祖父のショートホープ

竹虎四代目とタバコ


禁煙してから20数年、今ではビルや駅の喫煙ルーム近くさえ、そのニオイが気になって近寄りたくないほどなのです。だからホテルの部屋でも消臭対応では寝ることが出来ないがですぞね。出張で禁煙の部屋が取れない場合は、遠くても他のホテルを探すほどぜよ。前は、あれほど吸いよったのに、禁煙したらこんなにタバコが苦手になるのか...。昔の事が、まっこと嘘のようですにゃあ。


ところが、そんな自分が年に何度かだけ、嫌いなタバコを手にする事があるがです。しかも、ニコチンが強烈に入っちゅうショートホープ!100円ライターで火を付ける、軽く吸い込む、懐かしい味と香りとが口にひろがる、「そうそう、タバコは、こんな味やった...」。その度ごとにそんな事を思うこのタバコは、愛煙家の祖父が好きやった銘柄。たまに足の向く墓前でふかす煙が空に消えていくぞね。


「僕は、どうやろうか?やれゆうろうか?」


ショートホープ


この里のを守りたい、それだけやけんど...。タバコが消えるまでの間、そこには日本一の竹屋と言われた祖父がおる。虎竹の古里焼坂の山を見上げたら、ゆっくりと日が落ちてきた。竹虎が、この光景を100年見てきた時間の長さを思うたら、自分もこのタバコの煙みたいなものぜよ。だから今を全力で生きんとイカンですろう。何の力もない弱い男が立ち上がる。また、背中を押してもろうたちや。一人でないと思うたら、何でもできる、何処でも行ける。


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