリに代表される竹の虫対策なのです。おっと、そうそう、竹を虫が食うことすら、あまり知られちょりませんが、竹細工に一目で穴と分かるような大きな虫食い穴を作るのが、この虫と、タケトラカミキリという名前は「タケトラ」と付くものの、「竹虎」とは随分違う外来種の害虫ながです。


竹皮


この竹を食う悪い虫たちが卵を産み付けるのが竹節にある小さな穴。この穴は竹皮が竹節に付いていた時の名残で、竹はこの、竹皮を一枚また一枚と脱ぎ捨てながら伸びていきます。ポロリと竹皮が剥がれ落ちた時に竹皮の付いていた穴は竹節部分に残ります。虫たちは、この竹節の穴を狙って卵を産み付けるがですが、問題はその時の虫の格好なのですが、足を竹節の出っ張り部分に引っ掛けるように逆さになり生み付けるので、竹のウラを上に向けて普通に立てている状態だと虫が竹節を利用しやすく、卵を産み付けやすい状態になっているのです。反対にウラを下に向けていると竹節の引っかかりは下を向いており、悪さをする虫たちも、卵を産み付けにという訳ながです。


竹には「割れ」と「虫害」という二つの大敵があって、昔から山の職人も、竹屋も、竹職人もこれと向き合うてきました。現代人の竹離れ、いえいえ「竹忘れ」が進んで竹に携わる人口は、年々少なくなっていく一方ではありますが、竹を逆さに立てかけること一つにも、こんな深い理由があり、それを頑なに守り続ける、誇り高き竹人の魂にふれるごとに自分も奮い立つ思いで、嬉しくなってくるがですぜよ。


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